越境ECのはじめの一歩!事業の立ち上げに必要な準備・注意点を解説
公開日:2023年10月13日
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越境ECに取り組むことで、日本国内の商品を海外の顧客に販売することができます。ECの市場は拡大を続けており、自社に合った形でビジネスを展開していくことで、新たな商機を得られるようになるでしょう。
この記事では、越境ECのメリット・デメリット、事業の立ち上げに必要な準備や注意点などを解説します。
越境ECとは
越境ECに取り組むために、まずは基本的な定義を押さえておきましょう。また、越境ECの市場規模がどの程度の大きさであるかも解説します。
越境ECの定義
越境ECとは、インターネットを活用して日本から海外に商品を販売する電子商取引(EC:Electronic Commerce)の事業をいいます。主な方法として自社でECサイトを立ち上げるほかに、海外のECモールに出店したり、海外で代行販売を行う業者に商品を買い取ってもらったりする方法があります。
自社で越境ECの事業に取り組むには、どの程度のリソースを割けるのかを踏まえた上で、適した方法を選んでいくことが大切です。
越境ECの市場規模
越境ECの市場規模は年々拡大しており、経済産業省が公表している「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」によれば、世界における2020年の越境ECの市場規模は9,123億米ドル(推測値)となっています。また、2027年には4兆8,561億米ドルにまで達するとも予測されており、今後も成長が見込まれている分野です。
また、国別の市場規模で比較をすると中国やアメリカは、日本の何倍もの市場規模を持っており、日本国内では販売しづらい商品であっても海外では大きなニーズがあるものもめずらしくありません。そのため、越境ECの事業に取り組んでいくことで、新たなビジネスチャンスを得ることが期待できます。
越境ECに取り組む4つのメリット
越境ECに取り組むことで、以下の4つのメリットが得られます。
- ・海外の顧客獲得につながる
- ・実店舗を海外に出店するよりもハードルが低い
- ・ビジネス拡大のチャンスを得られる
- ・日本製品のポテンシャルを活かせる
各メリットについて、それぞれ解説します。
海外の顧客獲得につながる
越境ECの事業に取り組むメリットとして、海外の顧客獲得につながる点があげられます。日本よりも人口が多い中国やアメリカなどは、その分だけ市場が大きく、自社の商品を販売するチャンスも増えるでしょう。
また、日本と比較的距離の近い国であれば、輸送コストを抑えることができるので有利な形でビジネスを展開できます。自社の商品の特性に合った市場で販売を行っていくことで、新たな顧客獲得につなげられるはずです。
実店舗を海外に出店するよりもハードルが低い
越境ECはインターネットを通じて商品を販売する仕組みであるため、海外に店舗を構える必要がありません。海外でテナントを契約し、現地の人を採用して日本から商品を運び入れて販売するのは、労力や手間が多くかかります。
越境ECであれば、そうした負担がないため、比較的スムーズに海外への販売を始められるでしょう。直接海外に出店せずに販売を行えるので、事業を始めるハードルを下げられます。
ビジネス拡大のチャンスを得られる
販売する商品にもよりますが、越境ECで海外の顧客向けに販売を行うことによって、日本でビジネスを行うよりも有利なビジネスができる可能性があります。日本では供給過多になっている商品であっても、海外の市場ではまだまだ多くのニーズがある商品もあるでしょう。
ライバルの多い日本市場で販売を行うよりも、比較的ライバルの少ない市場を狙っていくほうが、ビジネスを拡大につなげていけます。また、自社の商品に対する新たなニーズを把握することで、取り扱う商品を見直すきっかけにもなるはずです。
日本製品のポテンシャルを活かせる
越境ECを活用すれば、日本の商品を世界中に販売することが可能です。日本製品に対する評価は海外でも高く、そのポテンシャルを活かしていけば、多くの国で販売を行うチャンスを得られるでしょう。
日本の商品に魅力を感じている顧客が多いことを、越境ECの事業を通じて把握する機会にもなるといえます。
越境ECの3つのデメリット
越境ECに取り組むメリットは多くありますが、一方でデメリットも少なからずあります。どのようなデメリットがあるのかをそれぞれ解説します。
輸送コストが割高になる
越境ECのデメリットとして、輸送コストが割高になることがあげられます。一般的に、越境ECでは日本から海外に向けて発送を行うため、国内向けよりも輸送コストが割高になるでしょう。
また、海外の顧客にとっても送料の高さや商品が到着するまでにかかる時間、紛失のリスクなどが気になるはずです。輸送コストは距離や重量で違ってくるため、初めのうちは比較的近い国で、軽量のものを販売するほうが事業面で良い部分もあります。
越境ECに慣れてきたら、少しずつ販路を拡大してみると良いでしょう。
国や地域ごとの対応が必要
日本国内で商品を販売するときは、日本の法律を理解しておけば問題ありませんが、越境ECに取り組むときは、現地の法律や規制についても把握しておく必要があります。特に個人情報の取扱いについては、注意が必要です。
また、販売を考えている国に応じてマーケティング施策を検討していかなければなりません。Webサイトに表示される言葉の翻訳や現地の商習慣に合わせた販売など、事業のローカライズ化に関して一定のコストがかかります。
思いがけないトラブルが発生することもある
ECではクレジットカードの不正利用や配送トラブルなどが起こるケースがありますが、日本国内で販売を行う以上に、越境ECの場合はトラブルに気をつける必要があります。越境ECを開始する前に、販売を想定している現地の情報をできるだけ多く収集して、どのようなトラブルが起こるのかを把握しておくことが重要です。
必要に応じて、外部の専門家のサポートを受けるなどして、しっかりと準備を整えてから事業に取り組むようにしましょう。
越境ECを始めるために必要な準備
越境ECを始めるためには、事前に準備を整えておく必要があります。主な準備としては、以下のとおりです。
- ・商品を準備する
- ・販売する国の法律等をチェックする
- ・予算と人を確保しておく
- ・出店形態を選ぶ
商品を準備する
越境ECを始めるためには、どの商品を販売するかを決めるだけでなく、現地の法律をクリアしているかもチェックしておきましょう。商品によっては規制対象になっているものもあるため、知らずに販売を始めてしまうと、後から思いがけないトラブルを招くおそれがあります。
また、越境ECは商品が顧客の元に到着するまで時間がかかってしまうので、注文が入ってからすぐに配送の手配を取れるように、十分な在庫を確保しておきましょう。
販売する国の法律等をチェックする
販売を開始する前に、現地の法律や規制などについて最新の情報をチェックしておくことが大切です。インターネットに掲載されている情報は古いものもあるため、必要に応じて行政機関や専門家に確認をする必要があります。
また、日本とは商習慣が異なる部分もあるため、越境ECの事業を行うにあたって、どのような仕組みで取引が行われているのかをよく確認しておきましょう。
予算と人を確保しておく
越境ECは海外に実店舗を持たずに商品を販売できるため、余分なコストをかけずに始められます。しかし、インターネットを介した販売であっても、注文を受けたり商品を発送したりする作業は必要であるため、業務に支障が出ないだけの予算や人員を確保しておかなければなりません。
また、外国語に堪能なスタッフを配置するなどして、現地からの問い合わせにも対応できる体制を整えておきましょう。
出店形態を選ぶ
越境ECを行う方法としては、自社でECサイトを立ち上げて販売する方法があげられます。まずは小規模でビジネスを展開し、反応を見ながら徐々に拡大していきたいならば、自社でWebサイトを作成してみましょう。
また、日本国内でサービスを展開しているモールを利用して、海外からの注文に対応するのも良いでしょう。注文が多ければ、現地のモールに出店をして、さらにビジネスを拡大していく方法を取るほうがリスクを抑えられるといえます。
越境ECを行う時の注意点
越境ECに取り組む際は、いくつか注意しておきたい点があります。どのような点に気をつけるべきかを解説します。
言語の違いによる壁
越境ECを始める上でハードルとなりやすい点として、言語の違いによる壁を感じてしまうことです。自社でECサイトを立ち上げるにしても、現地のモールを利用するにしても、商品説明や決済方法などを正確に翻訳する必要があります。
言語が違えば、文化や風習も異なるため、日本語の表現をそのまま機械的に翻訳するだけでは微妙なニュアンスが伝わらないこともあります。事前にできるだけリスクを回避するのであれば、翻訳代行サービスを利用して言語の違いによるトラブルが起こることを未然に防ぐことが大切です。
販売を開始するにあたって、書類作成などの事務作業も必要になるため、自社のスタッフで対応できない部分は外部のサポートを受けるようにしましょう。
輸出に関する許可証取得に手間がかかる
越境ECをスタートさせるには、それぞれの国が定めている輸出許可証を取得しなければなりません。特に、食料品や化粧品、医薬品などを販売する際は注意が必要です。
許可を得ないまま販売を行うと、違法行為と見なされるケースがあり、税関を通過できないおそれがあります。それぞれの国が定めている基準を満たしているかを証明するために、多くの書類を提出しなければならないことから、越境ECの事業を始めるには専門家のサポートを受けるほうが無難だといえます。
国によって決済方法が異なる
海外での販売で気をつけておきたい点は、国によって決済方法が異なることがあげられます。モバイル決済やスマホ決済、クレジットカード決済など国によって、好まれる決済方法は異なるので、販売する国でどのような決済方法が主流なのかをチェックしておきましょう。
また、トラブルを回避するために安全性の高い決済方法を選択することも大切です。さらに、外貨建て決済・円建て決済のどちらを選択するかで利益率も違ってくるので、慎重に検討する必要があります。
現地の税制についてチェックが必要
日本以外の国で商品を販売する際は、その国に税金を納める義務が生じます。国によって課税対象となる品目や税率は異なるため、越境ECに詳しい税理士に相談するほうが良いでしょう。
また、外国での納税義務が生じるだけでなく、日本での申請手続も必要になり、関税についても把握しておく必要があります。品目によって関税率は異なるため、通関手続に詳しい専門家に相談をしておくことも大事です。
ECサイトを一から立ち上げるのは労力がかかる
ECサイトは運営を行うだけでも多くの労力がかかりますが、一からECサイトを作成するとなれば、さらに大きな労力が必要です。スムーズにECサイトを構築するためにも、ECカートシステム(ユーザーがECサイト上で、ショッピングカートに商品を入れ、注文・決済などをするためのソフトウェア)を活用してみましょう。
ECカートシステムには、商品の在庫管理や顧客情報の管理、広告の運用やクーポンの配布など必要な機能があらかじめ備わっています。海外決済や自動翻訳にも対応しているものもあるので、各社のサービスを比較しながら使いやすいものを選んでみましょう。
まとめ
越境ECを活用すれば、海外に実店舗を構えなくても、インターネットを介して商品を販売できます。海外向けに商品を販売することで販路を広げられますし、新たな顧客を獲得するチャンスも生まれてくるでしょう。
ただし、越境ECの事業を始めるにあたって、現地の法律や商習慣を理解したり、税制をきちんと学んだりしておく必要があります。また、言語の違いによるトラブルを避けるために、外部の専門家のサポートを受けるほうが無難です。
日本の商品は海外でも評判の高いものも多いので、自社の強みを最大限に活かせる形で越境ECに取り組んでみましょう。