スマホ2時間条例とは?スマホ規制に関する世界の動きとスマホ依存症の現状をまとめて解説

公開日:2025年12月1日

健康経営・メンタルヘルス

総務省が2025年5月に公表した「令和6年通信利用動向調査」によれば、スマートフォンの普及率は8割を超えています。スマホの普及に合わせて、近年特に大きな社会問題となっているのが「スマホ依存症」です。

スマホ依存による影響は、日本のみならず世界各国で問題視されており、特に若い世代での利用について規制を設ける動きも生まれています。日本でも、愛知県豊明市がスマホの利用制限に関する条例を2025年に施行し、「スマホ2時間条例」の名称で注目を集めています。

この記事では、「スマホ2時間条例」について、その内容や制定の背景を詳しく見ていきましょう。また、スマホ規制に関する海外の動きや、スマホ依存症の現状についても併せてご紹介します。

「スマホ2時間条例」とは?

「スマホ2時間条例」とは、2025年に愛知県豊明市で新たに導入された条例の通称です。正式名称は「豊明市スマートフォン等の適正使用の推進に関する条例」と言い、国内の自治体では初となる取組であったことから、全国的な注目を集めました。

ここではまず、スマホ2時間条例の概要をご紹介します。

愛知県豊明市で2025年10月1日から施行

スマホ2時間条例は、2025年9月22日に豊明市議会で賛成多数により可決され、同年10月1日に施行されました。本来は個人の自由に属するスマホの使用時間について、行政側が「1日2時間以内」という目安を設けたことから、ニュース等で全国的な話題となっています。

スマホ2時間条例の内容

スマホ2時間条例では、具体的にどのようなルールが定められているのでしょうか。ここでは、制定された背景も含めて見ていきましょう。

1日2時間以内はあくまで目安

条例で制定されている「1日2時間」という数値はあくまで目安であり、一律に設けられた時間制限ではありません。1日2時間以内という数値は、仕事や学習、通勤・通学を除いた「余暇時間」を対象としています。

あくまで平均的な自由時間を仮に2時間と想定しているのであり、睡眠時間や家族とのコミュニケーション等に支障をきたさないようであれば、制限を超えても問題はないとされています。また、市民の監視や権利の制限を目的としているものではないため、違反したとしても罰則がないのが特徴です。

目的は睡眠時間の確保

豊明市によれば、スマホ2時間条例の最大の目的は「睡眠時間の確保」にあるとされています。特に子どもの睡眠不足は大きな社会課題となっており、心身の発達や学習効果へのネガティブな影響が懸念されているのが現状です。

厚生労働省によれば、小学生で9~12時間、中・高生で8~10時間、成人で6~8時間の睡眠時間確保が推奨されています。一方、「公益財団法人 博報堂教育財団」が2025年に行った睡眠調査によれば、小学生(4~6年生)の平均睡眠時間は8時間56分、中学生で7時間57分と、推奨値の下限をわずかに下回っています。

その主要な原因として挙げられるのが、就寝前のスマホの使用です。調査では小学生の3割および中学生の半数以上が、布団の中にスマホ等を持ち込んでいることが明らかにされています。

こうした現状も踏まえ、スマホの過剰使用を避けるために、柔軟なルールの設定やセルフチェックを促すためのきっかけとして考えられたのが条例導入の経緯です。

 

市・保護者・学校等の相互連携の推進

条例ではスマホの適正使用の推進について、市・保護者・学校等が相互に連携を図りながら、社会全体で取り組むことが推奨されています。個人や家庭における自助努力だけでなく、地域社会の共助によって適切なスマホ使用の仕組みを整えることが重視されているのが特徴です。

特に子どもについては、「小学生以下は午後9時まで」「中学生以上は午後10時まで」を目安として、以降の時間帯の使用を控えるよう、市・保護者・学校等が連携して促すとされています。しかし、行政が直接的に個人の生活へ踏み込んだり、指導を行ったりすることはありません。

条例で示された行政の役割は、あくまで「スマホの適正使用に関する啓発」と「相談窓口の設置」にあるとされています。

条例に対する評価

スマホの使用時間を具体的に示した条例は全国で初めてであり、個人の生活にも密接に関わることから、取組に対してはさまざまな見方が存在しています。ここでは、賛否両方の面から、条例の意義や懸念される点について解説します。

期待される効果や意義

先にも触れたように、条例はあくまで目安であり、強制力はありません。そのため、住民の自由は尊重しつつ、スマホの使用時間について考えるきっかけになり得るというのが肯定的な意見です。

スマホへの依存を未然に防げば、十分な睡眠時間が確保され、子どもの健やかな成長を促す契機となります。メンタルヘルスや学業への波及効果も踏まえ、前向きな効果が期待されている面も強いです。

また、条例では家庭内でのルールづくりにも重きを置いており、家族で丁寧に話し合う
過程そのものが親子関係の関係を深めるのではないかとの見方もあります。

懸念される点

一方で、強制力がないとは言え、条例は行政からの強いメッセージとなります。それだけに、マイナス面でも多様な影響が懸念されていると言えるでしょう。

例えば、条例が示す「2時間以内」という数値には具体的なエビデンスがなく、科学的な根拠が薄いとの指摘もあります。また、本来家庭内で話し合うべきテーマに介入することで、過度の干渉として受け止められる可能性もあると考えられています。

一方で、条例が浸透した場合には、世帯ごとのリテラシーや養育環境の違いによって、子ども同士に不均衡な負担が生じてしまうリスクもあるでしょう。さらに別の見方としては、条例に大人も含まれていることから、成人の自己決定権を侵害するとの否定的な意見も存在します。

その上で、特に疑問視されているのが、スマホ依存への対処法としての有効性です。特に、既にスマホ依存が始まっている子どもについては、外部からの押し付けが逆効果になるリスクもあると考えられており、慎重な判断が求められるのが実情です。

スマホ規制に関する国内外の動き

前述のように、条例でスマホの具体的な使用時間を示したのは、愛知県豊明市が国内で初めてとなります。しかし、スマホに関する条例そのものは、既に他の地域でも施行されています。

また、海外ではより直接的にスマホを規制する動きも生まれており、国内特有の取組というわけではありません。ここでは、スマホ規制に関する国内外の現状について見ていきましょう。

国内の現況

国内においては、「歩きスマホ」や「ながらスマホ」の防止に関する条例を既にさまざまな自治体が設けています。例えば、神奈川県大和市の「大和市歩きスマホの防止に関する条例(2020年7月1日施行)」や東京都足立区の「足立区ながらスマホの防止に関する条例(2020年7月13日施行)」等は、比較的に早い段階で施行された代表例です。

どの条例も、基本的には歩行中の画面の注視や操作を禁止する内容となっており、主に人口の多い東京・大阪・名古屋の三大都市圏における自治体で制定が進められているのが特徴です。また、スマホ2時間条例に類似する条例としては、香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例」があります。

こちらは、2020年4月1日に施行されたものであり、主にインターネットやゲームへの過度な依存を防止することを目的としています。条例のなかでは、子どものスマホの使用に関する家庭でのルールづくりについても言及されており、具体的な利用時間や使用終了時間の目安が明記されているのが共通点です。

 

海外の現況

日本と比べると、海外ではスマホの規制や規制に向けた議論がさらに進んでおり、国や地域単位で利用を制限する動きも生まれています。

学校でのスマホ規制が広がる

海外における代表的な利用規制は、「学校でのスマホ使用の禁止」です。例えばフィンランドやフランスでは、低学年の子どもの学校に限定し、携帯電話の使用が禁じられています。

また、中国・イタリア・オランダでは、学校でのスマホの使用制限が導入されており、より厳しい規制が設けられています。さらに、韓国でも授業中でのスマホの使用を禁止する法案が可決され、2026年3月から施行される予定です。

法案では、教員に校内でのスマホ使用を制止する強い権限を与え、子どものスマホ利用に大幅な規制をかける形となります。子どものスマホ依存による影響は、世界各国で問題視されており、日本以上に厳しい制限が設けられているのが現状です。

未成年を対象にSNSの規制が強まる

子どものスマホ利用において、特に大きな社会問題となっているのが「SNSによる影響」です。EUでは2026年にSNS規制法案の提出が予定されており、未成年の利用禁止が検討されています。

また、アメリカのミシシッピ州では、SNSの運営企業に対して利用者の年令確認を義務付け、18歳未満は保護者の同意がなければ使えないものとしています。さらに、オーストラリアでは、国として初めて16歳未満のSNS利用そのものを禁止する規制が設けられました。

施行は2025年12月の予定であり、世界に先駆けてSNSに対する国の明確な姿勢を示す形となります。ニュージーランドでも、同様に16歳未満のSNS利用を禁止する法案が提出されるなど、欧米諸国を中心にSNS規制の動きが強まっています。

スマホ依存症の現状と原因

豊明市をはじめ、子どものスマホ規制が国際的に広がっている背景には、深刻なスマホ依存の現状があります。ここでは、データを通じてスマホ利用に関する現況と、依存症の原因を見ていきましょう。

スマホ依存症とは

「スマホ依存症」について明確な定義はないものの、日本医師会によれば「スマートフォンの使用をコントロールできなくなり、日常生活に支障をきたしている状態」とされています。主な症状には、使用時間の増加、使用制限時の強い不安やイライラ、学業や仕事への支障等が挙げられます。

これは、脳の報酬系が過剰に刺激され、神経伝達物質の「ドーパミン」が過剰に分泌されることで引き起こされる症状です。なかでも認知や感情制御を司る前頭前野への影響が大きく、大幅に機能を低下させる恐れがあるとされています。

特に思春期・青年期は脳の発達における重要な時期であり、この時期の過度な使用は、深刻な健康上の問題を引き起こすリスクがあります。

増加するスマホ依存症

厚生労働省の調査によれば、2017年の時点で93万人の中高生がネット依存を疑われています。これは中高生のおよそ7人に1人の割合にあたり、コロナ禍等の影響でさらに増加していると見られています。

総務省の調査では、中高生のネット依存度とスマホの使用時間に強い相関関係があることも示されており、スマホ依存の症例は急激に増えていると考えられるでしょう。

スマホ依存症の原因は複合的

スマホ依存症の増加には、さまざまな要因が複合的に重なっていると考えられています。代表的な一つの原因としては、魅力的なゲームの増加やSNSの普及といった環境要因が挙げられます。

また、人間関係の希薄化やコミュニケーションの減少といった、社会的要因もスマホ依存が増える原因と言えるでしょう。それ以外には、現実社会での不安やストレス、抑うつ、満たされない承認欲求といった心理的要因が挙げられており、特定の原因を取り除けば解消するというものではない点が難しいポイントと言えます。

スマホ依存症が引き起こすリスク

スマホ依存症が引き起こす1つめのリスクは、利用時間が増えること自体によるQOLの低下です。具体的には睡眠不足や運動不足、家族・友人とのコミュニケーション不全等が挙げられます。

ネット・ゲームの長時間利用については、「寝ない・食べない・動かない」といった3つの不作為による心身の不調が早くから問題視されてきました。そして、もう1つのリスクは、前述した認知機能の低下です。

過度にスマホに依存すれば、注意力・集中力・記憶力が低下し、学業・仕事へ悪影響をおよぼします。また、感情のコントロールも困難になるため、人間関係のトラブルを引き起こす原因にもなるでしょう。

そして、3つめのリスクは、SNSやゲームに通じた金銭のトラブルです。熱中するにつれて、いわゆる「課金行為」を止めることができなくなり、経済的な問題につながるケースもめずらしくありません。

スマホ依存症を予防・解消するために必要なこと

今回ご紹介したスマホ2時間条例も、欧米をはじめとする国際的な規制の動きも、基本的な目的はスマホの過度な使用を控えるという点で一致しています。スマホ依存症になれば、個人の生活や人生そのものにも損失を生み出しかねないため、規制の有無にかかわらず予防や対策を行うことは重要です。

最後に、スマホ依存症にならない、進行させないために重視すべきポイントをご紹介します。

予兆を早期に見つけて環境を変える

スマホ依存症を防ぐためには、進行する前に予兆を発見し、無理のない形で環境調整を行うことが何よりも重要です。基本的には、豊明市の条例のように、「1日〇時間まで」「午後〇時まで」使用時間を制限することが近道となります。

自己管理が難しい場合は、「スマホを置いたままで過ごせる時間を増やす」方法も検討してみると良いでしょう。例えば、「家族や友人と話す時間を増やす」「打ち込める趣味や運動習慣を見つける」といった方法は効果的です。

いずれにしても、スマホへの深刻な依存を避けるためには、できるだけ早期発見を行うことが大切です。国や自治体、医療機関では、依存症チェックシート等のツールが公開されているので、活用してみるのも良いでしょう。

深刻化する前に医療機関へ相談する

深刻な依存症になってしまった場合は、周囲からの直接的な介入は逆効果になってしまう恐れがあります。無理に親や教育機関等が利用を制限しようとすると、周囲との関係性まで悪化してしまい、さらに依存が深まるリスクがあるので注意しましょう。

日常生活に支障をきたすほどの依存症については、そのまま放置をせず、専門機関での外来診察を受けることが大切です。医療機関では、「生活リズム改善のサポート」「依存の原因となっている事柄の発見・解消」「情報との向き合い方の助言」等、本人に合わせた幅広い支援が受けられます。

また、必要があればデイケアによる集団活動やコミュニケーショントレーニング、入院治療による認知行動療法等を受けることも可能です。医学的な見地からアプローチしてもらうことで、より早期での解決が期待できるでしょう。

アルコール依存やギャンブル依存と同じように、スマホ依存症は重度になるほど問題が深刻化するのも特徴です。自身や家族にスマホ依存症の疑いがあれば、早めに専門家へ相談することが肝心です。

まとめ

今回ご紹介したスマホ2時間条例は、住民のスマホ利用時間を見直すとともに、主に子どもの睡眠時間確保を促すきっかけとして期待されています。一方で、個人の自由に属する事柄へ介入することや、2時間という時間の根拠については懐疑的な見方もあり、現時点では賛否両論が存在しています。

しかし、スマホの利用規制は世界的にも議論されているテーマであり、今後も環境や年令、ツールに応じた制限を設けるケースは増えていくと考えられます。スマホ依存にはさまざまなリスクがあるため、個人や家庭で適切な使用ルールを設けるのは重要と言えるでしょう。

まずは自身や家族の利用状況を見直し、必要に応じてチェックリスト等も活用しながら、適切な向き合い方を検討してみると良いでしょう。

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