策定に必要なノウハウや人手が足りない
内閣府が実施した「事業継続計画策定に係る課題等の状況」という調査によれば、BCP策定を予定している企業において、「策定に必要なノウハウ・スキルがない」「策定する人手を確保できない」という課題があることがわかります。
これらの課題は、「BCPの専門的・実践的な内容に関わるもの」と「経営者層の意識に関わるもの」の二つに大別できると言えるでしょう。
部署・協力会社間の調整により導入が進まない
既にBCPを策定中の企業においては、主な課題としてノウハウ・スキルの不足や人手が確保できないといった点は、予定中の企業と同様の傾向が見られます。加えて既に策定中であるため、「部署間の連携が難しい」「サプライチェーン内での調整が難しい」などの社内外での調整に課題を抱えていると言えます。
一般的には、以下の図のように自然災害などの不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことをBCP/事業継続計画(Business Continuity Plan)と呼びます。
また、PDCAサイクルを回すことで、平時からBCPの改善を図ることや、教育や訓練の実施などで取組を浸透させることなどを含めて、BCM/事業継続マネジメント(Business Continuity Management)として位置付けられています。
内閣府(防災担当)の事業継続ガイドライン(令和3年4月改定)を基に作成
では、中小企業におけるBCPの策定状況はどうなっているのでしょうか?2024年6月に帝国データバンクが実施した調査によると、BCPの策定状況において「策定している」が19.8%、「現在、策定中」が7.3%、「策定を検討している」が22.9%となっています。
約半数の企業が何らかの形でBCPを策定する意向がわかる調査結果となっています。また、BCP策定率を企業規模別に見ていくと、大企業で37.1%、中小企業で16.5%です。
大企業・中小企業ともに、近年では策定率の上昇傾向が見られますが、中小企業の策定率の伸びはやや低調な傾向となっています。
会社の規模や業務内容等にもよるため一概には言えませんが、以下のようなステップやプロセスでBCPの策定やその後の運用が行われることが一般的です。
1 基本方針・運用体制の検討 | BCP/BCMに取り組むにあたっての目的や方針のほか、社内の取組体制を検討します。 |
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2 対象業務の検討(重要業務・目標復旧時間等の検討) | 災害等の発生時でも継続すべき「重要業務」を選定し、その 業務をいつまでに復旧するか(目標復旧時間)を検討します。 |
3 具体的なBCPの策定 | 目標復旧時間内に重要業務を継続するための戦略や手順を具体化し、文書に整理します。 |
4 従業員教育・研修の実施 | 策定したBCPの実効性を高めるため、訓練や教育による従業員への周知を行います。 |
5 継続的な見直し・改善 | 訓練で洗い出された課題や組織体制の変化を踏まえ、現状のBCPの見直し・改善を定期的に行います。 |
なお、この1~5のステップを満たすとともに、中小企業でBCP策定が進まない理由(ノウハウがない、人財がいない)を解決するサービスとして、「BCP育成支援システム」レジリードを用意しています。
<BCPの策定に役立つ情報>
内閣府(防災) | 事業継続ガイドライン |
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中小企業庁 | |
MS&ADインターリスク総研 |
事業継続力強化計画認定制度の申請
これまで見てきたとおり、必要と感じていてもなかなかBCPの策定まで手が回らないという企業も多いようです。そこで、経済産業省中小企業庁が自然災害等に対する中小企業の事前対策を推進するために創設した国の認定制度『事業継続力強化計画認定制度』が注目を集めています。
本制度は、自然災害や感染症などに対する初動対応や基本的な事前対策等について、中小企業が策定した計画を国が認定する簡易版BCPともいうべきもので、税制優遇や金融支援等の措置も受けられることから取得する企業が増えています。まずは、この計画の策定から行ってみてはいかがでしょうか?
<『事業継続力強化計画認定制度』に関する情報>
中小企業庁HP | |
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独立行政法人中小企業基盤整備機構 |
費用の掛からない事前対策
BCPの策定においては、それほど費用を掛けずに取り組める事前対策が多くあります。一例として、次のものが挙げられます。
・避難計画の作成
・電気、水等のライフラインの代替手段の特定
・非常時の従業員連絡先リストの作成
・非常時の従業員安否確認方法の周知
・非常時の緊急連絡用リスト(警察、消防、電気、ガス、水道等)の作成
上記の事前対策は、事前のチェックによって実施できるものばかりです。社内でのコミュニケーションを十分に行いながら、必要な対策を実施してみましょう。
策定後の実効性の強化
BCPは一度策定して終わりというものではなく、以下の項目においてチェックや連携が重要になります。
・毎年の計画の見直し
・取引先との連携
・防災訓練実施
BCPを毎年見直していくことは、従業員への周知につながりますし、いざという時のスムーズな対応に結び付くでしょう。また、取引先との連携を図ることで、自社において取り組むべき課題等が見つかりやすくなります。
そして、定期的に防災訓練を実施することで、さらに実効性のある取組の強化につなげられます。BCP策定後の取組についても検討しておきましょう。
【参考情報】
2008年12月16日付 内閣府 「事業継続計画策定に係る課題等の状況」
2017年3月付 経済産業省ヘルスケア産業課 「健康経営の推進について」
2024年6月25日付 帝国データバンク 「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2024年)」
2018年7月11日付 経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 「第18回健康投資WG事務局説明資料(中小企業に対する健康経営の普及について)」
2025年2月3日付 中小企業庁 「中小企業BCP策定運用指針~緊急事態を生き抜くために~ 6.事前対策メニュー一覧」
2025年2月3日付 独立行政法人中小企業基盤整備機構 「BCPはじめの一歩 事業継続力強化計画をつくろう!」
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