生成AIを把握するためのはじめの一歩|基本的な種類とポイントを解説
公開日:2024年1月12日
その他
ChatGPTをはじめとした生成AIはさまざまなツールが出されており、注目されています。大量のデータからパターンを抽出するだけでなく、機械学習の実用化、AI自らがデータの特徴を習得するディープラーニング(深層学習)によって、幅広いシーンでの活用が期待されていると言えます。
この記事では、生成AIの概要や種類、何ができて何ができないのかといった点や注意すべきポイントなどを詳しく解説します。
生成AIとは?
AIとは、「人工的につくられた人間のような知能、ないしそれをつくる技術」「人工的につくった知的な振る舞いをするためのもの(システム)」等と言われています。大量のデータからパターンを抽出することで、分類や予測等を行うことが可能です。
さらに、顔認識や会話の分析等を行う「機械学習」の実用化や、学習したデータにどのような特徴があるかを示す特徴点をAIが自ら習得する「ディープラーニング(深層学習)」といった機能を備えています。業務処理能力や業務精度の向上等に貢献するものと認識されており、幅広いシーンでの活用が期待されている状況です。
2000年代以降は第3次AIブームとして、日本だけでなく世界の行政機関や民間企業で研究や開発、運用等が行われています。
生成AIのおもな種類
生成AIの利用範囲は多岐にわたりますが、おもな種類として「画像生成AI」「テキスト生成AI」「動画生成AI」「音声生成AI」といった分け方ができます。それぞれの特徴について解説します。
画像生成AI
画像生成AIは、利用者がテキストを入力すると、その内容に沿ってAIがオリジナルの画像を生成してくれるというシステムです。画像生成AIツールの例としては、「Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)」等が挙げられます。
Stable Diffusionでは、利用者が生成したい画像のイメージを英単語で入力することで、さまざまな画像をすぐにアウトプットできます。これまで自分で画像を作成できなかった方や、外部のクリエイターに依頼をしていた方にとって、画像生成AIのツールは大きなメリットになるでしょう。
一方で、生成AIが作成した画像が著作権等に触れていないかを事前にチェックしておく必要があります。他者の権利を侵害しないように、細心の注意を払って利用していくことが大事です。
テキスト生成AI
テキスト生成AIは、利用者がAIに対して質問をすることで、回答となるテキストを生成してくれるシステムです。ChatGPT等の出現によって、以前よりも滑らかな言語処理が可能になっており、一気にユーザー数が増える要因になったと言えるでしょう。
テキストの要約や生成、リサーチ等の幅広い用途で使えます。ただし、生成AIはインターネット上の情報を基に学習をしているため、必ずしも正しい回答が返ってくるとは限りません。回答をそのまま用いるのではなく、正しいソースや根拠があるのかを人の目で確認するファクトチェックが重要になります。
テキスト生成AIで出力した文章であっても、それを利用した場合の責任はユーザー側にあるので注意しましょう。
動画生成AI
画像生成AIやテキスト生成AIがリリースされる流れの中で、動画生成AIも出現しています。前述のStable Diffusionでは、元の動画からまったく新しい動画を生成できる「Gen-1」というAIモデルを開発しており、Meta社の「Make-a-Video」やGoogle社の「Phenaki」等にも用いられています。
使い方はシンプルであり、作りたい動画のイメージをテキスト入力すると、イメージに合わせたショート動画を作成することが可能です。今後は長い尺の動画にも対応する可能性もあり、動画制作の分野においても大きな変化が起こっていると言えるでしょう。
スマートフォンやタブレットの普及によって、動画に対する需要は高まっています。動画生成AIを上手に使えば、コストや手間を掛けずに動画を作ることも可能です。
音声生成AI
音声生成AIは、用意した音声データをAIに学習させ、新たな音声データとして生成できるAIのシステムです。例えば、Microsoftが開発した「VALL-E」なら、3秒間の音声サンプルを入力することで、高精度な再現が行える仕組みとなっています。
また、さまざまなパターンの音声データをAIに学習させることによって、長文を読み上げるだけでなく、感情に応じた表現等も実行できます。音声生成AIを活用することで、人間の声を用いたナレーション等を自動生成し、商品説明やアナウンス等、声を用いる分野での利用が期待されています。
動画生成AIのツール等と組み合わせることで、コンテンツ制作にかかる時間やコストを従来よりも抑えることが可能になるケースもあるでしょう。
生成AIに可能なこと・不可能なこと
生成AIだからといって、どのような作業でも行えるわけではありません。ここでは、生成AIに可能なこと・不可能なことについて解説します。
生成AIに可能なこと
生成AIに可能なこととしては、前述のように画像や動画等のコンテンツの生成が挙げられます。作成するコンテンツの内容にもよりますが、以前よりも少ないコストや時間で作成することが可能です。
また、生成AIは大量のデータを分析して、パターンを抽出する作業が得意であるため、定型業務の効率化との相性が良いでしょう。経費精算の自動化やマーケティング業務の補助といった分野において役立つ可能性があります。
そして、ChatGPTのような対話型生成AIであれば、クリエイティブな提案もサポートしてもらえます。例えば、キャッチコピーを考案してくれたり、プロモーション戦略を立案してくれたりすることが期待できます。
生成AIの基本的な特徴を理解した上で、さまざまなシーンで活用してみましょう。
生成AIでは不可能なこと
生成AIは事前に学習をしたデータに基づいてコンテンツを生成することは得意ですが、人間の感情を読み取りながら、一人ひとりに応じたオリジナルコンテンツを提供するようなことは不得意です。
まるで人間のような感情や思考を備えたAIをAGI(汎用性人工知能)と言いますが、現実にはまだ存在していません。つまり、生成AIに対して人間の感情に寄り添い、人間と同じように思考することをAIに求めるのは不可能です。
そのため、AIに任せることで空いたリソースを人が取り組むべきコア業務に充てることで、業務全体の質を高めていく姿勢が重要になります。生成AIの技術的進化は目覚ましいものがありますが、一方でAIが進化すればするほど、人間が担うべき役割もより明確になってきていると言えるでしょう。
生成AIの活用で注意すべきポイント
生成AIを活用する際は、いくつかの注意点もあります。どのような点に注意すべきかを解説します。
事実の真偽性のチェック
テキスト生成AIをはじめ、AIを利用して出力された情報は、必ずしも正しいものであるとは限りません。そのため、「事実の真偽性」を慎重に確かめるファクトチェックが必要になります。
例えば、ビジネスシーンでも利用される機会が増えてきているChatGPTの無料版において、2021年9月までの情報は学習しています。しかし、最新の情報は学習していないため、タイムリーな話題に対する回答の精度を期待することはできません。
情報の真偽をよく確かめないまま発信してしまうと、思いがけないトラブルを招く恐れもあるので注意しましょう。生成AIのツールを活用する時は、社内での運用ルールをあらかじめ定め、手順に沿って使っていくことが求められます。
著作権に関する課題
画像生成AIを用いた場合、有名なイラストレーターの作品をAIに複数学習させることによって、そっくりな絵柄のイラストを作成することが技術的には可能です。しかし、そのような使い方をしてしまえば、イラストレーターの著作権を侵害するだけでなく、SNS等で拡散され大きな問題になる恐れがあります。
生成AIツールを提供している企業が定めている規約をしっかりと確認するだけでなく、どの範囲まで商用利用ができるのかを事前にチェックしておきましょう。AIが出力したコンテンツであっても、それを対外的に使用すれば責任の所在はユーザー側にある点を踏まえておく必要があります。
情報漏えいやセキュリティ対策
テキスト生成AIの仕組みとして、社員の個人情報や自社製品の情報等を入力すると、データベースに記録されます。その後にほかのユーザーが質問した際に、何らかのタイミングで記録された個人情報が表示されてしまうリスクがあります。
情報の漏えいを防ぐには、例えば生成AIツールの設定で個人情報を学習させない設定にしたり、社内での運用マニュアルを整備して利用方法を社員に周知徹底させたりすることが大切です。ハードとソフトの両面から、セキュリティ対策を行いましょう。
サイバー攻撃への懸念
テキスト生成AIは、蓄積されたデータベースから新たな文章を自動生成することに長けています。しかし、その性質を悪用すれば、フィッシングメールの文面を作成することも可能です。
また、サイバー攻撃用のプログラムのコードを生成する目的で使われる可能性もあります。ある日突然、ホームページの情報が改ざんされるなどのトラブルが生じてしまうこともあるでしょう。
被害を最小限に留めるには、セキュリティを担当する社員とのコミュニケーションを緊密に行い、どのようなリスクがあるかを把握しておく必要があります。生成AIの利便性だけに注目するのではなく、リスクについても社内で情報を共有しておくことが大切です。
まとめ
機械学習や深層学習の実現によって、業務の効率化や精度の向上をサポートしてくれる生成AIが注目されています。基本的な仕組みを理解した上で活用すれば、これまで行っていた業務にかかるコストや時間を削減でき、その分のリソースをコア業務に振り向けることができます。
一方で、生成AIの利用について社内ルール等を定めないまま使ってしまうと、著作権の侵害や個人情報の流出といったリスクが発生する恐れがあるでしょう。どの範囲まで生成AIを利用するかをきちんと定めて、日々の業務に役立てていくことが大切です。