帝国データバンク公表 「価格転嫁率、4割回復も頭打ちか 価格決定権の弱い企業や業種はコスト反映できず 企業だけの努力に限界も」

公開日:2026年4月15日

経営に関する全般

2月調査時点で、企業がコスト上昇を販売価格にどの程度上乗せできたかを示す価格転嫁率は42.1%となりました。4割台を回復したものの、依然として転嫁が進まない企業が少なくないです。川下産業や価格決定権の弱い業種、小規模企業ほど負担が重く、交渉上の立場の弱さも顕著でした。コスト上昇分を企業単独で価格転嫁することには限界が感じられ、取引慣行の見直しや交渉支援、消費者理解の促進が不可欠となっています。

※株式会社帝国データバンクは、全国2万3,568社を対象に、「価格転嫁」に関するアンケート調査を実施しました。なお、価格転嫁に関する実態調査は、前回2025年7月に実施し、今回で7回目。

 調査期間:2026年2月13日~2月28日(インターネット調査)
 調査対象:全国2万3,568社、有効回答企業数は1万416社(回答率44.2%)

価格転嫁率は42.1%、再び4割台に到達

自社の主な商品・サービスにおいて、コストの上昇分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているかを尋ねたところ、コストの上昇分に対して『多少なりとも価格転嫁できている』と回答した企業は76.9%となり、前回調査(2025年7月)から3.2ポイント上昇しました。内訳をみると、「2割未満」が24.0%(前回 23.9%)、「2割以上5割未満」が16.7%(同17.0%)、「5割以上8割未満」が 17.6%(同 17.1%)と部分的な転嫁にとどまる企業が大部分を占めています。

一方で、「8 割以上」転嫁できている企業は14.0%(同 11.9%)、「10割すべて転嫁」できている企業は4.7%(同 3.8%)で、「値上げマインドが認知されているため、ある程度柔軟に対応してもらえている」(機械・器具卸売、鹿児島県)といった声が寄せられました。

「全く価格転嫁できない」と回答した企業は前回調査より1.6ポイント減少したものの、10.9%と依然として1割を上回りました。企業からも「2年前に価格転嫁したが、これ以上転嫁すると、新規受注に支障をきたすと考え、我慢している」(電気機械製造業、滋賀県)等の声が聞かれました。

また、コスト上昇分に対する販売価格への転嫁度合いを示す「価格転嫁率(注1)」は42.1%でした。これはコストが100円上昇した場合に42.1円しか販売価格に反映できず、残りの約6割を企業が負担していることを示しています。前回調査(価格転嫁率 39.4%)と比較すると2.7ポイント上昇し、およそ1年ぶりに4割を上回りました。

価格転嫁の状況と価格転嫁率の推移

注1 価格転嫁率は、各選択肢の中間値に各回答者数を乗じ加算したものから全回答者数で除したもの(ただし、「コスト上昇したが、価格転嫁するつもりはない」「コストは上昇していない」「分からない」は除く)

川下産業や公的価格等価格決定権の弱い業種ほど厳しく

サプライチェーン別に価格転嫁の状況をみると、「化学品卸売」(62.1%)や「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(57.7%)、「機械・器具卸売」(53.2%)等、卸売業の業種を中心に、転嫁率は5割を超えました。

他方、消費者に近い川下に位置する業種、「飲食店」(32.8%)や「旅館・ホテル」(28.2%)等では、継続的な価格転嫁が難しい様子が浮き彫りとなっています。企業からも「値段を上げるとお客様から高いと認識されてしまい、集客の減少につながる」(飲食店、石川県)や「競合店や近隣の地域状況を鑑みて簡単には値上げできる状況ではない」(旅館・ホテル、長野県)といった声が寄せられ、消費者の節約志向が強まるなかで、競合相手の多い業態では、予想以上に値上げに踏み切りにくい実態がうかがえました。

また、「国が公示する技術者単価が標準としてあるため、自社の都合で価格設定することは難しい」(専門サービス、北海道)や「手数料など法律で決められている」(不動産、神奈川県)等、価格を容易に変更できない価格決定権の乏しい業種・業態では、自社でコスト増を吸収せざるを得ないケースも少なくないです。特に、病院等を含む「医療・福祉・保険衛生」(14.7%)は非常に低い価格転嫁率で推移しており、企業の収益性悪化につながっています。

サプライチェーン別の価格転嫁の動向

販売価格の交渉、企業の5割程度が可能も、値上げは低調

直近6か月における自社の主な商品・サービスに関する仕入れ価格の状況について尋ねたところ、「上がった」と回答した企業は71.5%と7割を超えました。同様に販売価格の状況を尋ねたところ、「上がった」と回答した企業は45.8%と5割を下回り、「変わらない」は44.4%と同程度でした。

企業からは「仕入れ元からは価格を上げますという通知のみで、交渉余地はない」(専門サービス、宮城県)や「販売先によって対応の差が大きく、いまだにコストダウンを要求されることもある」(鉄鋼・非鉄・鉱業、群馬県)といった声が聞かれました。仕入れ価格が上がったとする企業の割合は、販売価格が上がったとする企業の割合を20ポイント以上上回っており、価格転嫁の難しさがうかがえます。

規模別にみると、仕入れ価格が「上がった」とする企業は、企業規模が小さいほどその傾向を強く実感しており、反対に販売価格については、規模が大きい企業ほど「上がった」と捉えていました。

仕入れ価格と販売価格の状況

価格交渉の状況について尋ねたところ、仕入れ先と「価格交渉をした」企業は 52.4%、販売先と「価格交渉をした」企業は56.2%でした。価格交渉の有無は規模によって如実に異なり、「小規模企業」における価格交渉の実施割合は、仕入れ先(42.9%)、販売先(48.0%)のいずれも4割台にとどまりました。

規模が小さい企業ほど価格交渉が十分に行えていない状況が表れました。企業からは「取引先が大手の場合、力関係などにより交渉は困難」(メンテナンス・警備・検査、山口県)といった声も複数寄せられました。

業界別に「価格交渉をした」割合をみると、「消費者が売り先なので、価格交渉をするわけにいかず、値上げも難しい」(飲食料品小売、秋田県)や「清掃やセキュリティなどの機材、メンテナンス料が上がると一方的な通知があり、交渉する余地がない」(貸家業、岡山県)というように、『小売』(仕入れ先 35.8%、販売先 25.3%)や『不動産』(同 37.8%、同 35.1%)では価格交渉が特に難しい様子がうかがえました。

他方、『運輸・倉庫』(同 54.6%、同62.4%)は、価格交渉自体は比較的実施できているものの、十分な価格転嫁には至っておらず、交渉が不調に終わっているケースが多い状況が浮き彫りになりました。

仕入れ先と販売先との価格交渉の有無

企業努力に限界も、取引慣行の見直しや交渉支援が求められる

本調査の結果、自社の商品・サービスのコスト上昇に対して、「多少なりとも価格転嫁できている」とした企業は7割台後半に回復しました。一方で、依然として1割の企業が「全く価格転嫁できない」としており、全体の価格転嫁率は前回調査から2.7ポイント上昇したものの、42.1%にとどまりました。

価格転嫁が進まない背景には、消費者の節約志向や度重なる値上げへの抵抗感の強まりがあります。企業側も「これ以上の値上げは顧客離れにつながる」と懸念し、収益性悪化との板挟みになっています。さらに、医療分野をはじめとする価格決定権が乏しい業種では、容易に価格を変更できず、コスト増を自社で吸収せざるを得ないケースも少なくないです。

その一方で、価格上昇に対する理解の浸透、代替が利きにくい商品・サービスの保有、強いブランド力等を背景に価格受容性が確保される企業では価格転嫁が円滑に進んでいます。

また、価格交渉状況をみると、仕入れ先・販売先のいずれでも交渉を行った企業は5割程度にとどまっています。特に小規模企業ほど仕入れ価格上昇の影響を強く受ける一方で、値上げに関する価格交渉の実施率も低いです。小売業や不動産業では販売先との交渉自体が難しいケースが多く、大企業との力関係や、消費者相手の業態におけるそもそもの交渉困難といった取引の構造が障壁となっています。

価格転嫁が十分に進まない状況を踏まえると、企業単独の努力だけでは限界が感じられます。価格転嫁を前向きに進めるためには、まず、適正な価格交渉を促す取引慣行の見直しや、小規模企業の交渉力を支援する仕組みを強化する必要があります。政府としても、中小受託取引適正化法(取適法)等の運用強化やガイドライン整備、相談体制の充実を通じて適正な価格交渉を後押しすべきでしょう。

また、消費者にはコスト構造や価格改定の必要性を丁寧に伝え、理解を得ることが重要であり、企業自身も付加価値向上や生産性改善を進め、適正な価格形成につなげることが求められます。

<参考>企業からの声

調査先企業の属性

1.調査対象(2 万 3,568 社、有効回答企業 1 万 416 社、回答率 44.2%)

2.企業規模区分

株式会社帝国データバンク発行の「価格転嫁に関する実態調査(2026年2月)」(2026年3月19日)を基に作成したものです。

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