内閣官房関係閣僚会合「機能性表示食品制度等に関する今後の対応」を取りまとめ

公開日:2024年9月20日

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内閣官房は2024年5月31日、同日に行われた紅麹関連製品への対応に関する関係閣僚会合において、「機能性表示食品制度等に関する今後の対応」の方針を公表しました。本対応方針の概要は以下図表のとおりです。

機能性表示食品制度等に関する今後の対応」の方針を公表

今後、パブリックコメント等の所定の手続きを経て、食品表示基準、食品衛生法施行規則等が改正される見込みです。(一部改正済の項目も含まれます)

機能性表示食品制度等に関する今後の対応

1.健康被害の情報提供の義務化
・ 事業者(届出者)は、健康被害と疑われる情報(医師が診断したものに限る)を把握した場合は、当該食品との因果関係が不明であっても速やかに消費者庁長官及び都道府県知事等に情報提供することを、食品表示基準における届出者の遵守事項とする。

・ 提供期限について、重篤度等に対応した明確なルールを設ける。
→これらを遵守しない場合は、食品表示法に基づき、機能性表示を行わないよう指示・命令する行政措置を可能とする。

・ 機能性表示食品を製造・販売等する営業者(届出者)に対しては、都道府県知事等への情報提供を、食品衛生法施行規則において義務付ける。
→義務に違反した場合は、食品衛生法に基づき、営業の禁止・停止の行政措置を可能とする。

・ 都道府県知事等に提供された健康被害の事例については、厚生労働省に集約し、医学・疫学的に分析・評価を行った上で、定期的に結果を公表する。

  
2.機能性表示食品制度の信頼性を高めるための措置
(1)GMPの要件化
・ 機能性表示を行うサプリメントについてはGMPに基づく製造管理を食品表示基準における届出者の遵守事項とする。

・ 届出者が自主点検をするとともに、必要な体制を整備した上で消費者庁が食品表示法に基づく立入検査等を行う。

(2)その他信頼性の確保のための措置
・ 新規の機能性関与成分に係る機能性表示の裏付けとなる安全性・機能性の課題について科学的知見を有する専門家の意見を聴く仕組みの導入等、消費者庁における届出時の確認をより慎重に行う手続(販売前提出期限の特例)を食品表示基準に明記する。

・ 届出後の定期的な自己評価・公表等、届出後の遵守事項の遵守を要件化する。

・ PRISMA2020の準拠について令和7年4月からの新規届出から導入する。

・ 事後チェックのための買上げ事業の対象件数を拡充する。

・ 特定保健用食品(トクホ)との違いや、摂取上の注意事項の記載方法などの表示方法や表示位置等の方式を見直す。


3.情報提供のDX化、消費者教育の強化
・ 食品衛生申請等システムを改修し、届出者が健康被害の情報提供を速やかに行うことができるシステムを構築するとともに、行政において類似事例等について迅速に集計・分析できるようにする。

・ 販売中の機能性表示食品に関する安全性や機能性に関する科学的根拠等の情報が消費者目線で使いやすくかつ分かりやすく提供されるよう、消費者庁ウェブサイトのDX化等の対応を強化する。

・ 機能性表示食品等の摂取について、医薬品等との相互作用や過剰摂取等のリスクに関するリスクコミュニケーションを進めるとともに、機能性表示食品を正しく理解し、健康の増進維持のために活用することができるよう、消費者教育を強化する。


4.国と地方の役割分担
① 複数の重篤例又は多数の健康被害が短期間に発生するなど緊急性の高い事案であって、

② 食品の流通形態等から広域にわたり健康被害が生じるおそれがあり、全国的な対応が求められるもののうち、健康被害の発生機序が不明であり、その特定のために高度な調査が必要だと国が判断した事案については、都道府県等と連携しつつ、必要に応じて国が対応する。

出所:紅麹関連製品への対応に関する関係閣僚会合「紅麹関連製品に係る事案を受けた機能性表示食品制度等に関する今後の対応」をもとに作成

 

本対応方針を踏まえ、既に法改正に関する具体的な議論が始まっており、機能性表示食品等を扱う事業者においては、こうした議論や法改正の動向を把握することが求められます。また、法令改正への備えとあわせて、この機会に以下の内容を踏まえ、社内の体制や取組について見直しを検討ください。

(1)健康被害情報の収集、行政機関への情報提供等
健康被害の原因の特定に注力した結果、行政機関への報告が後回しになり、被害が拡大したケースは少なくありません。今後の法改正により報告基準が明確化されることで、条件に該当する場合、躊躇なく行政機関に報告できるようになることが期待されます。

一方で、食品事業者に期待されるのは、法改正を受けてから、本対応をすれば良いということではありません。現在の食品衛生法第6条2項の趣旨を踏まえても、健康被害について複数の症例が事業者に報告され、因果関係が否定できない場合は、原因究明と併せて行政機関への報告を行い、健康被害の拡大を防止する措置を検討すべきです。食品事業者においては、当該対応を実現できるよう社内体制の整備・見直しが求められます。

(2)製造管理および品質管理等
サプリメントは機能性関与成分を濃縮すると同時に、その他の成分も濃縮されるため、サプリメントを構成するあらゆる成分について過剰摂取が生じる可能性が高いことが指摘されています。

衛生管理の不備により、健康被害を及ぼす可能性がある物質が混入した場合も同様に濃縮されるため、通常の食品よりも多く摂取してしまう可能性があります。食品事業者は、GMPが義務化されるかどうかに関わらず、原材料メーカーの状況を含め、あらためて衛生管理状況を見直すことが求められます。

(3)情報伝達の在り方
機能性表示食品は科学的根拠を有する機能性関与成分や、その成分等の機能を届出に基づいて表示することができる制度ですが、あくまで食品であり、疾病の治療や予防を目的としたものではないことを明確に消費者に伝える必要があります。より多く摂取すればより健康が増進されるとの誤った理解により、機能性表示食品は過剰摂取が生じやすい食品とされます。更に、他の食品や医薬品と併せて摂取することで、特定の成分が過剰になることも懸念されています。

機能性に関する情報だけでなく、これらのリスク情報を正しく消費者に伝えていくことが、機能性表示食品を扱う事業者に期待されているといえます。

 

MS&ADインターリスク総研株式会社発行のPLレポート(食品安全)2024年7月号を基に作成したものです。

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