食品安全の視点で見る加工食品の海外輸出のリスク対策 第1回 加工食品の海外輸出の現状とリスク対策の重要性
公開日:2025年10月29日
その他

食品安全マネジメントシステム(Food Safety Management System、以下、{FSMS})にはISO22000やFSSC22000等がありますが、これらは食品安全マネジメントを語る上での世界共通言語と言っても過言ではありません。加工食品を輸出する場合であっても、海外仕向地のバイヤーがISO22000やFSSC22000等のFSMS認証の取得を求めるケースもあります(注1)。
政府は、2030年には食品輸出総額5兆円を目指しており(注2)、そのためにもFSMS認証取得を後押ししています。
そこで、本コーナーでは、輸出を見据えたFSMSの構築・見直しは勿論のこと、日本の加工食品を海外に輸出する事業者が直面する食品安全上のリスクを理解していただき、その対策について、解説していきます。食品の安全性は、仕向地(輸出先国)の消費者の信頼を得るための重要な要素であり、企業の競争力を高めることになります。
第1回目は、国内外の食品マーケットの動向、日本の加工食品の輸出状況とその特性や強み、加工食品の輸出に伴う主なリスクについて触れます。
国内外の食品マーケットの動向
(1)国内マーケットの縮小
農林水産省では2040年・2050年の人口推移や食料消費量を見据え、国内の食品マーケットの動向を調査し、2023年8月に「食品産業をめぐる情勢」(注3)としてまとめています。その中で、国内のマーケットの縮小が示されています。
(2)海外マーケットの拡大
農林水産省は、食品の更なる輸出拡大や食品関連産業の海外展開の促進等に資するため、将来の海外市場の動向を予測するものとして、世界(主要34か国)の飲食料市場規模の推計結果を、「世界の飲食料市場規模の推計」として取りまとめています(注4)。
2015年の飲食料の市場規模 890兆円だったものが、2030年には1,360 兆円と約1.5 倍に成長すると予測され、特に、高い経済成長が続くアジア市場の規模は、420 兆円から800 兆円と約1.9 倍に拡大すると予測しています。

食品安全マネジメントシステムのV5.1からV6への変更点と対応のポイントについて解説しています。
日本の加工食品の輸出状況とその特性や強み
日本の加工食品は、その特性や強みが海外でも評価され、農林水産物と共に輸出額が増加、以下のように海外市場での需要が拡大しています。

日本の加工食品の特性や強みは、海外の需要者(バイヤーや消費者)の嗜好性や他国商品との比較の観点等から、以下の3点が挙げられます。

輸出事業者は、これらの特性や強みを活かしつつ、食品安全の視点からリスク対策を効果的に行うことが肝要となります。
食品安全マネジメントシステムのV5.1からV6への変更点と対応のポイントについて解説しています。
加工食品の輸出に伴う主なリスク要素
海外市場への展開には、さまざまなリスクが伴います。主なリスクは、以下のとおりです。

これらのリスクは、食品輸出において回避し難い要素であり、事業者は適切な対策を講じることが求められます。
食品安全マネジメントシステムのV5.1からV6への変更点と対応のポイントについて解説しています。
おわりに
次回は、実際に食品安全上のリスクが顕在化した例として、海外での日本の加工食品等の事故事案とその傾向等について解説する予定です。
(注1) 農林水産物・食品の輸出を目指す皆様へ(輸出先国の規制・条件に対応した施設・機器の整備とHACCP等の施設認定・認証取得を一体的に支援します!)
(注2) 今後の更なる輸出拡大に向けた取組方向
(注3)食品産業をめぐる情勢
(注4)世界の飲食料市場規模の推計
食品安全マネジメントシステムのV5.1からV6への変更点と対応のポイントについて解説しています。
MS&ADインターリスク総研株式会社発行のPLレポート(食品安全)2025年7月号を基に作成したものです。
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