偽装請負とは?(業務委託契約の活用と注意点)

公開日:2023年6月1日

経営に関する全般

業務委託契約の活用と注意点について、今回は偽装請負とならないための「労働者性」の判断ポイントをお伝えします。

偽装請負とは

業務委託の契約について雇用関係は発生せず、労働基準法の適用もありません。したがって、業務委託する側の企業にとって受託者が会社または個人(個人事業主、フリーランスなど)のいずれであっても労働契約関係にはないため、業務の進め方に関しては指揮命令を行うことはできません。

たとえば、受託先であるシステム運用・保守会社の社員(SEなど)が委託者である会社の社内に常駐する形で業務を行っている場合は、受託者が社内にいるため、指示を出してしまいがちです。委託者である企業側が直接指示を出す場合には、その指示内容によっては指揮監督関係があり、本来的には「雇用関係」が生じていると評価されることにもなります。

そのため、労働契約関係にありながらの「偽装請負」とみなされ、法違反を問われることにもなります。偽装請負とは、契約上は「請負」でありながら、実態は「労働者派遣」に該当することです。

法を免れる行為とみなされるため労働者派遣法違反となり、委託側・受託側ともに罰則が科せられることになります。偽装請負に該当するかどうかは、厚生労働省による「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(労働省告示第37号)などを踏まえて実質的に判断されます。

社内に業務委託者を常駐させ、直接指示を出しながら業務を進めたいのであれば、業務委託ではなく派遣社員の活用としなければなりません。

労働者性の判断基準

個人の有する特定の専門知識や技術などを活用すべく個人と業務委託契約を締結しているものの、委託者である会社が直接指揮命令をしていると、その実態から雇用契約であると判断されることにもなります。受託者である個人事業主およびフリーランスが労働者とみなされると、労働関係諸法令によって「労働者」として保護されることになり労働基準法や最低賃金法の適用がされるほか、社会保険や雇用保険、労災保険への加入義務が生じることにもなります。

労働者性の判断基準については、厚生労働省の「労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)」が出されています。それによれば、労働者性(使用従属性)の判断は、
(1)仕事の依頼、業務の指示等に関する諾否の自由の有無
(2)業務の内容および遂行方法に対する指揮命令の有無
(3)勤務場所・時間についての指定・管理(拘束性)の有無
(4)労務提供の代替可能性の有無
(5)報酬の労働対償性(仕事の成果・結果ではなく、日数や時間数によるような場合)
(6)事業者性の有無(機械や器具の所有の負担関係、報酬の額など)
(7)専属性の程度(委託先である会社の仕事以外はしないなどの縛り)
(8)公租公課の負担(源泉徴収や社会保険料の控除の有無)
の諸要素を総合的に考慮して行われます。
(寄稿:社会保険労務士法人みらいコンサルティング)

三井住友海上経営サポートセンター発行のビジネスニュース2021年9月(第300号)を基に作成したものです。
※関連記事「業務委託(請負)契約の活用と注意点」もご参照ください。

関連記事

労務費転嫁に向けた価格交渉で政府指針、協議なしの価格据え置き等は法抵触と注意促す

2024年3月15日

経営に関する全般

リスクは認識するも対策は道半ば 日本損害保険協会「中小企業のリスク意識・対策実態調査2023」

2024年2月21日

経営に関する全般

業務委託契約(業務請負契約)の活用と注意点

2023年6月1日

経営に関する全般

おすすめ記事

トランプ関税が日本に与える影響とは?中小企業経営者が知っておくべきリスクと対応策

2025年7月14日

その他

介護手当とは?受給条件やその他の手当を解説

2025年6月23日

健康経営・メンタルヘルス

子ども・子育て拠出金とは?制度の仕組みや計算式、課題点を解説

2025年6月16日

人事労務・働き方改革

給与デジタル払いとは?基本的な仕組みと導入のメリット・デメリットを解説

2025年5月26日

サイバーリスク

フェムテックとは?基本的なとらえ方と課題解決のポイントを解説

2025年5月19日

健康経営・メンタルヘルス

週間ランキング

6月から義務化(罰則付き)となった「職場の熱中症対策」のポイント

2025年6月13日

その他

帝国データバンク公表「採用時の最低時給は 1,167円人材確保を背景に最低賃金より112円高く~ 「東京」が唯一1,300円超え、都市部と地方で格差が顕著に~」

2024年11月6日

その他

改正育児・介護休業法 ~令和7年10月1日施行編~

2025年3月28日

法改正

リチウムイオン電池に起因する火災の現状と対策

2025年6月27日

事故防止

自然災害時の避難に関する実態と意識について~アンケート調査結果より~

2023年9月1日

自然災害・事業継続