改正育児・介護休業法 ~令和7年10月1日施行編~

公開日:2025年3月28日

法改正

令和6年5月に育児・介護休業法及び次世代育成支援対策推進法が改正されました。
今般の改正では、男女とも仕事と育児・介護を両立できるように、育児期の柔軟な働き方を実現するための措置の拡充、介護離職防止のための雇用環境整備、個別周知・意向確認の義務化などが規定されています。改正内容は、令和7年4月1日より段階的に施行されますが、ここでは、令和7年10月1日より施行される措置等を説明します。

柔軟な働き方を実現するための措置等【義務】

(1)育児期の柔軟な働き方を実現するための措置

事業主は、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に関して、以下5つの「選択して講ずべき措置」の中から、2つ以上の措置を選択して講ずる必要があります。

労働者は、事業主が講じた措置の中から1つを選択して利用することができます。
事業主が講ずる措置を選択する際、過半数労働組合等からの意見聴取の機会を設ける必要があります。
これは、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者が、柔軟な働き方を活用しながらフルタイムでも働ける措置も選べるようにするためのものです。
なお、すでに社内で導入している制度がある場合には、当該制度を「柔軟な働き方を実現するための措置」として選択することが可能です。

①「始業時間等の変更」
・フレックスタイム制
・始業または終業の時刻を繰り上げまたは繰り下げる制度(時差出勤の制度)
 ※上記いずれか(両方選択した場合でも措置を2つ設けたことにはなりません)

②「テレワーク等」
1日の所定労働時間を変更せず、月に10日以上利用できるもの(原則時間単位で利用可)。
 ※自宅で行われることが基本だが、サテライトオフィス等で行われるものを含みます。

③「保育施設の設置運営等」
保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与をするもの
(ベビーシッターの手配および費用負担など)
 ※現行の「育児のための所定労働時間の短縮措置の代替措置(育児・介護休業法第23条第1項)」の一つである「保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与」の取扱と同様です。

④「労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与」
1日の所定労働時間を変更せず、年に10日以上取得できるもの(原則時間単位で取得可)。
 (例)通常保育所に子を迎えに行く配偶者が出張等で当該迎えができない日に、時間単位で休暇を取得し保育園に迎えに行く
 (例)子が就学する小学校等の下見に行く など

⑤「短時間勤務制度」
1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含むもの

(2)柔軟な働き方を実現するための措置の個別の周知・意向確認

3歳未満の子を養育する労働者に対して、子が3歳になるまでの適切な時期に、事業主は柔軟な働き方を実現するための措置として(1)で選択した制度(対象措置)に関する以下の事項の周知と制度利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません。
なお、利用を控えさせるような個別周知と意向確認は認められませんので、ご注意ください。

家庭や仕事の状況が変化する場合があることを踏まえ、労働者が選択した制度が適切であるか確認すること等を目的として、上記の周知時期以外(※)にも定期的に面談を行うことが望ましいとされています。
※育児休業後の復帰時、短時間勤務や対象措置の利用期間中など

仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮【義務】

(1)妊娠・出産等の申出時と子が3歳になる前の個別の意向聴取

事業主は、労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た時と、労働者の子が3歳になるまでの適切な時期に、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する以下の事項について、労働者の意向を個別に聴取しなければなりません。

意向聴取の時期は、①、②のほか、「育児休業後の復帰時」や「労働者から申出があった際」等にも実施することが望ましいとされています。

(2)聴取した労働者の意向についての配慮

事業主は、(1)により聴取した労働者の仕事と育児の両立に関する意向について、自社の状況に応じて配慮しなければなりません。

配慮にあたっては、
・子に障害がある場合等で希望するときは、短時間勤務制度や子の看護等休暇等の利用可能期間延長
・ひとり親家庭の場合で希望するときは、子の看護等休暇等の付与日数増加といった対応が望ましい
とされています。

これらの個別周知や意向確認の際に用いる「様式」例がありますので、社内用にアレンジしてご活用ください。

まとめ

本改正への対応においては、従業員の意見や希望を聞いて、従業員が利用しやすい制度を選びましょう。
制度の内容は従業員向け説明会等で周知できますが、個別周知・意向確認は一人ひとりに対して実施する必要がありますので、対象者ごとに面談を行い、書面で取得の意向を確認しましょう。
また、新たな休暇制度やテレワークを導入する場合は、就業規則の各種規定も変更する必要があります。働き方のルールや雇用形態の整備を含めた対応を進め、柔軟な働き方の実現に努めましょう。

以上

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