介護手当とは?受給条件やその他の手当を解説

公開日:2025年6月23日

健康経営・メンタルヘルス

家族を在宅介護する場合、お住まいの自治体によっては「介護手当」を受給できる場合があります。介護手当は在宅介護を行う家族を支えるための制度であり、申請が受理されれば、年間で10万円近くの手当を受け取ることが可能です。

今回は介護手当の基本的な仕組みや受給条件を解説した上で、在宅介護に活用できるその他の手当・サービスの内容もまとめてご紹介します。

介護手当の概要

「介護手当」とは、在宅介護を行う家族に対して、自治体から支給される慰労金等のことです。主な目的は、介護による経済状況の悪化を防ぐことにあり、要介護者と同居しながら生活をする人の暮らしを支える仕組みとされています。

介護手当は自治体が主導で行っている制度のため、細かな仕組みは地域によって異なり、支給額や支給条件等もさまざまです。名称も介護手当や在宅介護者福祉手当のように統一されておらず、実施していないあるいは既に廃止された自治体もあります。

そのため、介護手当の利用を検討する際には、お住まいの自治体の実施内容や条件を調べておくことが大切です。

介護手当の支給額

介護手当の支給額は、対象となる要介護者1人につき、「月額数千円から1万円程度」としている自治体が多いです。例えば、栃木県鹿沼市では対象となる高齢者1人につき月額4,000円となっており、年2回に分けてまとめて支給されます。

また、埼玉県越谷市では「在宅介護者福祉手当」という名称で、月額5,000円が年3回に分けて支給される仕組みです。それ以外にも、東京都江東区の「家族介護慰労金」は、在宅介護した家族に年間で10万円の慰労金が支給されます。

いずれにしても、支給金額は年間5~10万円程度が一般的であり、用途が限定されていないのが特徴です。介護に直接かかる費用だけでなく、介護者への生活費としても利用できるのが大きなメリットであり、非課税所得として扱われるため領収書や報告書等の提出義務もありません。

介護手当の受給要件

受給要件も自治体によって異なりますが、基本的には「要介護3~5の要介護者」を自宅で介護している家族に対して支給されるケースが多いです。具体的には寝たきりや認知症等の高齢者を介護している家族が対象であり、「同居している」「常時介護している」「その自治体に一定期間以上の住所がある」等が主な要件とされています。

また、介護施設や療養施設での入院や入所の有無、ショートステイの利用期間等によっても、受給できるかどうかが変わってきます。

介護手当を利用する時の注意点

介護手当は、単に要件を満たしただけで自動的に受給できるものではありません。申請しなければ給付は受けられず、受給要件を満たしても自治体から通知されるわけではないため、利用者自身が調べて問い合わせる必要があります。

また、介護手当は在宅介護をする方向けの制度であるため、他の介護サービスを利用している場合は受給できないケースもあります。要介護者の状態や介護をする家族の状況、生活環境等によっては、必要な介護サービスを利用しないことで、かえって負担が大きくなってしまう場合もあるでしょう。

そのため、介護手当を受給するかどうかは、その他の介護サービスや制度の内容も把握した上で判断することが大切です。

育児・介護休業法等の法改正のポイントについては、こちらの記事でも解説しています。

 

介護手当以外の手当

介護手当はあくまでも在宅介護を行う家族を対象としたものであり、介護に関する支援制度には、それ以外にもさまざまな種類があります。ここでは、介護手当以外の代表的な手当について、制度の仕組みや条件をご紹介します。

介護休業給付金

「介護休業給付金」とは、厚生労働省が管轄する制度であり、家族の介護を目的として一時的に休業する場合に支給される給付金のことです。制度としては育児休業給付金と同じような仕組みであり、一定の条件を満たした上で申請すれば、休業中であっても給与額の67%を受給できます。

給付対象となる休業期間は、1人の要介護者に対して最長93日であり、最大3回まで分割できます。そのため、入所の準備や手続、家族での話し合い、利用サービスの選定・手配といったさまざまなシーンに活用しやすいのが特徴です。

介護休業給付金の利用条件は以下のとおりです。

・休業開始前の2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上ある月が12か月以上あること
・雇用保険の被保険者であること
・休業中の就業日数が10日以下であること
・支給された賃金額が休業前の80%未満であること

働き始めて間もない場合や、休業中も規定以上の日数で仕事をする場合は受給が認められないので注意が必要です。

介護保険住宅改修費

「介護保険住宅改修費」とは、その名のとおり介護保険の制度の一部です。介護のために住宅のリフォームを行う場合、特定の施工について、費用の一部(改修費の9割相当額)が補助されるという仕組みです。

具体的には、次のような改修内容が対象とされています。

・手すりの取付
・段差の解消
・滑り防止等のための床や通路面の材料変更
・引き戸等への扉の取替
・洋式便器等への便器の取替

なお、工事費用の支給限度基準額は20万円と定められているため、最大補助額はその9割にあたる18万円です。また、利用にあたっては「ケアマネージャーへの相談」が条件となっているので、手続の方法には注意が必要です。

福祉用具に関する補助

介護保険では、福祉用具に関する補助も行われています。福祉用具とは、「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」で定義された用語であり、要介護者等の日常生活を支えたり、要介護者等の機能訓練を行ったりするための器具のことです。

具体的には車いすや歩行器、つえ、介護ベッド等が挙げられ、補助内容は原則として低額でのレンタルが基本となっています。ただし、入浴補助用具や便座といった再利用が難しい用具については、購入費用の一部(原則9割)が支給される仕組みとなっています。

 

位置情報探索サービス利用費補助金

自治体によっては、徘徊症状のある高齢者のケアを目的として、「位置情報探索サービス利用」に関する支援制度が設けられていることもあります。例えば、埼玉県坂戸市では、位置情報探索サービスへの加入金や事務手数料、機器の購入費用等を補助する制度が導入されています。

ただし、補助金額は認知症高齢者1人につき上限1万2,000円となっており、毎月のサービス料等には対応していません。また、埼玉県志木市では、徘徊症状のある高齢者とその家族に対し、位置探索システムが搭載された小型端末機の無料貸与が行われています。

在宅介護で利用できる介護保険サービス

介護保険の制度には、在宅介護で利用できるサービスもあります。主なものとしては「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3つがあり、介護保険への加入が義務付けられている40歳以上の方は、要介護認定等の条件を満たしていれば誰でも利用することができます。

従業員の加齢に伴う健康課題について、こちらの記事でも解説しています。

 

居宅サービス

居宅サービスとは、要介護認定を受けた方が、自宅で生活を続けながら低負担額で受けられる介護サービスのことです。居宅サービスには、「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」「その他のサービス」の4種類があります。

訪問サービスとは、ホームヘルパーに自宅に来てもらい、食事や入浴、排せつ等の身体介護や、炊事・洗濯、買い物等の生活援助をしてもらうサービスを指します。また、看護師等に医療処置や医療機器の管理、療養の助言をしてもらえる「訪問看護」、理学療法士等にリハビリの補助をしてもらう「訪問リハビリテーション」も訪問サービスの一種です。

通所サービスとは、いわゆるデイサービスやデイケアのことであり、施設に日帰りで通って介護を受けられるサービスです。また、短期入所サービスは、施設に一時的に宿泊して介護や医療ケアを受けられるサービスを指します。

その他のサービスには、前述した福祉用具のレンタルや販売、特定施設入居者での生活介護等が含まれます。

施設サービス

施設サービスとは、介護保険法で定められた介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院)に入居して受けられるサービスのことです。特別養護老人ホームは特養とも呼ばれており、原則として要介護3以上の方が対象で、自宅での介護が困難な方が終身にわたって介護を受けられる施設です。

介護老人保健施設は老健とも呼ばれており、要介護1以上の方を対象とした在宅復帰・在宅療養支援を目的とした施設であり、リハビリに特化したサービスが受けられます。介護医療院は要介護1以上の長期療養が必要な方が対象であり、長期介護サービスや看取り・ターミナルケアといった医療サービスを複合的に受けることができます。

介護保険施設はいずれも公的施設としての意味合いが強いため、一般の有料老人ホームと比べると費用を安く抑えられるのが特徴です。

 

地域密着型サービス

地域密着型サービスとは、中重度の要介護状態になった高齢者が、自宅あるいは身近な地域で生活を続けるための支援を受けられるサービスの総称です。サービス事業者の指定は市町村が行い、原則として指定した市町村の被保険者のみが利用できます。

取組やサービス内容は市町村によって異なり、地域の特性やニーズに沿って柔軟に運営されるのが特徴です。基本的なサービス内容としては、小規模かつ多機能な施設での通所・短期宿泊介護、ホームヘルパーによる定期巡回・随時対応型訪問介護、看護師による訪問看護等が挙げられます。

また、地域によっては近隣の高齢者が集まってレクリエーション等を楽しめる「地域密着型通所介護」や、夜間対応型訪問介護等が運営されることもあります。さらに、「認知症対応型通所介護」や「認知症対応型共同生活介護施設(グループホーム)」等、一般の通所介護では対応されていないこともある認知症の方を対象とした施設の運営も地域密着型サービスの一種です。

まとめ

介護手当は在宅介護をする家族の生活を支えるために、一定金額の手当を支給する制度のことです。自治体ごとに取り扱われている制度のため、受給要件や受給金額はエリアごとに異なり、場合によっては廃止あるいはそもそも実施されていないケースもあります。

また、その他の介護サービスとは併用できない場合も多いため、利用条件についてはお住まいの自治体ごとに細かく調べることが大切です。介護サービスにはほかにも多種多様な制度があり、「居宅サービス」のように在宅介護に適したものも多いです。

自身や家族、要介護者の状況・考え方を丁寧に汲み取りながら、相性の良いサービスをじっくりと検討しましょう。

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