2026年4月施行の自転車に対する交通反則通告制度(青切符)の概要と今後求められる対策

公開日:2026年9月9日

事故防止

自転車関連事故は依然として毎年多数発生しており、交通違反の検挙件数も2023年以降急増しています。

道路交通法の改正により、2026年4月から自転車にも交通反則通告制度(青切符制度)が導入され、信号無視や一時不停止、運転中の携帯電話の使用等を対象に、最大12,000円の反則金が科されます。

業務上・通勤上で従業員の自転車利用がある事業者に求められる「自転車リスク対策」について概説します。

自転車事故および交通違反の現状

(1)自転車の交通事故の発生状況

警察庁の「令和7年における交通事故の発生状況について」によれば、自転車が関係する事故は依然として多く発生しており、年によって増減はあるものの、決して軽視できない水準で推移しています。交通事故全体の件数は、2015年の53.7万件から2024年の29.1万件へと減少傾向にあります。一方で、自転車関連事故は2020年から2024年にかけて、年間7万件前後で概ね横ばいの状況が続いています。このため、交通事故全体に占める自転車関連事故の割合は近年増加しており、過去10年でみると2015年の18.4%から2024年の23.2%へと上昇しています。

(2)自転車の交通違反の検挙件数

一方、自転車の交通違反に係る検挙件数は、近年著しく増加しています。これは、自転車による法令違反が疑われる事案に対して、警察による取締りが強化されていることも一因です。検挙件数は2015年の12,018件から2024年には51,564件へと、過去10年でみると4倍以上に増加しており、特に2023年以降、その増加幅が顕著となっています。

(3)自転車による過去の重大事故

自転車事故でも、加害者に高額な損害賠償が命じられた事例があります。日本損害保険協会の調べによると、自転車側の過失によって歩行者と衝突し、相手に死亡や重い後遺障害を負わせたケースや、自転車同士の衝突で、1億円近い損害賠償が認められたケースもあります。このように、自転車は手軽な移動手段である一方、事故を起こせば自動車と同様に重大な責任を負う可能性があります。そのため、事業者としても、従業員への安全教育や保険の確認を徹底する必要があります。なお、事業者として講じるべき対策例については、本稿の後段で述べます。

※判決認容額とは、上記裁判における判決文で加害者が支払いを命じられた金額(金額は概算額)。
 上記裁判後の上訴等により、加害者が実際に支払う金額とは異なる可能性があります。

道路交通法改正(2026年4月1日施行)について

(1)道路交通法改正の背景

こうした自転車事故や自転車による違反件数の増加を背景に、自転車の一定の交通違反に交通反則通告制度を導入すること等を内容とする「道路交通法の一部を改正する法律」(令和6年法律第34号)が2026年4月1日から施行され、自転車にも「交通反則通告制度」が適用されることとなりました。これにより、自転車の交通違反で検挙された後の手続きが大きく変わることとなりました。

交通反則通告制度は、いわゆる「青切符」制度とも言われ、自動車の交通違反の際に広く行われている違反処理の方法ですが、これまでは自転車には導入されていませんでした。本改正前は自転車の交通違反が検挙されると、いわゆる「赤切符」等を用いた刑事手続による処理が行われ、警察による捜査を経て、検察官が起訴・不起訴の判断を行い、起訴されると裁判を受けることになっていました。

その結果、有罪となると、罰金を納付するなどをする必要があり、「前科」がつくことになりました。このような刑事手続による処理は、青切符が導入されている自動車の違反処理と比べると、時間的・手続的な負担(例:取締り時の書類作成、取調べのための出頭)が大きいことや、検察に送致されても不起訴とされ、実態として違反者に対する責任追及が不十分であることが指摘されていました。

そこで、こうした背景を受け、交通ルールの遵守を促進するため、16歳以上の者による自転車の一定の交通違反に対して、青切符を導入することとなりました。自転車への青切符の導入により、自動車と同様に、違反者の時間的・手続的な負担を軽減するとともに、実効性のある責任追及が可能となりました。

なお、国外に目を向けてみると、自転車を環境負荷の少ない移動手段として位置づけ、日常的な交通手段として広く利用している国や地域があります。これに伴い、自転車の交通違反に対して金銭的な制裁を科す制度を整備し、利用者に一定の責任を課している例も見られます。例えば英国では、自転車の運転に関する罰金体系は比較的簡素であるものの、日本と同様、違反の態様に応じて罰金を科しています。

さらに、主に欧州の一部では、義務教育のカリキュラムに交通安全や交通ルールに関する内容を組み込んでいたり、自転車の交通ルールに関する筆記試験や走行に関する実技試験を課している例もあり、自転車利用に伴う安全確保については、違反への制裁のみならず、教育や装備面からの対策も併せて講じられています。

(2)対象となる主な違反

青切符の対象となる違反は、例えば信号無視、一時不停止、右側通行、運転中の携帯電話の使用等の違反が含まれます。つまり、軽微な違反行為ではなく、「交通ルール違反」として明確に扱われるようになったものと言えます。

一方で、自転車の酒気帯び運転や酒酔い運転といった悪質な交通違反は、従来通り刑事罰の対象となる「赤切符」で対応します。こちらは悪質・重大な違反に対して交付されるもので、刑事事件として扱われる手続きで時間がかかります。つまり、青切符は「行政上の反則金」、赤切符は「刑事罰につながる可能性がある違反」となります。

今回の改正では、113の違反行為について3,000円から12,000円の反則金が定められ、悪質性や危険度の高い違反ほど反則金の金額が高くなっています。次に、特に注意すべき違反について紹介します。

(3)特に注意すべき違反

① 携帯電話の使用

自転車を運転するときは、携帯電話・スマートフォン等を使って通話したり、表示された画像を注視することが禁止されています(法第71条第5号の5)。

携帯電話・スマートフォン等を使用して、実際に事故を起こしたり、歩行者の通行を妨害したりするなどして、実際に交通の危険を生じさせたときは、携帯電話使用等(交通の危険)として、1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されます。また、手に保持して通話したときや、手に保持して画面を注視したときも、携帯電話使用等(保持)(反則行為)として、反則金(12,000円)の対象となります。

年によって差はあるものの、携帯電話等を使用していたことが原因とみられる自転車事故による死亡・重傷事故は、年間20件以上発生しています。自転車運転中の携帯電話の使用は極めて危険であり、青切符が交付された際の反則金も12,000円と最も高額です。

② 歩道通行

自転車の歩道通行は、利用者が特に注意すべき点の一つです。自転車は原則として車道を通行することとされていますが、全面的に歩道通行が禁止されているわけではなく、以下の条件では認められています。その場合でも、歩道の中央から車道寄りを徐行(直ちに停止することができるような速度で進行することをいう)することが原則となっています(法第63条の4第2項)。

<自転車の歩道通行が認められる場合>
ア.道路標識・道路標示で歩道を通行することができるとされているとき
イ.13歳未満の方若しくは70歳以上の方または一定の身体障害を有する方が運転するとき
ウ.車道または交通の状況に照らして、自転車の通行の安全を確保するため、自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき※
※道路工事や連続した駐車車両等のため車道の左側を通行することが難しいときや、著しく自動車の交通量が多い、車道の幅が狭い等、通行すると事故の危険があるときをいいます。

③ 傘差し運転やイヤホン使用等の安全運転義務違反

自転車に関するルールの中には、公安委員会が個別に規定しているものがあり、傘差し運転や、イヤホンをつけて周りの音が聞こえない状態での運転は、全ての都道府県で禁止されています(法第71条第6号)。傘を差しての運転は、自転車のハンドル、ブレーキの操作が難しくなり、イヤホンをつけての運転は、周囲の音が聞こえず、自動車や歩行者の動きに気付けなくなり、重大な事故に発展するおそれがあります。

④ 飲酒運転

体内のアルコール濃度にかかわらず、飲酒して自転車を運転することが禁止されています(法第65条第1項)。自転車運転者に飲酒をすすめたり、飲酒をした人に自転車を提供する行為も処罰の対象となります(法第65条第2項~第3項)。

酒酔い運転(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で自転車を運転する行為)および酒気帯び運転(血中0.3mg/mlまたは呼気中0.15mg/l以上のアルコールを保有して自転車を運転する行為)のような重大な違反は、反則行為に該当せず、これまでと同様に刑事手続により処理されます。

主な反則行為および反則金の額は、以下のとおりです。反則行為を行った場合、最高で12,000円の反則金が科されます。また、3年以内に2回以上検挙された場合、または交通事故を起こした場合には、都道府県公安委員会により「自転車運転者講習」の受講が命じられます。

(4)法改正後の違反実態

警察庁「自転車に対する交通反則通告制度導入後1月間の運用状況について」によると、制度導入後の令和2026年4月の1か月間において、青切符が交付された自転車の違反件数は、全国で2,147件(暫定値)でした。内訳は、「指定場所一時不停止」が846件で全体の40%と最多で、次いで「携帯電話使用」が713件(33%)、「信号無視」が298件(14%)となっています。

 

MS&ADインターリスク総研が2025年8月に自転車ユーザーに実施したアンケート調査の結果およびデータ分析の結果について解説しています

事業者に求められる自転車リスク対策

(1)企業活動への影響

自転車違反への青切符導入により、自転車の違反も「軽い違反だから見過ごせる」ではなくなるため、事業者も従業員の自転車利用を業務上・通勤上のリスクとして管理する必要があります。今回の法改正を契機に、自転車の使用に関し、事業者が確認すべきポイントについて以下に整理します。

①従業員への周知

自転車は、業務利用や通勤手段として広く利用されている一方で、道路交通法上は軽車両として位置付けられており、信号無視、一時停止違反、スマートフォン等の使用による「ながら運転」、無灯火走行、飲酒運転その他の交通違反については、自転車の違反に関する検挙件数が増えている中、従来以上に厳格な対応の対象となります。

従って、自転車の利用が「徒歩に近い簡便な移動手段」であるとの認識だけでなく、「利用には十分に注意が必要」との考えを念頭に、自転車であっても法令遵守が強く求められることを、従業員に対して十分に周知徹底する必要があります。

②社有車の運転における留意事項

ア.運転免許停止処分の可能性
運転免許を有している者が自転車で交通違反を犯した場合であっても、運転免許の点数が付されることはありません。しかし、公安委員会が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあると認めるときは、運転免許保有者に対して、6か月を超えない範囲内で期間を定めて運転免許の停止処分が行われることがあります。当然ながら、その間、社有車の運転はできなくなります。

具体的には、運転免許を有している者が、自転車でひき逃げ事件や死亡事故等の重大な交通事故を起こした場合や、酒酔い運転・酒気帯び運転をはじめとする特に悪質・危険な違反を犯した場合に、運転免許の効力が停止されるときがあり、注意が必要です。

会社のイベント等で飲酒した後に、自転車を安易に利用することは当然ながら法令違反であり、自転車の違反が自動車等の運転免許停止につながるおそれがある点も、従業員に対して十分に周知徹底する必要があります。

イ.車道を走る自転車への注意
自転車運転者だけでなく、自動車運転者も道路を走る際は、これまで以上に自転車の動きに注意しなければなりません。自転車が車道を通行する以上、車と自転車が同じ空間を共有する場面が増えるためです。海外では、自転車専用レーンが車道と明確に分離されている道路も多く、利用者ごとの通行空間が確保されやすいです。

一方、日本の都市部では車道が狭い場所も多く、自転車との接触リスクが高まりやすいです。とりわけ、見通しの悪い交差点や路肩の狭い道路では、速度を落とし、自転車との間隔を空け※、自転車の進路を十分に確認することが重要です。

※自転車の右側を通過する車両についても、車両と自転車の間に十分な間隔がない状況で自転車の右側を通過するときは、自転車との間隔に応じて安全な速度で進行しなければならない(法第18条第3項)。

(2)自転車リスクへの基本的な備え

事業活動においても、今回の法改正を踏まえ、自転車利用に伴うリスクをこれまで以上に重く受け止める必要があります。自転車は日常的に利用される身近な移動手段である一方、交通事故や交通違反が発生した場合には、従業員本人の責任にとどまらず、会社の安全配慮義務や管理体制の不備が問題となるおそれもあります。そのため、事業者として、自転車利用に関する管理体制が適切に整備されているかを改めて確認することが重要であり、そのポイントを以下に示します。

①許可制の導入

企業における自転車利用は、業務内容または従業員の個別事情を踏まえて、その必要性や利用可否を判断する必要があります。このため、業務利用または通勤利用を認める場合には、許可制を導入することが合理的です。

②使用ルールの明確化と社内規程化

自転車の管理方針に基づき、業務使用の態様、駐輪場所、通勤手当等の取扱いを明確化し、車両管理規程として整備する必要があります。

③安全運転教育の徹底

反則金や人身事故に伴う加害者責任、企業・家族への影響等を踏まえ、従業員に対する自転車の安全運転教育を継続的に実施したり、ヒヤリ・ハット情報を集め、社内で活用することが重要です。

④保険(補償制度)加入の徹底

事故を完全に防止することは困難であることから、自転車を業務または通勤に使用する従業員に対し、保険またはこれに類する補償制度への加入を確実に実施するとともに、加入状況を確認する仕組みを整備する必要があります。従業員に自転車での業務使用や通勤を認めている事業者は、従業員が自動車を使用して営業活動や通勤を認めている場合と同等の注意が必要です。

(3)事業者として推進すべき自転車リスクへの備え

MS&ADインターリスク総研では、事業者の社有車に搭載されたドライブレコーダー映像を分析する機会が多くありますが、その中には、自転車が赤信号を無視して交差点に進入する場面や、横断歩道を斜めに猛スピードで横切る場面、さらには急な進路変更により自動車の運転者が危険を感じる場面も少なくありません。自転車は自動車に比べて小回りが利く一方、予測しにくい動きをすることがあり、映像を通じてもその危険性を改めて認識する必要があります。

一方、当社が2026年3月31日に公表した改正道路交通法に関する意識調査では、2026年4月1日から改正道路交通法が施行されることの認知は75.4%に達したものの、「内容まで理解している」人は27.4%にとどまり、約半数が「内容はよく知らない」と回答しています。こうした実態を踏まえると、事業者においても、自転車の安全運転や自動車側から見た自転車のリスクについて従業員教育を行いたいというニーズは高く、事故防止に向けた継続的な取組が求められます。

おわりに

2026年4月1日に施行された自転車に関する道路交通法の改正は、「自転車であれば多少の違反は見過ごされる」といった認識に対し、一定の区切りを示すものです。自転車は利便性の高い身近な乗り物である一方、道路交通法上は車両に位置付けられており、他の車両と同様に交通ルールの遵守が求められます。

本改正の趣旨は、自転車の取締りを強化すること自体にあるのではなく、道路利用者一人ひとりがそれぞれの立場で安全意識を高め、事故の未然防止を図ることになります。自動車運転者は自転車の動静を十分に予測し、自転車利用者は基本的な交通ルールを遵守することが求められます。

また、歩行者においても、周囲の交通状況に留意することが重要です。自転車利用者、自動車運転者および歩行者が、それぞれの意識を見直すことで、安全な交通環境の形成につなげることが可能となります。本稿が制度改正の理解および自転車事故の防止に資することを祈念し、結びとします。

MS&ADインターリスク総研株式会社

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