従業員の裏切りで倒産危機を迎えたSUNDAY DESIGNが 無課金の求人募集で事業拡大に転じたワケ
                  公開日:2025年10月24日 
                
人手不足
                  人材不足や資金繰り等、企業経営は度重なる問題に直面し続けることも決して珍しくはありません。
                  
                  そこで、MSコンパスでは人材業界プレイヤー・事業会社の人事担当者・そして中小企業の経営者などの取り組みを多角的に取材しました。
                  
                  本記事では、カフェとバー、美容室を1棟のビルで経営するなど独自の経営手法で多角的な事業展開をしているSUNDAY DESIGN株式会社の代表取締役社長・石川陽輔様にインタビュー。
                  
                  スタッフとお客さまの活気で賑わうアメリカンビンテージ調の店内からは想像もつきませんが、実は4年ほど前に石川様は従業員の大きな裏切りに遭い、会社は倒産の危機に直面していました。
                  
                  絶体絶命のピンチのなかで、経営者の石川様が信じたものは「商売の基本」。「STAFFをFOR YOUの精神でHAPPYにする」と経営理念に掲げる通り、今では従業員のエンゲージメントもES(従業員満足)も向上し、今後は事業拡大を見据えています。
                  当たり前を突き詰めた先に見えた経営者の景色には、計り知れない可能性が満ちていました。
プロフィール
SUNDAY DESIGN株式会社 代表取締役社長 石川陽輔様
太陽光、不動産、飲食店経営――「思いついたら即挑戦」の経営道
――石川様はアパレルブランドのパタンナーからキャリアを始め、太陽光発電の営業職を経て独立。御社は太陽光発電や飲食店など幅広い事業を手がけてきていますね。
SUNDAY DESIGN 石川社長 その時に思いついたことをやっちゃう性質なんですよね。
それこそ小さい頃から辿ると、ゲームプログラマーを目指して工業高校に通っていました。在学中に熱が冷めて、ファッションにはまったことがパタンナーになったきっかけです。その後は自分のブランドを立ち上げ、服を作って展示会を開いたりしていたのですが、「生活はできるけど稼げないな」と感じて太陽光発電の営業に挑戦しました。そのときの会社でお世話になっていた副社長の独立についていくかたちで勉強させてもらい、その後自分でSUNDAY DESIGNを立ち上げました。
――飲食業界に挑戦された経緯は?
SUNDAY DESIGN 石川社長 最初は太陽光発電事業をやっていたのですが、もともと飲食店に興味がありました。最初に挑戦しかけたのは、2017年ごろで仮想通貨バーを開こうと準備を進めていました。
弊社は僕が持っていたビットコインを使って無融資で立ち上げたこともあり、経営に余裕がありました。また、仮想通貨バーは全国的に見ても東京の青山くらいにしかなく「これは名古屋でやったら受けるんじゃないか」と思ったんです。
――2017年というと、翌年が……。
SUNDAY DESIGN 石川社長 そうですね。年が明けてすぐにコインチェック事件(注)が起きました。事件の影響で新規の仮想通貨決済ができなくなってしまったこともあり、準備を進めていた仮想通貨バーはオープンせずに潰すことになりました。
その後も太陽光発電を取り扱っていた流れで、フランチャイズに加盟して全面的な住宅リフォームと一軒家の販売をしようとしたこともあったんですが、結局、物件の取得寸前にコロナが来て上手くいかず、ダメになってしまいました。
「うまくいきそうだな」と思ったときにダメになってしまう、というのが多いですね。
注:2018年1月26日に仮想通貨取引所コインチェックから約580億円相当の仮想通過NEM(ネム)が不正に流出したハッキング事件。
――現在の御社の事業の中核でもある飲食店や美容室はいつごろから始められたのでしょうか?
SUNDAY DESIGN 石川社長 2021年です。テナントはごく普通の事務所らしい内装だったので、前年からDIYを始めました。壁を抜いたり電気を引いたり……。ここで工業高校時代に取っていた電気工事士の免許が役に立ちました。また、太陽光発電の営業職時代にできた建築関係の知り合いにも助けられましたね。
DIYをしたのは、もちろんコストカットをしたいという側面もありますが、作る工程を踏みたいという自分の性分が理由です。なので、お店の空間作りも「全部自分でやってやろう」と思いました。
店舗へ上がる階段の壁に設置されたネオン。石川さん曰く、電気工事の際は30回くらい感電したとのこと。
SUNDAY DESIGN 石川社長 オープンしたSUNDAY FULLER CAFEですが、最初の1か月半はお客さまがゼロでした。隠れ家的な空間を目指して作ったんですが、本当に隠れ家になってしまっていましたね(笑)
――この賑わいからは想像がつかないですね(インタビューは営業中の店内で実施された)。軌道に乗ったきっかけは、どう考えていますか?
SUNDAY DESIGN 石川社長 SNSでバズったとか、そういう起爆剤みたいなものは知る限りありません。1度来たお客さんがまた来てくれて、少しずつ口コミで広がって、席が埋まって、行列ができて、席数が増えていくという感じで、本当に地道にここまでやってきました。
もちろん、そのための接客や空間作りは工夫をしました。たとえばスタッフには「誰かを連れてきたくなる接客」は何か考え、実行するように教えています。1度来たお客さんがもう1回来たくなるような接客は、うちでは大前提なんです。その先の、次来るときに誰かを連れてきたくなるような接客や空間を提供しようという気持ちで動くように心がけています。だからうちはスタッフがお客さんにたくさん話しかけたり、フットサル等のイベントを企画したりします。“友達”や“家族”のような距離感の接客スタイルは「SUNDAY FULLER CAFE」の特徴であり、強みでもあると思います。
SUNDAY DESIGN 石川社長 カフェが軌道に乗り始めたことで、順調だったはずなんですが、実は別でやっていた中古車販売事業で詐欺に遭いまして……。一緒に事業を進めていたパートナーに会社のお金を持ち逃げされました。また、その担当者が業者やお客さんからお金や車を騙し取っていたことが分かり、裁判7件と警察沙汰2件、1億3800万円の負債を背負うことになりました。
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