日本政府が「循環経済行動計画」を正式決定
公開日:2026年9月30日
SDGs
法改正

日本政府は2026年4月21日、「循環経済に関する関係閣僚会議」において「循環経済行動計画」を正式決定しました。本計画は、従来の廃棄物削減・リサイクル促進を中心とした政策の枠組みを大きく刷新し、再生資源の確保を経済安全保障・産業競争力・地域活性化と結び付ける新たな政策の方向性を打ち出したものです。企業にとっても事業戦略や資源調達、情報開示に直結する内容を含んでおり、今後の動向を注視する必要があります。
資源循環を「経済安全保障」と捉え直す日本――世界的な資源獲得競争と国内の構造的課題
今回の行動計画の決定に至った背景には、中国による重要鉱物の輸出管理強化等に起因した世界的な資源獲得競争の激化があります。それを踏まえて、EUでは電子スクラップの域外輸出厳格化および製品への再生材使用の義務化に踏み切るなど、各国は「一次資源」のみならず「二次資源(再生資源)」の戦略的確保に向け動き出しています。
こうした状況を受け、日本政府は「資源循環」を単なる環境保全策と位置付けるのではなく、「喫緊の経済安全保障上の課題」として明確に位置付け直しました。
また、行動計画では、日本の資源循環における構造的課題についても整理しています。具体的には、①事業者の9割超が中小零細企業で小規模分散しており、高度リサイクルへの投資が進んでいない点、②経済合理性による再生材の海外流出や焼却処分が常態化している点(鉄スクラップ年間771万tを輸出(注1)、廃プラスチックの約7割が焼却(注2))、③動脈産業と静脈産業(注3)の連携不足により再生材のサプライチェーンが未成熟な点、④不適正スクラップヤード・違法業者によって公正競争環境が歪んでいる点等が列挙されています。
こうした課題の解消が本計画の実質的な主眼に据えられており、単なる目標値の設定にとどまらない制度・産業基盤の整備が求められています。
ESG経営の基本的な意味や重要性、企業における取組の事例等について解説しています。
続いて、循環経済行動計画において特に重要な内容について以下の3点に分けて示します。
1.重要鉱物・金属資源の国内循環強化
本計画の中核をなすのが、鉄・アルミ・銅・永久磁石に関する個別の数値目標の設定であり、2030年という明確な目標時期を示した上で、定量的な目標を設定しています(表1)。また、国内の資源循環の基盤構築に向けた支援措置として、2030年までに官民合計で1兆円の投資目標を掲げ、設備投資等に伴う金銭的ハードルの解消を目指しています。

2.再生プラスチックの利用義務化
2026年4月1日に全面施行された改正資源有効利用促進法により、自動車・家電等の製造事業者に対して再生プラスチック利用計画の策定・定期報告が義務付けられました(初回期限:2027年9月)。
これまで「努力目標」とされてきた再生材活用が、行政の勧告・命令を伴う「企業の法的責務」に転換され、2030年の再生利用倍増目標に向けて設計段階からのリサイクル適合設計の普及や、マテリアル・ケミカルリサイクル技術の産業化が急務となっています。
また、再生材を供給する側(静脈産業側)の課題だけでなく、需要側の市場形成も重視されており、再生材利用コストの低減に向けた実証・支援の検討や、自動車産業等における再生プラスチックの質と量の安定確保のための集約拠点構築に向けたビジネスモデルの検討等が進められています。
3.個別品目対応と地域・産業基盤の整備
廃棄量の急増が見込まれる太陽光パネルのリサイクル制度の整備、リチウムイオン蓄電池の国内循環体制構築、建設廃棄物・廃家具等の再資源化困難物への地域実証支援を進めています。ほかには、廃棄物の広域流通を支える「循環経済拠点港湾(CEポート)」の整備、国際的なE-scrap調達ネットワークの構築も施策に盛り込まれました。
また「資源循環自治体フォーラム」を通じた先進事例の共有・事業マッチング、CEポートを核とした広域物流ネットワークの形成も進められています。法制度については、廃棄物処理法上の大臣認定制度を活用した規制緩和や法改正による不適正ヤード規制強化等、制度・インフラ整備に関する計画や今後の方向性が盛り込まれています。
本行動計画を踏まえると、日本は、従来の資源採掘・調達・製造を基盤とする産業構造から、持続可能な資源循環型の産業構造へと移行する大きな転換期にあるといえます。そのため、鉱物資源・金属資源・再生プラスチック等を扱う企業は、上表が示す定量的な目標を参照しながら、自社の目標を見直し、必要に応じて新たに設定することが求められます。
もっとも、目標値の設定はあくまで出発点に過ぎません。重要なのは、再生材の活用を前提とした調達戦略、製品設計、資源循環の仕組みを経営戦略に組み込み、事業構造そのものを転換していくことです。
こうした変化は、一見すると企業に対する規制強化や負担増加として受け止められやすいです。しかし実際には、静脈産業との連携強化、地域レベルでの資源循環の構築、リサイクル適合設計の導入等を通じて、新たな市場やビジネス機会を創出する可能性を有しています。
また、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言においても、「資源利用」は重要なインパクトドライバーの一つに挙げられており、企業は資源循環を含む取組を通じて自然関連リスクを低減し、事業機会を獲得することが期待されています。この意味で、資源循環への対応は、単なる環境対応ではなく、競争力強化に向けた戦略課題です。
したがって、企業は今回の行動計画を単なる規制対応に留めるのではなく、持続可能な事業モデルへの転換を促す契機として捉え、戦略や取組を具体化していくべきです。環境負荷の低減と持続可能なビジネスモデルへの転換・創出を両立させる視点こそ、今後ますます重要となります。
(注1)日本鉄リサイクル工業会「2025年の日本の鉄スクラップの輸出について」2026年2月3日掲載、2026年6月17日最終アクセス
(注2)一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチック製品の精算・廃棄・再資源化・処理処分状況を公表」2025年12月24日掲載、2026年6月17日最終アクセス
(注3)動脈産業・静脈産業
動脈産業:天然資源を採取し、それを原料に製品を生産・製造・販売する産業のこと。
静脈産業:製造過程や消費過程で不要となった製品や資材を回収し、処理・リサイクルする産業のこと。
参考情報:2026年4月21日付 内閣官房HP掲載資料
MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2026年7月(2026年度第4号)を基に作成したものです。
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