身近になってきた知的財産権を知ろう
公開日:2026年10月29日
経営に関する全般
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最近の経済記事で、「知的財産権」(知財)について、取り上げられていることが、多くなってきました。企業経営の武器であり、財産と言われています。では、知財とはどんな種類があり、どんな特徴があるのでしょうか。
【1.知財の種類】
知財の主な種類は、下記のとおり。特許権、実用新案権、意匠権、商標権は、
工業所有権又は産業財産権と呼ばれます。

中でも、著作権は、著作者(創作者)が著作(創作)した時から、著作者の死後70年
権利が有効なので、100年以上も権利が続くこともあります。著作権は、著作者の相続人
に、収入をもたらす財産権になりえます。例えば、マイケルジャクソン(2009年死亡)
の相続人は、2020年に、推定50億円の収入を得たとされています。
一方で、著作権は、相続争いの原因となることもあります。
知財は、相続に影響を与える場合があるのです。
知財権(著作権を除く)は、出願手続きを行い、登録査定を受けることで権利が発生します。その際、登録の条件として重要な要件があります(商標権を除く)。
1. 他の人より先に出願していること(先願要件)
2. 新しい創作であること。(新規性要件)
3. 既知の創作よりも、実質的に進歩した内容であること。(進歩性要件)
これらの要件を満たさない登録は、、後日に、無効(権利の遡及取消)となることがあります。
知財権は、「属地主義」といわれて、各国で判断、登録されます。そのため、知財制度の内容は国によって異なり、世界共通ではありません。ただし、国際条約に基づいて各国の制度が整備されており、基本的な考え方には一定の共通性があります。
【2.知財の特徴】
知財の第一の特徴は、独占実施排他権です。他人は、権利者の許可なく模倣することはできません。侵害すると、損害賠償、場合により刑事罰の対象となることもあります。使用には、ライセンス料を支払って、許諾を受ける必要があります。
しかし存続期間終了後は、だれでも自由に使用できるようになります。これをパブリックドメインといいます。
ただし、問題となるのは、類似の権利内容が侵害に当たるかどうかの判断です。特に意匠権や商標権では、類似範囲や間接侵害が論点となるため、侵害判断は複雑になりやすい面があります。
知財の第一の特徴は、独占的に実施できる排他的な権利であることです。他人は、権利者の許可なく模倣することはできません。侵害があった場合には、損害賠償請求や、場合によっては刑事罰の対象となることもあります。利用するには、ライセンス料を支払って許諾を受ける必要があります。
そのため、事前に侵害を避けるためのリスクマネジメントも簡単ではありません。知財リスクマネジメントは、「ゼロリスク」にすることはできません。サイバーリスクと同様、知財もゼロリスクが難しい分野といえます。
つまり、知財は収益源となる財産権である一方、侵害されるリスクや、誤って侵害してしまうリスクもあるため、現代のビジネスでは意識的な対応が必要です。
【3.知財の問題】
知財の見落とされやすい問題は、知財リスクを十分に認識していない企業が少なくないことです。
多くの企業が「自社では特許を扱っていないので、知財リスクは関係ない」と考えがちです。しかし、これは正確ではありません。問題となるのは、他社の特許権や著作権などを侵害することであり、自社が特許を保有しているかどうかは直接関係しません。むしろ、知財を十分に把握していないために、意図せず侵害してしまうことが懸念されます。
では、こうした知財リスクを誰が分析し、企業に説明するのでしょうか。特許や商標などの知財専門家は、それぞれの専門分野について高い知見を持っていますが、企業全体の事業やリスク管理を踏まえた整理まで一貫して行うには、さらに横断的な視点が求められます。
そのため、企業経営者にとっては、自社の知財活用状況や知財リスクを整理し、必要に応じて適切な助言を受けながら対応方針を検討することが重要です。知財は、単なる法的論点ではなく、事業戦略やリスク管理とも密接に関わるテーマといえます。
【4.面白知財】
知財は、私たちの身近なところにもあります。新たな知財が生まれている事例として、愛媛県の「みかんブリ」と、その進化形である「チョコブリ」があります。
愛媛県では、ブリにみかんの皮を加えた飼料を与えることで「みかんブリ」というブランドブリを生み出しました。これにより、魚の鮮度保持に効果があるほか、ほのかな柑橘系の風味が味わいを深めるとされています。
さらに、ブリはみかんの皮の苦みをあまり好まないことから、同様にポリフェノール効果を持つ「チョコ」を飼料に約10%混ぜたところ、鮮度保持効果がより高いとされ、「チョコブリ」が開発されました。この「チョコ」養殖方法は、先に述べた「みかんブリ」より進歩した内容として、進歩性要件も満たすと考えられ、「特許第7254275号」として特許権が付与されています。
特許の内容には、このように身近で興味深い事例も多くあります。
知財は、最先端技術や知識情報を集約した創作に限られません。役立つアイデア、独自性のある表現、人々に感動を与える作品なども知財の対象となります。
ただし、「味」そのものに知財権はありません。有名シェフが勲章を受けたり、人間国宝に認定されたりすることはありますが、「秘伝のレシピ」が「味」の特許や知財権として保護されるわけではありません。他人に知られれば模倣されるため、レシピなどは秘密として管理する必要があります。これを営業秘密といいます。
営業秘密は登録された権利ではありませんが、広義の知財権として扱われます。
【5.注意すべき点】
ここまでで、知財について基本的なイメージを持っていただけたのではないでしょうか。
最後に、ビジネス対応で注意すべき知財リスクを取り上げます。
1)M&Aと知財
M&Aの被買収企業が、第三者の知財権侵害をしていた場合、知財権を侵害された企業から訴訟を受けるリスクがあります。しかし、M&Aにおいて知財デューデリジェンスが十分に行われているケースは、必ずしも多くありません。
知財デューデリジェンスとは、知財侵害リスクを調査することです。知財業界では「クリアランス調査」とも呼ばれます。
知財侵害リスクは、目に見えにくいものです。いわば「地雷リスク」であり、問題が発覚した際には対応に費用と時間がかかります。それにもかかわらず、知財デューデリジェンスが実施されないことは少なくありません。M&Aにおいて、経営ガバナンスや取引の適正性が十分に確保されているのか、改めて確認が必要です。
2)知財侵害集積リスク
集積リスクとは、保険用語で、地震などの災害によって建物が同時に多数被害を受けるような、「同時発生の複数被害による巨額損害リスク」を指します。知財にも同様の集積リスクがあります。
例えば、自社の完成品に使われているサプライヤーの部品が第三者の特許権を侵害していた場合、権利者はサプライヤーだけでなく、完成品企業にも訴訟を提起する可能性があります。「侵害したのはサプライヤーだ」と主張しても、完成品の製造や販売などが侵害行為に該当する場合には、完成品企業も責任を問われることがあります。
さらに、完成品を販売する販売会社も訴訟の対象となる場合があります。また、完成品企業には、契約上の供給者責任に基づき、知財訴訟費用や賠償金の負担を求められることもあります。仮に特許侵害が否定されたとしても、訴訟費用の負担が生じる可能性はあります。
これらは、企業として警戒すべき「知財侵害集積リスク」です。把握していなければ、「津波」のように予想外の大きな損失につながるおそれがあります。
「自社は知財に関係ない」という認識は、見直す必要があります。知財を理解し、備えることが重要です。














