育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法の改正
公開日:2024年7月31日
法改正
2024年の通常国会で「育児・介護休業法」及び「次世代育成支援対策推進法」の改正が成立し、5月31日に公布されました。これらの改正法は、2025年4月1日から段階的に施行されるため、企業には計画的な対応が求められます。
育児・介護休業法の改正
1.子どもの年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
(1) 柔軟な働き方を実現するための措置等(公布後1年6ヶ月以内の政令で定める日に施行)
3歳から小学校就学前の子どもを養育する労働者について、①始業時刻等の変更、②テレワーク等(10日/月)、③保育施設の設置運営等、④新たな休暇の付与(10日/年)、⑤短時間勤務制度の5つの選択肢の中から、事業主が2つ以上の制度を選択して導入し、労働者はその中から1つを利用できるようすることが義務づけられます。
※原則時間単位で取得可とする(詳細は省令等)。
(2) 所定外労働の制限(残業免除)の対象者を拡大(2025年4月1日施行)
現行、3歳に満たない子どもを養育する労働者は、請求することで所定外労働の制限(残業免除)の制度を利用できますが、この制度の対象となる労働者の範囲が、小学校就学前の子を養育する労働者にまで拡大されます。
(3) 育児のためのテレワークの導入が努力義務化(2025年4月1日施行)
3歳に満たない子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務が課されます。
(4) 子の看護休暇の見直し(2025年4月1日施行)
現行の「子の看護休暇」は、子どもの病気やけが、予防接種・健康診断の際に取得できますが、これらの他に、感染症に伴う学級閉鎖等や入園(入学)式、卒園式が追加されます。これに合わせて休暇の名称も「子の看護等休暇」に変更となります。
また、対象となる子どもの範囲が、現行の小学校就学の始期に達するまでから、小学校3年生修了までに延長されます。加えて、労使協定の締結により除外できる従業員について「引き続き雇用された期間が6ヶ月未満」という要件が撤廃されます。
(5) 個別の意向聴取・配慮の義務化(公布後1年6ヶ月以内の政令で定める日に施行)
妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が事業主に義務づけられます。
・意向聴取の方法は、省令により、面談や書面の交付等となる予定です。
・具体的な配慮の例として、自社の状況に応じて、勤務時間帯・勤務地にかかる配置、業務量の調整、両立支援制度の利用期間等の見直し、労働条件の見直し等が指針で示される予定です。さらに、配慮に当たって、望ましい対応として、以下の事項等が指針で示される予定です。
*子に障害がある場合等で希望するときは、短時間勤務制度や子の看護等休暇等の利用可能期間を延長すること
*ひとり親家庭の場合で希望するときは、子の看護等休暇等の付与日数に配慮すること
2.育児休業の取得状況の公表義務の拡大(2025年4月1日施行)
現行、従業員数1,000人超の企業に公表が義務づけられている育児休業取得状況の公表について、従業員数300人超の企業に拡大されます。
公表内容は、公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度(公表前事業年度)における次の①または②のいずれかの割合を指します。
※育児休業等とは、育児・介護休業法に規定する以下の休業のことです。
・育児休業(産後パパ育休を含む)
・法第23条第2項(3歳未満の子を育てる労働者について所定労働時間の短縮措置を講じない場合の代替措置義務)又は第24条第1項(小学校就学前の子を育てる労働者に関する努力義務)の規定に基づく措置として育児休業に関する制度に準ずる措置を講じた場合は、その措置に基づく休業
3.介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等(2025年4月1日施行)
・介護に直面した旨の申出をした労働者に対し、介護両立支援制度等について個別の周知・意向確認の措置が義務づけされます。(※面談・書面交付等による。詳細は省令。)
・介護に直面する前の早い段階(40歳等)での両立支援制度等に関する情報提供を行うことが必要になります。
・仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備が事業主の義務になります。(※研修、相談窓口設置等のいずれかを選択して措置。詳細は省令。)
・要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるよう事業主に努力義務が課されます。
・介護休暇について、引き続き雇用された期間が6か月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みが廃止されます。(子の看護休暇と同様)
次世代育成支援対策推進法の改正
(1) 法律の有効期限が延長されました(2024年5月31日施行)
次世代育成支援対策推進法の有効期限が、2025年3月31日から2035年3月31日までに延長されました。法律の期限延長にともない、子育てサポート企業に対する厚生労働大臣の認定:「くるみん」認定制度も継続されます(今後、省令により認定基準の一部を見直すこととされています)。
(2) 育児休業取得等に関する状況把握・数値目標設定の義務化(2025年4月1日施行)
従業員数100人超の企業は、一般事業主行動計画策定時に次のことが義務づけられます。(従業員数100人以下の企業は、努力義務の対象です。)※施行日以降に開始(又は内容変更)する行動計画から義務の対象です。
・計画策定時の育児休業取得状況(※1)や労働時間の状況(※2)把握等(PDCAサイクルの実施)
・育児休業取得状況(※1)や労働時間の状況(※2)に関する数値目標の設定
(※1)省令により、男性の育児休業等取得率とされる予定です。
(※2)省令により、フルタイム労働者1人当たりの各月ごとの時間外労働及び休日労働の合計時間数等とされる予定です。
なお、一般事業主行動計画の内容を変更しようとする場合も同様に状況把握、数値目標の設定を行
う必要があります。
【厚生労働省の関連資料】
発行:MS&AD経営サポートセンター