令和5年度税制改正 生前贈与(2)
公開日:2023年12月11日
法改正
令和5年度税制改正により見直しとなる生前贈与に関する取り扱い、第2回目の今回は「相続時精算課税」について、制度の内容と改正点をお伝えします。
なお、本号は税理士法人タクトコンサルティングに寄稿いただきました。
相続時精算課税の現行(改正前)の取り扱い
(1)適用要件
相続時精算課税は、原則として60歳以上の父母又は祖父母(以下「特定贈与者」)から18歳以上の子又は孫(以下「相続時精算課税適用者」)に財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。本制度は、「相続時精算課税選択届出書」等の一定の書類を納税地の所轄税務署長に提出することにより適用を受けることができます。いったん相続時精算課税を選択すると、その贈与者と受贈者間では暦年課税の適用はできませんのでご注意ください。
(2)贈与税の計算方法
相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与を受けた財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額2,500万円を控除し、その残額に一律20%の税率を乗じて贈与税を計算します。
暦年課税と異なり、特別控除額2,500万円があること、税率が超過累進税率ではないことが特徴で、非上場株式など金額が大きな財産を一括で贈与したい場合に適しています。
(3)相続税計算への加算
特定贈与者が死亡した場合は、その相続税の計算上、相続時精算課税を適用した贈与財産の価額(贈与時の価額かつ特別控除額控除前の価額)を加算して相続税を計算します。その際、その贈与財産について過去納税された贈与税額は控除あるいは還付されます。暦年課税の相続時の加算と同様、加算された贈与財産は相続税率により再計算されますが、違いは加算期間の制限がないことです。
基礎控除の創設
相続時精算課税の利便性を向上させ、生前にまとまった財産を次世代に移転しやすくすることを目的に、相続時精算課税の贈与税計算において、2,500万円の特別控除額とは別に110万円の基礎控除額が創設され、毎年110万円までは課税されないことになりました。例えば、特定贈与者から現金3,000万円の贈与を受けた場合、贈与税の計算は、{3,000万円-110万円(基礎控除)-2,500万円(特別控除)}×20%=78万円となります。また、相続時の加算額については、基礎控除後の金額になりますので、前述の例では2,890万円(3,000万円-110万円)が加算額となります。暦年課税の場合は、基礎控除額控除前の金額が加算されますので、この点は異なります。
適用時期等
今回の改正は、令和6年1月1日以降の贈与から適用されます。
以上、2回にわたって見直しとなる生前贈与についてお伝えしてきました。そのほかに令和5年度税制改正大綱では市場価格と相続税評価額が大きく乖離しているマンション(一般的に高層マンション)についてその評価方法の見直す旨の記載があり、令和6年1月1日以降の相続又は贈与により取得した財産への適用に向けて、現在評価方法が検討されております。
(寄稿:税理士法人タクトコンサルティング、発行:三井住友海上経営サポートセンター)