CDP 新たな開示プラットフォームを公表
公開日:2024年10月25日
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企業の環境情報開示のグローバルなシステムを運営する国際NGOのCDPは、2024年6月4日、新たな開示プラットフォームを公表し、新プラットフォームでの回答受け付けを開始しました
新たな開示プラットフォームを公表
CDPの開示プラットフォームで情報開示している企業は、2023年には23,000社以上(うち日系企業1,985社以上)にのぼり、多くの企業に影響があります。今回の新プラットフォームでの主な変更は以下の点で、報告の負担を従来のものより軽減し、柔軟な情報開示を可能とするねらいです。
まず1つ目の変更点として、これまでの「気候変動」「森林」「水」の3つの質問書を集約し、「プラスチック」および「生物多様性」に関する項目もあわせて単一の質問書としています。これまで各質問書で重複していたガバナンスや戦略といった自社のコアに関する質問についても、一度に回答できるようになりました。
それに加え、それぞれの環境課題で相互に関連していた箇所を総合的に捉えることで、自社事業、サプライチェーン、財務上の意思決定における環境全般のリスクや影響、機会をより適切に評価することが可能となりました。なお、「気候変動」に関しては全対象企業が回答必須で、「森林」「水」に関してはCDPが関連性があると判断した企業のみ回答が求められます。「プラスチック」「生物多様性」についてはSMEを除く全対象企業が回答必須となっています。
2つ目の変更点として、他の情報開示基準やフレームワークとの整合性の向上が挙げられます。CDPは2018年に気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に整合した質問書に改訂していますが、今回の改訂では2023年に公表されたIFRS S2号「気候関連開示」にも準拠した質問内容となりました。これによりIFRS S2号での開示を進める企業にとって省力化の一助となることが期待されます。
また、新しい質問書はTNFD提言の開示項目とも部分的に整合しており、これまでの「リスクと機会」の質問項目に加えて、新たにTNFD提言の考え方である「依存とインパクト」の特定、優先地域の特定についても盛り込まれています。
さらに米国証券取引委員会(SEC)の気候関連開示規則案についても質問項目の75%が整合しており、SECの最終案に基づき整合性を高めていく予定です。
その他、主要な国際的開示基準である欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)やサステナブル・ファイナンス・タクソノミーとの整合性を高めていく予定となっています。
3つ目の変更点として、中小企業向けの質問書を新たに導入したことが挙げられます。グローバル・バリューチェーンの重要な構成要素である中小企業に対し、回答しやすい環境を整えるのが目的です。これまでの簡易版質問書に代わり、「コーポレートSME質問書」を通してグローバル基準での情報開示が求められます。内容としては大企業向けの「コーポレート完全版質問書」と整合した構成となっており、「気候変動」に焦点を当て、より簡素化した質問書となっています。SMEに対しても、気候変動の他に「森林」「水」の項目が用意されていますが、これらの項目に関連する企業のみが対象であり、スコアリングはされません。
CDPによると、2023年の回答を通じて「気候移行計画*」を開示した企業が2022年と比べて44%増加しており、CDPでの情報開示が企業と市場のステークホルダーがエンゲージメントを維持していく上で重要なツールとなりつつあると報告しています**。
今回CDPが公表した新たなプラットフォームにより、企業の包括的な情報開示を促進することで、「気候変動」だけでなく他の環境課題においても、これらの情報開示が企業や投資家が環境課題に取り組む上でさらに重要なツールとなることが期待されます。
* 気候移行計画組織が既存の資産、事業、ビジネスモデル全体を1.5℃目標達成に整合性のある温室効果ガス削減計画へと移行させる方法を明確に示した期限付きの行動計画。
** CDP2024年6月19日付リリース
(https://cdn.cdp.net/cdp-production/comfy/cms/files/files/000/009/213/original/PR_JP_0619.pdf)
MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2024年7月(第4号)を基に作成したものです。