アルムナイとは?採用活動で重視される理由とポイントを解説
公開日:2024年5月1日
人手不足
人手不足の課題を解消するために採用活動に力を入れるならば、アルムナイ採用の導入を検討してみると良いでしょう。元従業員を即戦力として採用することで、コストや手間の負担を抑えながら、採用活動を活性化させることにつなげていけます。
この記事では、アルムナイ採用の基本的な捉え方や採用活動で重視される理由、手順、注意点等を解説します。
アルムナイとは
アルムナイ(alumni)とは、卒業生や同窓生といった意味であり、人事の分野においては自社を離職した元従業員(退職者)のことを指します。アルムナイを再び雇用する採用活動のことをアルムナイ採用といい、人手不足を解消する方法の一つとして取り入れる企業が出てきています。
アルムナイであれば、自社の経営方針や企業風土、業務に対する理解があるため、採用後には即戦力と活躍してくれることが期待できるでしょう。特に専門的なスキルが求められる職種において、新たな人材を採用するのが難しい部分もあるため、アルムナイ採用が有効な採用方法になることもあります。
アルムナイ採用が注目される理由
アルムナイ採用が注目されるのは、少子高齢化の影響によって労働人口が減少し、人材の採用に課題を抱えている企業が増えているからだと言えます。加えて、在宅勤務や時短勤務等の働き方の多様化や、さまざまなスキルが求められる時代において企業としてもキャリアパスの支援を行っていく必要性があるからです。
厚生労働省が公表している「我が国の構造問題・雇用慣行等について」によれば、若年期に入社してそのまま同じ企業に勤め続ける人の割合は、1995年からほぼ右肩下がりの状況にあります。そのため、他社への転職や起業等、自社を退職した後にビジネスシーンで活躍していた人を再雇用する仕組みとしてアルムナイ採用を導入すれば、働く側のキャリアパスに応じた対応を行えるはずです。
アルムナイ採用を行う企業のメリット
アルムナイ採用を実施することで、企業は求人広告や人材サービス会社を介さずに採用活動を行えます。そのため、採用にかかるコストを抑えることが可能です。
また、アルムナイであれば自社での業務を既に経験しているので、教育にかかるコストも新卒採用と比べると抑えられるでしょう。業務経験のある人材を採用することで、即戦力として活躍が期待できるため、人手不足の課題解消につなげやすいと言えます。
さらに、自社を離れていた期間に身に付けたスキルや能力を取り入れることも期待できるので、新たなノウハウの蓄積にもつながるのがメリットとして挙げられます。
再雇用を巡る状況
アルムナイ採用の導入を検討する際は、企業の再雇用を巡る状況について把握しておくことが大切です。ここでは、厚生労働省の資料を基に解説します。
再雇用制度を設けている企業の割合
「出産・育児等を機に離職した女性の再就職等に係る調査研究事業 企業アンケート調査結果 再雇用制度の状況」という資料によれば、再雇用制度を設けている企業の割合は全体で16.7%です。しかし、企業規模別に見ると従業員1,001人以上では36.4%であり、中堅企業及び大企業で再雇用制度が多く取り入れられていることがわかります。
また、厚生労働省が発表した「中途採用に係る現状等について」という資料によると、従業員規模が小さい企業のほうが中途採用の割合が高くなる傾向が見られます。つまり、従業員規模が大きい企業では新卒採用の割合が高いのに対し、中堅企業等では中途採用の割合のほうが高いと言えるでしょう。
離職に至る理由
「出産・育児等を機に離職した女性の再就職等に係る調査研究事業 企業アンケート調査結果 再雇用制度の状況」によれば、従業員が離職した理由として、「妊娠・出産・子育て」が70.4%、「結婚」「配偶者の転勤」がそれぞれ約5割という結果になっています。ライフステージの変化が離職の主な理由となっているケースが多い傾向がわかります。
また、再雇用制度の対象者として、「希望があった人を対象としている」企業が全体の83.3%となっており、働く側の意思を尊重している姿勢の企業が多いと言えるでしょう。離職後に仕事から離れていた期間や子どもの年令等に関する限定も、59.3%の企業で行っていない結果となっています。
再雇用時の雇用形態
さらに同資料では、再雇用時の雇用形態についても調査が行われています。再雇用を実施する際は、「正社員で再雇用する」と「非正社員で再雇用、一定期間後、条件があった人を正社員に登用する」といった対応を取っている企業が、それぞれ4割程度を占めています。
また、配属先については「原則、退職時の職場に復帰する」が28.7%、「本人の希望、人員不足の職場等により、調整して配属する」が63.9%という結果です。再雇用時の処遇に関しては、「再雇用者全員に対して、資格・処遇を個別に調整している」が53.7%、「再雇用者全員に対して退職時の資格・処遇としている」が25.0%となっています。
アルムナイ採用の手順
アルムナイ採用の導入を検討する際は、基本的な手順を押さえておくことが大切です。次の手順に沿って、アルムナイ採用を進めてみましょう。
アルムナイ採用の実施手順
・再雇用の条件をきちんと整理する
・職場の受け入れ態勢を整える
・退職時に再雇用制度があることを知らせる
・アルムナイネットワークを構築する
・アルムナイ採用の実施する
それぞれの手順について、ポイントを解説します。
再雇用の条件をきちんと整理する
アルムナイ採用を実施するには、再雇用時の条件や採用基準等をあらかじめ整理し、決めておく必要があります。具体的には、以下の点が挙げられます。
再雇用時の条件
・対象者の範囲
・資格要件
・採用基準
・再雇用時の待遇
・再雇用後の配置や昇給等
・再雇用者への教育訓練
例えば、資格要件に関しては退職理由を問わない制度であったとしても、再雇用の対象となる退職理由に妊娠、出産、育児、介護、配偶者の転勤、病気療養等の具体的な要件を挙げておくほうが良いでしょう。また、再雇用者の処遇や配置、教育訓練等についてもルールを設け、既存の従業員が不満を抱かないような仕組みづくりを行うことが大切です。
職場の受け入れ態勢を整える
再雇用制度のルールづくりを行うのと並行して、職場の受け入れ態勢を整えることも重要です。再雇用者が働きやすい職場環境を整えるために、人事評価制度の見直しや研修プログラムの策定等に取り組んでみましょう。
再雇用者を受け入れる部署の責任者との意見を交えながら、必要な調整等を行っていくことが大事です。
退職時に再雇用制度があることを知らせる
再雇用制度を整備したら、退職をする従業員に対して制度の存在を知らせておきましょう。事前にどのような制度であるかを説明しておくことで、復職しやすい環境を整えることにつながります。
また、退職者だけでなく既存の従業員にも制度を伝えておくことで、安心して業務に取り組める環境を整えられるでしょう。
アルムナイネットワークを構築する
アルムナイ採用を円滑に進めるには、アルムナイネットワークを構築しておくことが大切です。いったん退職をすると、自社とのつながりが薄れてしまうため、継続的にコミュニケーションが行える場を設けておく必要があります。
SNSやチャットツール等を用いてコミュニティを作成し、相談しやすい環境を整えることで、退職者と良好な関係の維持につなげられるはずです。
アルムナイ採用の実施する
アルムナイ採用の実施にあたっては、復職を希望する対象者とのコミュニケーションを十分に行うことが大切です。雇用条件や働き方等は曖昧にせず、同じ認識を持てるようにしっかりと擦り合わせを行いましょう。
また、不満を抱えて退職した場合には、その理由についても把握しておくことが大事です。お互いに疑問点を残さずに、再雇用の手続を進めていきましょう。
アルムナイ採用の注意点
アルムナイ採用を実施することで得られるメリットは大きなものがありますが、いくつかの点で注意しておきたい部分もあります。どのような点に気を付ければ良いかを解説します。
関係維持のためのリソースが必要
退職者と良好な関係を維持するには、手間とコストがある程度かかります。ただし、新たな人材を採用する時にかかるリソースよりは抑えられるため、前向きにアルムナイ採用の導入を検討していくことが大事です。
継続してコミュニケーションが行えるように、自社と退職者だけのやりとりだけでなく、退職者同士が活発にやりとりできる仕組みを整えてみると、アルムナイネットワークを無理なく維持しやすいでしょう。
在職している従業員への影響
再雇用制度を設けることで、既存の従業員も安心して働ける一方で、「いつでも復職できる」といった風潮が広まる懸念があります。また、復職した従業員の待遇に公平感がなければ、不満が生じる恐れがあるので注意が必要です。
制度設計に取り組む際は、既存の従業員との待遇のバランスを考えて、納得を得られる雇用条件や採用基準を設定してみましょう。
情報が漏えいするリスク
アルムナイ採用は元従業員を復職させるものであるため安心感がありますが、一方で情報漏えいのリスクには気を付けておく必要があります。業務に慣れているからといって任せきりにするのではなく、既存の従業員と同様の社内ルールを守ってもらうことが大切です。
情報漏えい等のリスクを軽減させるために、再雇用後の教育訓練等を通じて認識を共有しておきましょう。
まとめ
アルムナイ採用の仕組みを導入することで、自社が抱える人手不足の課題解消につながる可能性があります。元従業員に復職してもらえば、採用や教育にかかるコストを抑えながら、即戦力を確保する流れをつくっていけるでしょう。
実施にあたっては、既存の従業員との間で待遇面等に不満が生じないように、雇用条件や採用基準等を明確化し、周知することが大切です。いつでも復職しやすい環境を整えて、安心して働ける職場づくりに取り組んでみましょう。