ホルムズ海峡航行に関する現状とエネルギー原料物流への影響
公開日:2026年6月19日
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2026年2月28日に米国とイスラエルがイランを攻撃したことを受け、イランのイスラム革命防衛隊が3月2日にホルムズ海峡の通航管理を強化、「ホルムズ海峡を通る船は攻撃する」と宣言しました。
その後、イランは大型タンカーの航行ルートにもおよぶ海域への機雷設置を宣言する一方で、4月には米国がイランの港湾および沿岸海域に出入りする船舶を対象とした海上封鎖措置を打ち出すなど、ホルムズ海峡を巡る二国間の攻防激化により、同海域を安全に航行することは困難な状況に陥っています。
同海峡が事実上閉鎖されるとペルシャ湾近郊の産油国からの原油や液化天然ガスの物流に大きな影響をおよぼしますが、原油輸入量全体の9割以上を当該地域から調達している日本への影響は特に甚大と言えます。本稿では、ホルムズ海峡の概要と現状を整理するとともに、同海峡の通航状況が今後のエネルギー原料物流に与える影響について解説します。
ホルムズ海峡の概要と現状

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ世界のエネルギー原料物流において極めて重要な海上交通の要衝です。古来よりインド洋と中東を結ぶ交易の要所として香辛料や絹等の輸送においても重要視されてきました。20世紀に入り主要エネルギー原料が石炭から原油に置き換わると、ペルシャ湾に接する産油国からの原油や液化天然ガスを輸送するために同海峡の利用はますます活発になり、現在では世界で消費される原油と液化天然ガスの2割以上がこの海峡を通過するとされています。
このように世界的に見ても重要な役割を果たしている海峡ではありますが、最狭部は約34kmであり、大型船舶が安全に航行できる十分な水深を持つ水域はさらに限定されています。そのため、船舶同士の衝突を防ぐべく、進行方向ごとに航路を分ける分離通行方式(Traffic Separation Scheme, TSS)が設定されており、その航路は本来海峡の中間線より南のオマーン側に設けられています。
平時はこの分離航路帯を利用することで、大型タンカー同士でも安全にすれ違うことが可能ですが、往路・復路、その間の分離帯の幅はそれぞれ2~3km程度しかありません。このように世界的に重要な要衝でありながら、地理的・航行上の制約が大きくその交通量に影響することから、ホルムズ海峡は地政学上最も重要な「チョークポイント(窒息点)」と呼ばれています。

今回イランはこの分離航路帯周辺(下図で「危険水域」と記載されている箇所)に機雷を敷設したと主張し、イラン沿岸のゲシュム島とララク島の間を経由する航路を代替ルートとして指定しました。半ば強制的に自国側を航行させることにより、同海峡の通航を事実上の支配・管理(友好国の選別と通行料の徴収)することが目的とされています。なお、本稿執筆時点では、当該航路を航行できた船舶も確認されておりますが今後も同様に通航できるかは不明です。

ホルムズ海峡封鎖に伴うエネルギー原料物流への影響
前述のとおり日本の輸入エネルギー原料は、その9割以上を中東の産油国に頼っているため、当該地域の海上物流の滞留が国民の生活に直結する事態となるのは明らかです。

一方で戦争終結以外にホルムズ海峡と周辺海域の運航正常化は見込めない状況にあると言え、今後のエネルギー原料入手のためには代替手段を検討することも喫緊の課題となっています。2026年4月時点では以下のような代替調達ルートが検討されていますが、ルートによっては輸送日数の長期化や原油の性質による課題※があります。
※日本の製油所の多くは中東産の高硫黄中・重質油に最適化された精製設備を有していますが、エクアドル産等に見られる超重質油や米国産の軽質油を処理するためには特殊な設備を追加で用意する必要があります。

今後の見通し
戦争終結と共にホルムズ海峡における物流は正常化が期待されますが、今後の情勢次第では緊張状態が中長期的に続く可能性もあり、依然として予断を許しません。イランは戦後も通行料徴収を示唆しており、中東産原油・LNGの輸送コスト上昇が常態化する懸念があります。
この影響は物流費の増加にとどまらず、原油・LNG価格の高騰を通じて、電力料金や製造コスト、輸送費の上昇を招き、世界経済や市民生活へ広範な影響をおよぼす可能性があります。特にエネルギー輸入依存度の高い国では、インフレや景気減速リスクが一層高まることが懸念されます。
各国では代替輸送ルート整備や再生可能エネルギー導入拡大が進められていますが、短期間で中東依存を解消することは難しく、今後も安全保障・地政学動向を継続的に注視する必要があります。
この記事は、「MS&AD Marine News 2026年6月1日発行分」を基に作成したものです。
















