10/1からスタート!消費税インボイス制度のファイナルチェック
公開日:2023年8月28日
法改正
インボイス制度の開始が目前に迫って参りました。今回はインボイス制度の理解に必要な「消費税計算のしくみ」や「仕入税額控除」を中心に説明をいたします。
消費税計算のしくみ
まずは消費税の仕組みを説明いたします。
(1)あなたは小売店で10,000円の買い物(標準税率10%対象)をし、10%の消費税とともに11,000円を支払いました。
(2)その商品は、小売店が問屋から7,000円(税込7,700円)で仕入れたものでした。 図で表すと以下のようになります。
(3)小売店に注目すると、あなたへの販売代金11,000円と仕入代金7,700円の差額は3,300円ですが、このうち商品本体部分の差額3,000円が小売店の純粋な「もうけ」で、消費税部分の差額300円は、小売店が国に納付する消費税となります。
(4)事業者は、売上とともに「預かった消費税」から、外部への支払いとともに「支払った消費税」との差額を国へ納付することになります。
(5)この「支払った消費税(この場合700円)を差し引くことができる」しくみを「仕入税額控除」と言います。「仕入」という名前ですが、外部に対する支払いで消費税の対象となるもの(例:水道光熱費、店舗の家賃等)とともに支払った消費税すべてを指します。
インボイス制度のキーワード「仕入税額控除」
(1)インボイス(適格請求書)制度は、何らかの要件を満たしている(=適格である)請求書に基づいた支払いでなければ、仕入税額控除を認めないという制度です。インボイスを発行するためには「適格請求書発行事業者」としての登録が必要であり、その登録ができるのは自らが消費税の申告・納付を行う「課税事業者」に限定されます。
(2)「課税事業者」とは、2年前(2期前)の消費税の対象となる売上(=課税売上高)が1,000万円を超えていた事業者を言います。課税売上高とは、物品販売や役務の提供など、一般的な商売において売上となるもののほとんどが該当します。反対に2年前(2期前)の課税売上高が1,000万円以下であった場合は「免税事業者」となります。
(3)適格請求書発行事業者になることができるのは課税事業者だけであり、免税事業者はなることができません。そのため免税事業者が交付する請求書は「適格請求書(インボイス)」ではないため、相手方で仕入税額控除が認められないのです。先ほどの小売店と問屋の例で、小売店としては仕入代金の支払先(=問屋)が「適格請求書発行事業者」であれば700円の仕入税額控除を受けられますが、問屋が「適格請求書発行事業者」でない場合は仕入税額控除が認められず、1,000円を申告・納付しなくてはいけません。
今後の取引について
あなたが小売店の店長(社長)の立場だったら、適格請求書発行事業者である問屋と、そうでない問屋、どちらから仕入れようと考えますか?適格請求書発行事業者でない問屋に対して「おたくから仕入れると消費税を多く納めないといけないから・・・」と心の中で思ってしまうかもしれません(実際に言ってしまうと、下請法や独占禁止法に抵触するおそれがありますのでご注意を)。
(寄稿:NTS総合税理士法人)
三井住友海上経営サポートセンター発行のビジネスニュース2023年8月号を基に作成したものです。