障害者雇用に関する制度面の対応

公開日:2024年10月4日

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事業主が雇用する必要がある障害者の割合が2024年4月から引き上げられ、さらに2026年4月にも引き上げが予定されています。今回は、障害者雇用について企業に求められる制度面の対応を説明いたします。(本ニュースでは、「障がい者」の表記を法律に合わせて「障害者」としています。)
本号は社会保険労務士法人みらいコンサルティングに寄稿いただきました。

障害者雇用率制度とは

「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」は、従業員が一定数以上の規模の事業主には、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にすることを義務付けています。2024年4月に法定雇用率は従来の2.3%から2.5%に引き上げられ、従業員を40人以上雇用している事業主は障害者を1人以上雇用しなければなりません。さらに法定雇用率は2026年4月から2.7%への引き上げが予定されています。
なお、障害者の雇用の促進及び安定を図るため、事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率を算定できることとしています(特例子会社制度)。
また、企業グループ算定特例、事業協同組合等算定特例といった制度があります。

障害者雇用納付金制度

障害者を雇用する際は、作業施設や作業設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理等が必要となり、健常者の雇用に比べて一定の経済的負担を伴うことから、障害者を多く雇用している事業主の経済的負担を軽減し、事業主間の負担の公平を図りつつ、障害者雇用の水準を高めることを目的として「障害者雇用納付金制度」が設けられています。
具体的には、法定雇用率が未達成の企業のうち、常時使用する労働者が100人超の企業から障害者雇用納付金(不足する障害者数に応じて1人当たり月額50,000円)が徴収されます。また、この納付金を元に、法定雇用率を超えている企業に対して、調整金(100人超の事業主の場合)、報奨金(100人以下の事業主の場合)が支給されます。

障害者雇用に関する届出

従業員が40人以上の事業主は、毎年6月1日現在の「障害者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)」をハローワークに報告する義務があります。従業員40人以上規模の事業所に報告用紙が送付されますので、必要事項を記載したうえで毎年7月15日までの報告が必要となります。
また、障害者を解雇しようとする事業主は、その旨を速やかにハローワークに「障害者解雇届」によって届け出なければなりません。

障害者雇入れ計画作成命令制度

障害者の雇用割合が法定雇用率を下回っている企業に対して、公共職業安定所長は「障害者の雇入れに関する計画」の作成を命じることができるとされています。
この命令の発出基準は以下のとおりです。
①実雇用率が全国平均雇用率未満であり、かつ不足数が5人以上の場合
②実雇用率に関係なく、不足数10人以上の場合
③雇用義務数が3人から4人の企業であって雇用障害者数0人の場合
計画作成命令が発出された場合には、命令発出後の1月1日から2年間の期間の障害者の雇入れ計画を作成し、この計画に沿って雇入れを進めていくことになります。改善が進まない場合には労働局などの特別指導がされますが、それでもなお改善されない場合には企業名が公表されることとなります。
上記の命令発出基準に該当する可能性がある企業は注意が必要です。

障害者職業生活相談員の選任

障害者を5人以上雇用する事業所では、「障害者職業生活相談員」(以下「相談員」)を選任し、その者に障害のある従業員の職業生活に関する相談・指導を行わせなければなりません。
相談員とは、障害者の職業生活全般についての相談、指導を行う企業内担当者をいい、具体的な職務としては以下のものがあります。
①障害者の適切な職務の選定、能力の開発向上等障害者が従事する職務の内容に関すること
②障害者の障害に応じた施設設備の改善など作業環境の整備に関すること
③労働条件や職場の人間関係等障害者の職業生活に関すること
④障害者の余暇活動に関すること
⑤その他障害者の職場適応の向上に関すること
相談員に選任するものは「障害者職業生活相談員資格認定講習」を修了など一定の要件を満たす必要があります。相談員を選任(変更を含む)した場合は「障害者職業生活相談員選任報告書」をハローワークに届け出る必要があります。
また、障害者の雇用義務のある事業主は、企業内で障害者雇用の取組体制を整備する「障害者雇用推進者」を選任するよう努める必要があります。障害者雇用状況報告に障害者雇用推進者の役職・氏名を記載する欄がありますので、選任した場合にはこの欄に記載します。

企業に求められる対応

障害者雇用は採用をすることがゴールではなく、いかに定着と活躍をしてもらうかが重要です。特に、障害者が就業しやすい環境をつくるにあたっては、特別な配慮を要するケースもあります。画一的な対応のみならず、一人ひとりの事情に沿った対応が必要になります。また、障害者雇用枠として採用して単純作業のみを任せる職場もあるようですが、障害者が活躍する職場では各々の個性を尊重し能力を引き出し発揮できるように育成しています。本人のキャリアへの志向や能力を十分に確認し、本人の望むキャリアステップを一緒に描くことがポイントとなります。

(発行:社会保険労務士法人みらいコンサルティング) 

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