帝国データバンク公表「夏のボーナス、前年より「増加」が約4割 ~支給額は平均2.0%増、規模間格差が顕著~」
公開日:2024年6月26日
その他
夏季賞与は、企業の約4割で1人当たり平均支給額が前年より「増加」しました。「大企業」の約5割で夏季賞与が「増加」した一方、「小規模企業」は全体を10ポイント下回りました。1人当たり支給額は前年から平均+2.0%でした。「大企業」は+4.1%の一方、「中小企業」は+1.7%となり、規模間格差が目立ちました。
はじめに
2024年の春闘は、大企業で満額回答が相次ぎました。賃金と物価の好循環が強まり、景気の本格的な回復が期待されるなか、厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査」によると、2024年4月の就業者1人当たりの基本給などにあたる所定内給与は、前年同月比2.3%増と約30年ぶりの高い伸び率となりました。しかし一方で、物価の変動を反映した実質賃金は、過去最長の25カ月連続で減少する結果となり、依然として物価の上昇に賃上げが追いついていない状況が続いています。
名目賃金が上昇しているにも関わらず実質賃金の減少が続き、個人消費への下押し圧力が強まるなか、夏のボーナスが消費を上向かせることができるか注目が集まっています。
そこで帝国データバンクは、2024年夏季賞与についてアンケートを行いました。
※アンケート期間は2024年6月7日~11日、有効回答企業数は1,021社(インターネット調査)
2024年夏季賞与、企業の約4割で1人当たり平均支給額が前年より「増加」
2024年の夏季賞与¹の支給状況について尋ねたところ、「賞与はあり、増加する」と回答した企業の割合は39.5%(前年比2.1ポイント増)となりました。「賞与はあり、変わらない」は34.2%(同2.2ポイント減)、「賞与はあるが、減少する」は11.3%(同2.0ポイント増)で、合計すると、『賞与あり』の企業は85.0%となり、前年(83.1%)から1.9ポイント上昇しました。一方で、「賞与はない」企業は10.3%(同0.9ポイント減)でした。
「賞与はあり、増加する」とした企業からは、「賃上げムードもあるが、業績が好調なのが一番の要因」(鉄鋼・非鉄・鉱業)という声があるなど、業績の回復をあげた企業が多数みられました。
他方、「利益は減少したが、賃上げと賞与アップをしないと従業員の定着が困難になってくる」(情報サービス)や「物価が高騰するなか社員の生活を支えるために、増額を検討している」(自動車・同部品小売)のように、業績は改善していないものの、物価高騰に対する従業員の経済的負担の軽減や従業員のモチベーション維持を理由に賞与を増やす企業も少なくありませんでした。
「4月に大幅な給与のベースアップがあったため支給額も増加する」(建材・家具、窯業・土石製品製造)のように、ベースアップしたことにより賞与の支給額も増加するとの声もあがった一方、「賃上げ率が低く基本給も多くないので、賞与で還元する」(機械製造)との声も聞かれました。
一方で、「賞与はあり、減少する」企業からは、「円安にともなう仕入価格の高騰分を十分に価格転嫁できず、利益が大幅に減少してしまったため、前年比 50%減の支給になった」(輸送用機械・器具製造)のように、原料費の高騰などによる収益悪化を理由にあげる企業が多くありました。
¹従業員1人当たりの平均支給額。ボーナス、一時金、寸志などを含みます。
「大企業」の約5割で夏季賞与が「増加」。一方、「小規模企業」は全体を10ポイント下回る
規模別に「賞与はあり、増加する」企業の割合をみると、「大企業」は前年比4.9ポイント増の47.2%となり、全体(39.5%)を7.7ポイント上回りました。
他方、「中小企業」は同1.7ポイント増の38.2%、「小規模企業」は同1.9ポイント増の29.2%と、前年と比べて夏季賞与が増加すると回答した企業の割合が「大企業」よりも小幅な上昇にとどまりました。
また、「小規模企業」では夏季賞与が「増加」すると回答した企業の割合が全体より約10ポイント低くなっており、依然として企業規模間に格差がみられます。
夏季賞与 1 人当たり支給額は前年から平均 2.0%増。規模間格差が顕著
2024年の夏季賞与の従業員1人当たり平均支給額について、前年からの増減を尋ねたところ、夏季賞与の 1 人当たり支給額は前年から平均で+2.0%でした²。前年(+2.4%)を0.4ポイント下回りました。
規模別にみると、「大企業」は+4.1%で、前年からは0.6ポイント上昇しました。他方、「中小企業」は前年から0.5ポイント低下して+1.7%となりました。「中小企業」の増加率は「大企業」を2.4ポイント下回っており、規模間格差が目立つ結果となりました。
中小企業からは「大企業は賃上げや賞与の増額を行っているが、中小企業は苦しい」(飲食料品・飼料製造)や「大企業は利益が大きいようだが、その恩恵は自社のようなサプライヤーには還元されず賞与を減らすこととなった」(鉄鋼・非鉄・鉱業)といった厳しい声が聞かれました。
²増減率の平均は、「100%以上増(100%減)」「70~100%未満増(減)」「40~70%未満増(減)」「20~40%未満増(減)」「10~20%未満増(減)」「7~10%未満増(減)」「5~7%未満増(減)」「3~5%未満増(減)」「1~3%未満増(減)」「1%未満増(減)」「変わらない(0%)」の各選択肢のレンジの中間値を回答数で加重平均したものです(ただし、「100%以上増」は100%として算出)
まとめ
本アンケートの結果、2024年夏は企業の85%がボーナスや一時金などを含め何らかの賞与を支給する予定であることが明らかになりました。なかでも賞与が増加する企業は約4割となり、支給額は前年よりも平均で2.0%増加すると見込まれることが分かりました。
賞与を増やす理由として、業績の回復のほか、従業員のモチベーション維持や物価高騰による従業員の経済的負担の軽減を理由にあげる企業も少なくありませんでした。他方、賞与を減らす企業の多くは、原料費の高騰などによる収益悪化を理由にあげていました。
賞与支給予定の企業は多いものの、今後はエネルギー価格の高騰に対する政府の補助金の終了などによる電気代の値上がりや、円安の進行などを背景とした食品の値上げなどにより、消費拡大への効果は限定的にとどまる可能性もあります。物価の高騰に負けない賞与を含む賃金の上昇、および「持続的な賃上げ」が実現できるかが注目されています。
株式会社帝国データバンク発行の「2024年夏季賞与の動向アンケート」(2024年6月13日)を基に作成したものです。