ストレスチェック制度の法改正対応と対策の重要性 ~すべての事業場でストレスチェック義務化へ!(令和10年4月1日施行)~

公開日:2026年8月26日

人事労務・働き方改革

法改正

労働安全衛生法の改正※により、すべての事業場でストレスチェック制度の実施が義務化され、現在、努力義務とされている従業員50人未満の事業場も対象となります。
※施行日:令和10年4月1日(初回ストレスチェック完了期限:令和11年3月31日まで)

  しかし、ストレスチェック制度の実施にあたり、小規模事業場においては、実施者(医師、保健師等)の選定やプライバシー保護の観点など、課題が多いのが現状です。そのため、事業者への負担等に配慮し、施行までに十分な準備期間を確保するとされています。
 上記を踏まえ、「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」において、労働者数50 人未満の小規模事業場に即した、労働者のプライバシーが保護され、現実的で実効性のある実施体制・実施方法等についてのマニュアルが作成され、厚生労働省ホームページで公表されました。(令和8年2月25日公表)

法改正の概要と対策の必要性

(1)なぜすべての事業場で義務化されるのか

近年、精神障害の労災支給決定件数が増加傾向にあり、小規模事業場においても多数発生しているなど、事業場規模にかかわらずメンタルヘルス対策が課題となっています。
ひとたびメンタルヘルス不調にさせてしまうと、その病休期間は平均で約3か月、復職後再び病休になる割合も約半数と、特に小規模事業場にとっては人材の損失につながる大きな経営リスクとなります。

■ストレスチェック制度の主な目的:「労働者のメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)」

事業者はストレスチェックを実施することで、労働者のストレスへの気付きを促し、セルフケアを推進するとともに、以下①~➂を進めることで職場環境の改善につなげます。
① 高ストレス者への医師面接指導の機会提供
② 医師の意見に基づく就業上の措置の実施
③ 集団分析を通じて職場ごとのストレス要因を把握
上記実施にあたり、プライバシーが保護される環境づくりが重要。

(2)法改正の基本情報

(3)ストレスチェック制度の効果

「厚生労働省実施の効果検証事業結果」より以下の効果が報告されています。

・実施労働者の約7割が「自身のストレスが分かったこと」を有効と回答
・面接を受けた過半数が「医師による面接指導」を有効と回答

その他、学術論文等において、ストレスチェックと職場環境改善によって、「心理的ストレスの低下・生産性向上の効果」が認められています。

小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルの概要

参考:厚生労働省『小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル』(令和8年2月25日公表)

(1)実施義務と労働基準監督署への報告について

(2)実施者の選定と実務担当者の選任

労働者数 50 人未満の事業場においては、原則として、労働者のプライバシー保護の観点から、ストレスチェックの実施を外部機関に委託することが推奨されます。(外部機関には健診機関も想定されます。)
自社で実施することも可能ですが、プライバシー保護の観点から、事業場内の厳格な体制整備ほか、極めて慎重な運営が求められます。

ストレスチェックの実施を外部委託する場合であっても、ストレスチェック制度は事業者の責任において実施するものです。事業者は、実施に当たって、外部委託先との連絡調整等を担当する実務担当者を指名するなど、実施体制を整備する必要があります。

【事業場内】
ストレスチェックの個人結果等の労働者の健康情報の取り扱いは外部機関で完結し、事業場内では取り扱いません。事業場内には、実務を担当する者を配置します。
労働者の健康情報を取り扱わないため、人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者を指名することも可能です。
●実務担当者
事業場におけるストレスチェック制度の実施計画の策定、委託先の外部機関との連絡調整、実施の管理等の実務を担当します。

【委託先の外部機関】
●実務者
調査票の選定、高ストレス者の評価方法の決定、ストレスチェック結果に基づき石の面接指導の要否の判断等に関与します。
実施者は、委託席の外部機関の医師、保健師、一定の研修を受けた歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理士の中から選任する必要があります。
●実施事務従事者
実施者の指示により、ストレスチェック実施の事務(個人の調査票の回収・データ入力、個人結果の記録の保存、医師の面接指導の申出推奨等)に携わります。
※ストレスチェックの実施の事務は、労働者の健康情報を取り扱う事務であり、実施者及び実施事務従事者には守秘義務が課せられます。

(3)医師の面接指導の依頼先の選定

ストレスチェックの委託先選定時に、面接指導の依頼先あらかじめ決めておきます。
医師の面接指導の依頼先としては、ストレスチェックの委託先の外部機関が面接指導もメニューの一つとして提供していることがあり、当該サービスを利用する場合、費用は当該外部機関との契約で決まります。
労働者数 50 人未満の事業場における医師の面接指導の実施は、最寄りの「地域産業保健センター」に依頼して、無料で受けることができます。

<地域産業保健センター(以下「地産保」)とは?>
地産保とは、厚生労働省所管の独立行政法人労働者健康安全機構が運営する支援機関で、全国 350 か所(概ね労働基準監督署単位)に設置されています。地産保には登録産業医が配置されており、医師の面接指導のほか、定期健康診断結果の医師の意見聴取など、労働安全衛生法に関する医師による産業保健サービスを無料で受けることができます。

※地産保では、ストレスチェック自体は実施していません。また、事業者がストレスチェックの実施者を地産保の登録産業医に依頼することもできません。
※地産保は、企業規模として50人未満の小規模事業場を優先して支援を提供しています。いわゆる大企業の営業所等である小規模事業場で、本社等で選任されている産業医等の協力を得られるような場合は、利用できないことがあります。

(4)面接指導の申出、実施

事業者は、面接指導対象者から申出があった場合は、遅滞なく面接指導を実施しなければなりません。

【直接事業者に申し出る場合】
〇 面接指導の申出に当たって、基本的には事業者が個人のストレスチェック結果の提供を受けることは想定されていません。

【委託先の外部機関を経由して申し出る場合】
面接指導の申出先を、直接事業者にではなく、外部機関を経由して申出ができるようにすることが考えられます。この場合、申出が行われたことは事業者に報告されることになるので、このことについて、労働者に予め(面接指導の申出勧奨の機会等に)伝えておく必要があります。

事業者は、下記①~⑤の情報をとりまとめ、面接指導を担当する医師に事前に送付することが望まれます。

①「対象となる労働者の氏名、性別、年齢、所属する事業場名、部署、役職等
②「個人のストレスチェック結果(ストレスプロフィール等)(※)
③「ストレスチェックを実施する直前1か月間の、労働時間(時間外・休日労働時間を含む)、労働日数、深夜業の回数及び時間数、業務内容(特に責任の重さなどを含む)等
④「定期健康診断やその他の健康診断の結果
⑤「ストレスチェックの実施時期が繁忙期であったかどうかの情報
※ ②の個人のストレスチェック結果は封書等で取り寄せ、プライバシーを確保した方法で医師に提供すること。
※ 情報提供は本人に事前に伝えておくことが望まれる(法令上の対応のため本人の同意を得なくても第三者提供の制限は受けません)。

(5)医師からの意見徴収

面接指導後、遅くとも1か月以内に医師から就業上の措置の意見を徴収する必要があります。
ストレスチェック指針が示す、医師の意見書に含めるべき事項は以下のとおりです。

職場環境の改善に関する意見は、人事労務担当者や管理監督者とも連携した対応が重要です。上司のパワーハラスメントなど、職場の人間関係に問題があることも考えられるため、情報管理も含め人事労務担当者と連携した慎重な対応が必要になります。

(6)就業上の措置、面接結果の記録と保存

就業上の措置を決定する場合には、本人の意見を十分聴き、労働者に対する不利益な取扱いにつながらないように留意しなければなりません。(プライバシーにも配慮)
事業者は、面接指導結果に基づき、次の事項を記載した記録を5年間保存しなければなりません。

①面接指導の実施年月日
②当該労働者の氏名
③面接指導を行った医師の氏名
④当該労働者の勤務の状況
⑤当該労働者の心理的な負担の状況
⑥その他の当該労働者の心身の状況
⑦当該労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見

面接指導を実施した医師は、当該労働者の健康を確保するための就業上の措置を実施するため必要最小限の情報に限定して事業者に情報を提供する必要があります。
事業者としても、診断名、検査値、具体的な愁訴の内容等の生データや詳細な医学的な情報の提供を求めてはいけません。

(7)集団分析・職場環境改善

事業者は、委託先の外部機関(実施者)に、個人のストレスチェック結果を集団ごとに集計・分析させるよう努めなければなりません。

個人のセルフケアとともにストレスチェックの結果を集団ごとに分析し、職場環境を改善することが重要です。

特に、小規模事業場においては、労働者のプライバシーの保護の観点から、個人が特定されない方法で実施するよう十分に留意する必要があります。

集計・分析の単位が 10 人(※)を下回る場合には、個人が特定されるおそれがあることから、原則として集団分析結果の提供を受けてはいけません。
※ 集団分析の下限人数の 「10人」は、在籍労働者数ではなく、実際の受検者数(有効なデータ数)でカウント

集団分析結果だけでなく、外部機関から提供された参考データやアドバイス、管理監督者による日常の職場管理で得られた情報、労働者(労働組合等)への意見聴取から得られた情報等も勘案して、職場環境を改善するための必要な措置を講じることが望まれます。

(8)労働者のプライバシー保護と不利益な取扱いの禁止

個人のストレスチェック結果については、健康情報であり、個人情報保護法第2条第3項に規定する「要配慮個人情報」に含まれる機微な情報となります。
労働者のプライバシー保護の観点から、その入手や提供において極めて慎重な取り扱いが求められます。

個人のストレスチェック結果
⇒事業者が実施者から提供を受けるためには労働者の事前の同意が必要

面接指導の申出の有無
⇒法令に基づく事項であるため、労働者の事前の同意なく事業者が取得可能

面接指導結果
⇒法令に基づく事項であるため、労働者の事前の同意なく事業者が取得可能

面接指導結果について医師から聴取した意見
⇒法令に基づく事項であるため、労働者の事前の同意なく事業者が取得可能

(平成30年9月7日公示第1号、改正令和4年3月31日公示第2号「労働者の心身の状態に関する情報の適切な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」より)

事業者が、ストレスチェック及び面接指導において把握した労働者の健康情報等に基づき、当該労働者の健康の確保に必要な範囲を超えて、当該労働者に対して不利益な取扱いを行ってはいけません。
① 労働者が面接指導の申出をしたことを理由とした不利益な取扱い
②ストレスチェック結果のみを理由とした不利益な取扱い
➂労働者がストレスチェックを受けないこと等を理由とした不利益な取扱い
④面接指導結果を理由とした不利益な取扱い

ストレスチェック制度実施にあたり、実施の流れ等の詳細は以下マニュアルをご確認ください。
厚生労働省:小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル

職場メンタルヘルスの現状分析

(1)労災請求・支給決定件数

(2)労災保険給付(精神障害)の要因分析(令和6年度状況)

(3)メンタルヘルス対策の実施状況

●仕事で職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者:68.3%(前年比14.4pt減)
その内容を見ると、「仕事の量」(43.2%)が最も多く、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」(36.2%)、「仕事の質」(26.4%)、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」(26.1%)の順となっています。令和5年と比べると、「仕事の量」、「役割・地位の変化等(昇進、昇格、配置転換等)」、「事故や災害の体験」、「雇用の安定性」が増加しています。

●メンタルヘルス対策実施事業所:63.2%(前年比0.6pt減)
事業所の規模別に見ると、50人以上の事業所はいずれも9割を超えている一方、10人~29人の事業所は55.3%。小規模事業者では対策が遅れています。
メンタルヘルス対策の取組内容を見ると、「ストレスチェックの実施」(65.3%)が最も多く、次いで「職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック結果の集団(部、課など)ごとの分析を含む)」(54.7%)となっています。
50人未満事業場のストレスチェック実施率はわずか33.5%となっています。

最後に

メンタルヘルス対策は重要な経営課題です。「うちは人数が少ないから大丈夫」「家族的な雰囲気だから問題ない」という思い込みは危険です。むしろ、「少ないからこそ一人ひとりが大切」という視点が重要です。
ストレスチェック制度を単なる法令対応ととらえるのではなく、職場環境改善の観点から以下の効果が期待できます。

1. 従業員の健康を守る:メンタル不調の予防
2. 生産性の向上:メンタル不調による休職・退職の減少
3. 人材の確保・定着:「働きやすい職場」としてのブランディング
4. 経営リスクの軽減:労災認定・訴訟リスクの低減
5. 組織力の向上:健康経営につながる職場環境改善による組織の活性化

従業員が安心して健康的に働ける職場をつくることは、持続可能な経営の基盤となります。
ストレスチェックを活用し、従業員のメンタル不調の早期発見・早期対応につなげられるよう、準備期間である今から計画的に取り組みを始めましょう。

参考資料

厚生労働省HP「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)」
厚生労働省HP「令和7年版 過労死等防止対策白書」(令和7年10月28日公表)
令和6年度「過労死等の労災補償状況」
厚生労働省HP「令和7年版 自殺対策白書」(令和7年10月24日閣議決定)
厚生労働省HP「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月25日公表)

MS&AD経営サポートセンターでは、外部専門家と連携し、企業・法人経営者の皆様に有益な情報をご提供致しております。

関連記事

弁護士が解説!【2026年10月1日施行】同一労働同一賃金ガイドライン改正に伴う実務対応と経営者・人事部門が検討すべきこと

2026年8月19日

人事労務・働き方改革

令和9年度介護報酬改定を見据えて ~これからの介護事業経営に求められる視点とは~

2026年8月5日

経営に関する全般

法改正

フィジカルAIとは?生成AIとの違いと活用事例をわかりやすく解説

2026年7月27日

人事労務・働き方改革

人手不足

職場での熱中症 ― その原因と対策

2026年7月22日

人事労務・働き方改革

外国人雇用育成就労制度のスタート

2026年7月17日

人事労務・働き方改革

おすすめ記事

原材料価格高騰はなぜ起きる?中小企業への影響と価格転嫁・コスト対策を解説

2026年8月24日

経営に関する全般

線状降水帯とは?中小企業の経営に与える影響と備えるべき防災・BCP対策を解説

2026年8月3日

自然災害・事業継続

フィジカルAIとは?生成AIとの違いと活用事例をわかりやすく解説

2026年7月27日

人事労務・働き方改革

人手不足

ホワイトハラスメントが起こる原因と防止策を詳しく解説

2026年7月13日

ハラスメント

ラストワンマイル問題とは?課題解決のためのポイントと事例を解説

2026年7月6日

人事労務・働き方改革

週間ランキング

週44時間特例廃止はいつから?対象範囲・影響・対策を詳しく解説

2026年6月29日

人事労務・働き方改革

【2026年最新】ハラスメントの種類一覧|定義・具体例・企業の対応策を解説

2024年7月3日

人事労務・働き方改革

ハラスメント

日本が年々暑くなる理由とは?原因と対策、企業に求められる対応について解説

2025年9月8日

自然災害・事業継続

子ども・子育て拠出金とは?会社負担額と計算方法・納付のポイントを解説

2025年6月16日

人事労務・働き方改革

リスクアセスメントとは?意味や手順、実施例も紹介

2025年3月24日

労働災害防止

経営に活用できる有効な情報を
定期的に発信します。

※各ニュースの内容やサービス名称等は、すべて公開日現在の情報です。
 その後の法改正や制度改定、サービス名称の変更等は反映しておりませんので、ご注意ください。