オフィス用品大手「プラス」が防災・BCP事業に参入 見えた災害大国・日本の課題

公開日:2025年2月25日

自然災害・事業継続

地震・台風・豪雪などの自然災害、感染症蔓延、サイバーリスクなどの緊急的な事業環境の変化に備える「BCP(事業継続計画)」。その推進に取り組む企業の特別インタビューです。
今回のゲストはプラス株式会社。文具・事務用品、オフィス家具メーカーとして知られる同社は、流通事業部門で各種法人向けオフィス用品通販サービスも展開しています。いま、それらの通販サービスは商品の提供を超え、多様なオフィス環境を総合的にサポートするビジネスへと進化しています。その重要項目こそ「BCP」です。
一般企業から介護福祉施設・教育機関・地方自治体まで業界を問わないBCPを支援しているなかで見えた、日本国内のBCPの現状と課題を伺いました。

プロフィール

プラス株式会社 ジョインテックスカンパニー
セールス&マーケティング本部 業態開発部

右)防災・BCPソリューション課 課長 丸山 茜
左)サービスビジネス企画課 長山 千華 氏

オフィス用品大手のプラスが「防災・BCP」の事業化に乗り出す理由

ーー 文具・事務用品、 オフィス家具 大手のプラスが「防災・BCP分野 」にも取り組んでいるとは驚きました。どんな経緯があったのでしょうか。

丸山様: プラスは、文具・事務用品、オフィス家具メーカーであると同時に、全国の販売店をパートナーとして各種法人ユーザー向けのオフィス用品通販サービス等を展開する流通(卸)事業も行っています。この流通事業を担う社内カンパニーである「ジョインテックスカンパニー(以下、ジョインテックス)」ではプラス製品だけではなく、お客さまが必要とする様々な商品やサービスを提供してきました。そこで現在、社会的な関心・ニーズが高まっている防災・BCP事業にも注力しています。

通販サービス開始当初、文具・事務用品が主軸であった品揃えは、様々な分野の商品に拡がり続けています。取扱い商材分野を限定せず、お客さま(市場)が必要とされるモノやサービスを幅広く提供できる卸業者への転換、これを「業態化」戦略と呼んでいるんです。
例えばコンビニエンスストアさんやドラッグストアさんは、ひとつの店舗に複数のカテゴリの商品をバランスよく揃えていますよね。昔から酒屋さんでもお酒と一緒に日用品が買えました。こうした多様なニーズに対してワンストップでソリューションを提供するのが「業態化」のイメージです。私たちも「オフィス生産性向上」というテーマでそうした存在を目指そうと考えた時、お客さまの事業継続をサポートする防災・BCP分野への注力は不可欠と考えました。
ジョインテックスは、文具・オフィス家具などのカタログ通販に専任営業サポートが付いた法人向けデリバリーサービス「スマートオフィス」だけでなく、学校・保育現場向け「スマートスクール」、介護福祉施設向け「スマート介護」、地方自治体向け「スマートガバメント」を展開しています。市場を細かくセグメントし、それぞれの市場の固有のニーズに応える商品やサービスを提供することでお客さまの支持を得ています。

企業、教育機関、介護福祉施設、地方自治体向けデリバリーサービスのビジネスモデル。全国の販売店をパートナーに、営業サポート付きカタログ通販を展開している。

長山様: 私は介護・福祉施設向け調達サービス「スマート介護」をご利用いただいている介護施設様向けのBCP・防災事業サポートを担当しています。
防災・BCP以外にも、「スマート介護」では施設利用者様のお買い物サポートサービス「COREIL(コレイル)」や情報共有チャットツールの「LINE WORKS」などを展開しており、私は何屋さんなんだろう? と思うくらい多彩なメニューを取り揃えています(笑)。

丸山様: 業界によってニーズも商品もさまざまですが、業種・業界を問わずに共通する要素もあります。それこそが「防災・BCP」だと考えました。
『防災をもっとスマートに』をコンセプトに掲げて、商品のご提供はもちろん、防災・BCP対策の検討・実施における人材・時間といったリソース不足を補うためのサポートメニューを提供し、より多くの対策がなされるよう支援していきたいと思います。そうした意味で、BCPはジョインテックスの「業態化」における極めて重要な分野なのです。

 

ーー 国内のBCPの広がりについてはどう見ていますか。

丸山様: 当社が2022年6月に独自に行った調査では、全業界で顕著にBCP意識の高まりが見られました。自治体・介護施設の7割以上、企業の約半数がBCPを重要視しています。
対して、BCP策定割合は、企業が36.8%、自治体が56.5%、介護施設が57.7%という回答。相対的には「企業」がやや低い状況ですね。

長山様: 帝国データバンクが2024年6月25日に発表した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」によれば、企業規模別でのBCP策定率は「大企業」が37.1%(前年比1.6ポイント増)、「中小企業」は16.5%(同1.2ポイント増)となっています。過去9年の推移を見ると、「大企業」は2016年から9.6ポイント上昇している一方で、特に「中小企業」は4.2ポイントの上昇と、大企業と比べて低調な伸びになっていますよね。

企業のBCP策定意向や策定状況、事業継続において多くの企業が想定しているリスクについて紹介しています。

 

ーー MSコンパスの読者のなかにも中小企業の経営者が多くいます。中小企業がBCPに取り組むにあたって、どのような点がメリットになりますか。

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