【2026年】中小企業省力化投資補助事業(補助金)の仕組みと申請方法、活用事例を解説

公開日:2026年2月9日

助成金・補助金

「中小企業省力化投資補助事業」とは、中小企業での省力化を推し進め、生産性の向上を支援するための制度です。2023年度の補正予算により創設され、条件や枠組みを微調整しながら2026年も引続き運営されています。

この記事では、最新である「第5回公募」の情報をもとに、中小企業省力化投資補助事業の基本的な仕組みや要件、申請方法等を解説します。また、本事業を実際に活用した企業の事例も見ていきましょう。

中小企業省力化投資補助金とは

「中小企業省力化投資補助金」とは、中小企業の課題解決を目的に、経済産業省の2023年度補正予算により創設された補助事業のことです。名称が示すように、条件を満たした中小企業が省力化投資をする際に活用できる補助金であり、2026年も継続的に運営されています。

ここではまず、中小企業省力化投資補助金の概要について見ていきましょう。

中小企業省力化投資補助金の目的

中小企業省力化投資補助金は、中小企業が抱える問題点のうち「人手不足」と「生産性」の2つに着目し、解決へ導くことを目的としています。中小企業は大企業と比べて採用競争力が低く、「仕事があっても人がいない」という構造的な求人難を抱えやすい状態にあります。

また、システムや機械設備の面でも十分な投資が難しく、生産性の向上を実現しにくい面もあると言えるでしょう。こうした足元の課題を解決するため、省力化・自動化につながる設備・システムの導入を補助し、生産性の向上をめざしてもらうのが基本的な方向性となっています。

対象事業者

本事業の補助対象者は、日本国内で事業を営む中小企業・小規模事業者です。ここには、一定の要件を満たす特定非営利活動法人や社会福祉法人、組合も含まれており、幅広い事業者に活用の機会が用意されています。

また、「人手不足にある」という点も条件の一つとなっており、人手不足であるかどうかは客観的な資料で示せなければなりません。なお、第5回公募からは、「従業員数0名の事業者」や「賃上げ要件の対象になる従業員がいない事業者」は申請ができなくなっているため注意が必要です。

2つの類型

中小企業省力化投資補助金には、仕組みが異なる2つの類型が設けられています。ここでは、それぞれの仕組みと特徴について解説します。

カタログ注文型

「カタログ注文型」とは、事務局が登録した省力化製品をカタログから選び、導入する際の費用を補助してもらう制度です。カタログに掲載された省力化製品を活用して、「労働生産性の年平均3%以上の向上」をめざす事業計画を策定することが基本条件となっています。

カタログ注文型の大きな特徴は、掲載製品のみが対象となっている分、スピーディに活用できる点にあります。カタログに掲載されている製品は、事前に省力化効果が認定されているため、審査が簡略化されやすいのが利点です。

選択肢は限定されるものの、手続がある程度形式化されているため、中小企業でも活用しやすい方式と言えるでしょう。

一般型

「一般型」は、カタログによらず、オーダーメイド・セミオーダーメイド型の省力化設備・システムの導入費用を補助してもらう制度です。事業者が独自に設備を選定することができますが、省力化の効果や投資回収計画を自社で説明する必要があります。

また、「労働生産性の年平均4%以上の向上」が見込まれる事業計画の策定が基本条件となっており、カタログ注文型よりも利用ハードルは高い設計となっています。事業計画によっては、高額な補助を受けることも可能なため、幅広い規模に対応している制度と言えるでしょう。

補助額・補助率

カタログ注文型の補助額・補助率は以下のとおりであり、従業員数に応じて決められています。

※「事業場内最低賃金45円以上増加」かつ「給与支給総額6%以上増加」を実現できる見込みの事業計画を策定した場合

一般型の補助率・補助額については、以下のように企業の規模に応じて決められています。

・中小企業:補助率 1/2(特例適用時:2/3)
・小規模事業者、再生事業者:補助率 2/3

補助金制度のポイントについて解説しています。

 

利用条件

続いて、補助金の利用条件についても、カタログ注文型・一般型のそれぞれに分けて見ていきましょう。

カタログ注文型

カタログ注文型では、以下の要件を満たす必要があります。

要件


・カタログに登録された省力化製品を導入し、販売事業者と共同で事業に取り組む
こと
・補助事業終了後3年間で毎年、申請時と比較して労働生産性を年平均成長率3.0%以上向上させる事業計画を策定すること
・省力化製品に紐づけられた業種のうち少なくとも1つ以上が、事業の業種と合致すること
・登録された業種・業務プロセス以外の用途に供する事業ではないこと
・労働生産性に係る目標を合理的に達成できる事業計画に沿って実施されること
・補助事業者が省力化製品の導入を契機として、自然退職や自己都合退職によらない従業員の解雇を積極的に行わないこと
・補助事業者が取得する省力化製品に対する補助額(導入経費を含む)が500万円以上の場合、既定の保険への加入を行うこと



それ以外にも、遵守しなければならない事項が細かく定められており、利用するためには審査に通過する必要もあります。細かな注意事項や審査の着眼点は、公募要領に詳しくまとめられているので必ず目を通しておきましょう。

 

人手不足の状態にあることの確認

人手不足の状態であることを認めてもらうためには、以下のいずれかから当てはまるものを1つ選択し、省力化を進める必要があることを客観的に示す必要があります。



1.限られた人手で業務を遂行するため、直近の従業員の平均残業時間が30時間を超えている
2.整理解雇に依らない離職・退職によって従業員が前年度比で5%以上減少している
※ただし、「常時使用する従業員」ではない者が主体の事業者については従業員数を総労働時間で代替することも認める。(直近1年間のうち、月の総労働時間が前年同月比で5%以上減少していること。)
3.採用活動を行い求人掲載したものの、充足には至らなかった
4.その他、省力化を推し進める必要に迫られている



ただし、「4」を選択する場合は、省力化投資の必要性をより厳格に審査されるため、採択結果の通知が大幅に遅れる可能性があるとされています。

一般型

一般型の利用条件は次のとおりです。


■基本要件
以下すべてを満たす3~5年の事業計画を策定する
・労働生産性の年平均成長率4.0%以上増加
・1人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加
・事業場内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準
・次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等(従業員21名以上の場合のみ)

■その他の要件
・省力化指数を計算した事業計画の策定
・投資回収機関を根拠資料とともに提出
・事業計画期間内において付加価値額が増加する事業計画の策定
・人手不足解消に向け、オーダーメイド設備等の導入を伴う事業計画の策定



その他の細かな要件や遵守事項については、公募要領に詳しくまとめられています。利用する際は必ず目を通しておきましょう。

 

申請方法とスケジュール

次に、補助金の申請方法について、カタログ注文型と一般型のそれぞれに分けて見ていきましょう。

カタログ注文型

カタログ注文型は、以下の流れに沿って手続を進める必要があります。


1.GビズID取得
2.カタログから製品を選ぶ
3.販売事業者を選ぶ
4.販売事業者と共同申請する
5.補助事業の実施
6.実績報告
7.補助金の交付
8.事業実施効果報告



GビズIDとは、デジタル庁が運営しているすべての事業者を対象とした共通認証システムです。1つのアカウントで、複数の行政サービスにまとめてログインでき、補助金申請や社会保険手続等に利用可能です。

GビズIDの取得後、カタログから省力化製品と販売事業者を選びます。その後、販売事業者と共同申請を行い、審査に通過したら交付決定となり、補助事業をスタートさせられます。

さらに、事業実績の報告を行うと、補助金が後から交付されるという仕組みです。補助金の利用事業者には、事業実施効果報告も義務付けられているので、正確なデータ管理を行いましょう。

 

一般型

一般型は以下の流れに沿って手続を進めます。


1.GビズID取得
2.事業計画書の策定、機械装置・システムの選定
3.応募申請
4.事業者選定(相見積もり)
5.交付申請
6.補助事業の実施
7.実績報告
8.補助金の交付
9.事業実施効果報告



基本的な流れはカタログ注文型と同じですが、事業計画書の策定や省力化設備の選定には多くの時間と労力を必要とします。また、事業者の選定には、設備等の入手価格の妥当性を証明するために、相見積を取得しなければなりません。

その後、交付申請を行い、交付決定を受けてから18か月以内に補助事業をスタートします。事業完了後には、提出した実績報告書をもとに補助額が確定されるため、支払い請求を行って交付を受けます。

その後、事業計画期間の1年目が終了してから最初の4月より5年間、事務局が定める期限までに毎年効果報告を行う必要があります。

スケジュール

2025年12月現在、カタログ型は随時受付されており、採択・交付の決定も随時行われています。一般型については、2025年12月19日に公募が開始しており、申請受付期間は2026年2月上旬~下旬と予定されています。

申請受付期間は1か月以内と短く設定されているため、手続の漏れや遅れがないよう、綿密に準備を進めましょう。

中小企業省力化投資補助金を活用するメリット

中小企業省力化投資補助金は、企業のどのようなメリットをもたらすのでしょうか。ここでは、期待される効果を3つに分けてご紹介します。

 

生産性の向上

1つめのメリットは、本事業の目的ともされている「生産性の向上」を合理的に実現できる点にあります。補助金を活用することで、省力化のための機械設備やシステムを安価で導入できるため、中小企業でも無理なく生産性向上をめざせます。

また、対象とされる設備・システムの範囲は幅広く、多様な業種で活用できるのも魅力です。カタログ注文型であっても、店舗業務を効率化するためのロボットや、自動チェックイン機、印刷装置といった多様な設備が掲載されているため、自社にピッタリ合うものを見つけられるでしょう。

従業員の負担軽減

生産性の向上により、人手不足に悩む企業でも、長時間労働に頼らない業務環境を実現できます。高効率な業務プロセスが組まれることで、人員が少ない企業にも十分な余力が生まれ、余裕を持ったスケジューリングが可能となります。

その結果、「有給休暇の取得率増加」や「男性育休の推進」等、ワークライフバランスに関する目標も達成しやすくなるでしょう。また、従業員からの要望を柔軟に受け入れることで、企業への貢献意識や業務へのモチベーションも醸成されやすくなります。

賃上げによる従業員満足度の向上

全体としての生産性が高まれば、利益を圧迫することなく賃上げを実現できるようになります。中小企業省力化投資補助事業は、一定以上の賃上げをクリアすることで補助の枠が広がる仕組みとなっているため、企業としても目標を立てやすいと言えるでしょう。

負担減と賃上げの双方からのアプローチにより、従業員満足度の向上が期待できるため、人材の定着率を高めるきっかけにもなります。また、十分な賃金設定を実現できれば、採用競争においても優位性を確立しやすくなるのが利点です。

最低賃金の引上げについて解説しています。

 

中小企業省力化投資補助金の活用事例

補助金の利用を検討する際には、既に活用に成功している事例を参考にするのが近道です。特に同じまたは近しい業界で、類似した事業規模の活用事例があれば、導入の仕方や効果等を意識的にチェックしておくのがおすすめです。

中小企業庁では、『中小企業省力化投資補助事業 カタログ注文型 活用事例集』として、さまざまな企業の活用例を紹介します。ここでは、カタログ注文型における業種の異なった活用事例を3つピックアップして見ていきましょう。

 

カフェの事例

まずは、小規模な飲食業における事例を見ていきましょう。従業員数3人でカフェ運営を行う中小企業では、インターネット上の動画を通じて、本事業の存在を知りました。

カタログ注文型の活用を考え、業務に活かせるスチームコンベクションオーブンがカタログに登録されるのを待って申請手続を進めます。スチームコンベクションオーブンとは、簡単な操作で多様な加熱調理を均一に行える業務用の調理器具です。

製品の導入前は、食事メニューのハンバーグ調理が1回に2、3個にとどまっており、調理中はガス火前で担当者が待機していなければなりませんでした。しかし、製品の導入後は1回に20個までまとめて調理できるようになり、担当者が不要になりました。

その結果、空いた時間をサービスの向上や新メニューの開発にあてられるようになり、生産性の向上に成功します。

宿泊業の事例

宿泊業を営むとある中小企業では、商工会議所の紹介をきっかけに本事業の存在を知り、申請手続に踏み切ります。同社では、フロント・ロビーの清掃業務を省力化するために、カタログ注文型を活用して清掃ロボットを導入しました。

業務用の清掃ロボットは、家庭用と比べてスケジュール機能や掃除水拭き両用といったハイグレードな機能が搭載されているのが特徴です。導入前はフロント・ロビーの清掃に2人がかりで合計2時間かかっていたところ、導入後は0時間、0人の完全省力化に成功します。

結果として、清掃頻度も増え、スタッフの負担軽減と清潔さの向上を両立させることに成功しました。同社からは、「販売事業者と一緒に申請できるので安心感があった」との声が挙がっています。

ガソリンスタンドの事例

合計15ヵ所のガソリンスタンドを経営する中小企業では、本事業のカタログ注文型を活用して、タブレット型給油許可システムを導入しました。このシステムはもともと同社の一定規模以上の営業所では実現されていたものの、費用対効果の面から、中規模以下の営業所への導入は進められていませんでした。

しかし、本事業によって投資費用を抑えられることがわかり、導入を決断します。導入前は事務所内スタッフの常駐が必須だったところ、導入後は常駐不要になり、その分レンタカー清掃等への業容拡大が可能となりました。

また、現場の従業員からも「身動きがとりやすくなった」「負担も軽減された」といった前向きな反応が生まれました。カタログ注文型についても、申請書類が簡便で、申請から導入までスピーディに進んだ点を前向きに評価する声が挙がっています。

まとめ

中小企業省力化投資補助事業は、中小企業における「人手不足の解消」と「生産性の向上」を同時に実現させる画期的な制度です。制度はカタログ注文型と一般型の2つに分かれており、事業の計画や自社の状況に合わせて選ぶことができます。

特にカタログ注文型は、既に基準をクリアした製品をセレクトする仕組みであることから、中小企業でも比較的に活用しやすいのが魅力です。利用するためには、生産性等の要件を満たす必要があるため、細かな条件を確認しながら活用の可能性を探ってみましょう。

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