【2025年】法改正のポイントと対応策を詳しく解説

公開日:2024年12月9日

法改正

2025年はすべての団塊の世代が後期高齢者となり、日本が超高齢化社会を迎える分岐点と言えます。年齢構成の変化は、医療や福祉、雇用といったさまざまな側面に影響を与えると想定されており、関連する諸課題は「2025年問題」として早くから懸念されてきました。

それに伴い、2025年はさまざまな法改正が実行されるタイミングでもあります。この記事では、2025年に実施される法改正のポイントをまとめてご紹介します。

2025年の法改正の概要

2025年に改正される法律は、おもに「労務関係」「子育て・介護関係」「年金関係」の三つに大別することができます。今回は、各分野の法改正についてまとめ、それぞれの内容について詳しくご紹介します。

労務関係の法改正

労務関係の法改正では、労働環境の確保に関するものや多様な人材の雇用を推進するもの、人材育成・能力開発に関するものなどが挙げられます。それぞれの内容について確認してみましょう。

労働安全衛生規則

労働安全衛生規則とは、労働環境の安全・衛生確保を目的として制定された省令です。内容は「通則」「安全基準」「衛生基準」「特別規則」の四つから構成されています。

通則ではおもに職場における組織体制、安全基準・衛生基準では労働環境における安全性・衛生確保のための基準が示されており、違反する事業者に対しては懲役や罰金等の罰則が規定されています。労働環境の実情は刻々と変化していることから、労働安全衛生規則もこれまでたびたび改正されてきました。

2025年に施行される改正内容は、次の2点です

【2025年改正のポイント】
■新規化学物質の有害性の調査の結果等の届出または申請の原則電子化
■新規化学物質の名称公表方法の変更

従来の規則では、新規化学物質の製造・輸入等を行う場合、事前に有害性の調査結果等を「書面で」厚生労働大臣に届け出なければなりませんでした。そこで、昨今のDX推進の動きに照らし合わせ、手続の効率化を図ることを目的に、原則電子化のルールが制定されたという運びです。

また、従来官報で行われていた新規化学物質の名称公表についても、改正後はインターネット等で行えるようになります。

2024年の法改正について解説しています。

 

障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則

障害者雇用促進法では、一定の従業員数を上回る企業においては、法定雇用率(原則2.5%)に基づいた人数の障がい者を雇用することが義務付けられています。これは、従業員を40.0人以上雇用している事業者は、障がい者を1人以上雇用しなければならないという意味です。

しかし、特定の業種における企業は、業務の性質になじまないなどの理由から雇用義務の軽減措置が設けられています。これを「除外率制度」といい、例えば採石業や水運業では10%、建設業や鉄鋼業では20%、小学校や道路旅客運送業では55%のように、業種に応じて異なる割合が適用されています。

除外率が高いほど、義務付けられた障がい者の雇用人数が少なくなるという仕組みです。2025年の改正により、除外率について以下の変更が行われます。

【2025年4月1日施行の改正内容】
設定業種の除外率はそれぞれ10%ずつ引下げ
■既に除外率10%以下の業種については制度の対象外へ
■「警備業・介護老人保健施設・介護医療院」の3業種が新たに除外設定業種へ

なお、2026年6月30日までの間については経過措置が設けられています。

雇用保険法施行規則

雇用保険法施行規則の改正では、大きく分けて以下の2点がポイントとなります。

【2025年改正のポイント】
■高年齢雇用継続給付に関する改正(逓減給付率)
■教育訓練給付関係の様式の改正

前者については、従来は「60歳以後の賃金がそれまでの賃金の75%未満になる場合、65歳に達するまでの期間は各月の賃金の15%を支給する」という内容になっていました。改正後は同給付の給付率が10%に縮小されることとなります。

また、後者については、企業が教育関連給付を受ける際の「受給資格確認票等の提出期限の緩和」や「訓練前キャリアコンサルティングの留意事項の追加」が行われます。

高年齢者雇用安定法

高年齢者の雇用については、既に2013年の改正において、企業に以下のいずれかの措置を講じることが義務付けられています。

【2013年改正のポイント】(2025年に経過措置期間終了)
■定年制の廃止
■65歳までの定年の引上げ
■希望者全員の65歳までの継続雇用制度(再雇用制度等)の導入

従来は一定の要件を満たすことで対象者を限定できる経過措置が設けられていましたが、2025年4月1日以降は措置期間が終了し、希望者全員に65歳までの雇用機会を確保しなければならないこととなります。

なお、2021年にはさらなる改正が行われており、現行法では以下のいずれかを実現する努力義務が設けられている点にも注意が必要です。

【2021年改正のポイント】
■70歳までの定年の引上げ
■定年制の廃止
■70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
■70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
■70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
 a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
 b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

雇用保険法

2024年5月に「雇用保険法等の一部を改正する法律」が成立したことで、雇用保険法にも段階的にさまざまな改正が行われます。既にいくつかの改正が実行されていますが、2025年4月1日には次の改正が行われます。

【2025年4月1日施行の改正内容】
自己都合退職者が自ら教育訓練等を受けた場合の給付制限解除
■就業促進手当の見直し(就業手当の廃止および就業促進定着手当の給付上限引下げ)
■教育訓練支援給付金の給付率引下げおよび暫定措置の2026年度末までの継続
■雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、地域延長給付の暫定措置の2026年度末までの継続

全体的な雇用保険制度の見直しを図り、現状に合った適用範囲の拡大や教育訓練の拡充を行うのが狙いとされています。さらに、2025年10月1日には、以下の改正が行われます。

【2025年10月1日施行の改正内容】
■教育訓練休暇給付金の創設

「教育訓練休暇給付金」とは、教育訓練を受けるために一時的に仕事から離れる場合に、その期間中の生活費を支援する制度のことです。具体的には、5年以上の被保険者期間がある労働者が、自ら教育訓練に専念するために仕事から離れる場合において、基本手当に相当する金額が支給されるという仕組みです。

子育て・介護関係の法改正

2025年の法改正では、子育てや介護に関するルールにも一部の変更が行われます。ここでは、「育児介護休業法」「子ども・子育て支援法」「次世代育成支援対策推進法」の三つの改正内容について見ていきましょう。

育児・介護休業法

2024年5月に育児介護休業法の改正法が成立したことにより、2025年4月1日と2025年10月1日にその一部が施行されます。

【2025年4月1日以降で施行される改正内容】
子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
1.3歳以上、小学校就学前の子を養育する労働者に関する「働き方の柔軟化措置」の義務化
2.3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるような措置を講ずる努力義務化
3.所定外労働の制限対象の拡大(3歳未満の子を養育する労働者から小学校就学前の子を養育する労働者へ)
4.子の看護休暇の拡大
■名称が「子の看護休暇」から、「子の看護等休暇」に変更(学級閉鎖や入学式・卒園式も休暇の対象となる)
■育児休業取得状況の公表義務対象の拡大(従業員数1,000人超企業から従業員数300人超の企業へ)
■介護に直面した従業員に対する個別の制度周知・意向確認、雇用環境整備の実施の義務化

「働き方の柔軟化措置」とは、「始業時間等の変更」「テレワーク」「短時間勤務」「新たな休暇の付与」「保育施設の設置運営等」のうち、事業主が二つ以上を選択して実行することを指します。これにより、仕事と育児の両立が実現しやすい環境整備を推進するというのが、改正のおもな狙いと言えるでしょう。

働き方の多様化が示す意味や企業にもたらすメリット、実現するための具体的な手段について解説しています。

 

【2025年10月1日施行の改正内容】
■仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務化

2025年10月1日からは、妊娠・出産の申出時あるいは子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立について個別に意向聴取・配慮することが事業主に義務付けられます。個別の配慮とは、例えば「子の障がい等で労働者が希望する場合は各種制度の利用期間を延長すること」「ひとり親家庭等の事情で労働者が希望する場合は各種制度の利用日数を増加すること」等が挙げられます。

子ども・子育て支援法

2024年に「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」が成立したことにより、2025年には以下の改正が実施されます。

【2025年4月1日施行の改正内容】
■妊娠期の負担軽減を目的とした妊婦のための支援給付の創設
■妊婦等包括支援事業の創設
■産後ケア事業の提供体制の整備(地域子ども・子育て支援事業に位置付け)
■経営情報の継続的な見える化の実現
■子ども・子育て拠出金にかかる見直し
■こども誰でも通園制度の法定事業化
■施設型給付費等支援費用の事業主拠出金の充当上限割合の引上げ
■両親ともに育児休業を取得した場合の「出生後休業支援給付」および「育児時短就業給付」の創設
■子ども・子育て支援特別会計の創設

出生後休業支援給付とは、出生直後の一定期間以内に、被保険者と配偶者が14日以上の育児休業を取得する場合において、最大28日間にわたって休業開始前賃金の13%相当額を給付するという制度です。その結果、従来の育児休業給付と併せて「給付率80%(手取りで10割相当)」にまで支給額の引上げが行われます。

また、育児時短就業給付とは、2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合に、「その期間に支払われた賃金の10%」にあたる給付金が支給されるという制度です。そして、これらを支える仕組みとして、新たに「子ども・子育て支援特別会計」が創設されます。

次世代育成支援対策推進法

「次世代育成支援対策推進法」とは、子どもの健全な育成の支援を目的に、2005年に施行された時限法です。当初は10年間の適用期間が定められていましたが、必要性に応じて延長が重ねられ、2024年には改めて「2035年3月31日までの延長」が決定されました。

これにより、一定の規模以上の企業には、一般事業主行動計画策定時に「育児休業取得等に関する状況把握」、「育児休業取得状況や労働時間の状況に関する数値目標設定」が義務付けられることとなります。企業におけるPDCAサイクルの強化を図ることで、仕事と育児の両立に関する取組をさらに推進していくのが狙いとされています。

2024年5月に公布された「育児・介護休業法」及び「次世代育成支援対策推進法」の改正について解説しています。

 

年金関係の法改正

最後に、年金関係の法改正の内容について見ていきましょう。

厚生年金保険法施行規則

2024年3月に「厚生年金保険法施行規則等の一部を改正する省令」が制定されたことより、2025年1月1日には以下の改正が施行されます。

【2025年1月1日施行の改正内容】
3歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例の申出等に係る添付書類の省略

一般的に、収入の減少により標準報酬月額が低下すれば、将来受け取れる厚生年金支給額も低下してしまいます。しかし、厚生年金には、3歳に満たない子を養育するために標準報酬月額が下がっても、将来の年金額には影響しないという制度が設けられています。

これを「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」といい、通常は被保険者の申出によって、事業主を経由して手続を行います。従来の決まりでは、「戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書の原本」および「住民票の写し」を添付しなければならないとされていました。

2025年の改正により、みなし措置を受けるために必要な書類が見直され、事業主による確認を受ければ、「戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書の原本」の添付を省略することが可能になります。

まとめ

2025年は日本全体においてターニングポイントとも言える重要なタイミングです。特に2025年問題に代表される少子高齢化の課題を解消するために、法制度の側面でもさまざまな改正が実行されます。

企業が個別に対応しなければならない変更点も数多くあるため、まずは改正の内容を網羅的におさえることが大切です。その上で、自社の実情に応じて必要な手続を洗い出し、丁寧に対応計画を立てていきましょう。

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