秘密保持規程の作成と秘密情報の漏洩対策

公開日:2023年9月29日

サイバーリスク

企業が持つ自社の営業情報や技術情報など(以下「秘密情報」)は、他社との差別化を図り自社の競争力を向上させる情報資産としての重要性が増しています。今回はこの秘密情報に関する取扱いルールについて、特に従業員への対応の観点から規程の定め方や留意点などをお伝えします。
なお、本号は社会保険労務士法人みらいコンサルティングに寄稿いただきました。

秘密情報の取扱い等に関する社内規程の策定

経済産業省の『秘密情報の保護ハンドブック』によると、秘密情報を適切に管理するためには社内規程を策定することが重要であり、その際には以下8つの条項を盛り込むことが効果的とされています。

①適用範囲、②秘密情報の定義、③秘密情報の分類、④秘密情報の分類ごとの対策、⑤管理責任者、⑥秘密情報及びアクセス権の指定に関する責任者、⑦秘密保持義務、⑧罰則

在職中の従業員への情報漏えい対策

情報漏えい対策は、やみくもに実施すると業務への過度な制限や無駄なコストを生みかねないため、以下の5つの「対策の目的」の観点から考えることが有用です。

  • ① 接近の制御(アクセス権の付与・管理、分離保管、ペーパーレス化、復元困難な廃棄・消去)
  • ② 持出し困難化(会議資料等の回収、物理的阻止、社外メール・Web閲覧制限、記録媒体使用制限)
  • ③ 視認性の確保(整理整頓、座席レイアウト、防犯カメラ、ログの記録・保存、不定期監査)
  • ④ 秘密情報に対する認識向上(ルール周知、秘密保持契約・誓約書の締結)
  • ⑤ 信頼関係の維持・向上(情報漏えい事例・社内処分の周知、公平な人事評価制度の構築・周知)

退職者への対応

退職予定者等に対して、必要に応じて情報漏えい対策を強化し、退職後も転職先等での行動(営業や研究開発等の活動状況)や転職先の企業動向(商品販売の状況、研究開発の動向)を把握することは有効です。また、秘密保持契約や競業避止義務契約を含んだ誓約書を締結し、違反する行為があった場合には、損害賠償請求などがありえる旨を伝えることも重要です。退職時に誓約書の締結を拒否される事態も踏まえ、通常時から秘密保持契約書の締結などの備えをしておくとよいでしょう。

中途採用者への対応

他社の秘密情報の不正取得を行わないのは当然のことですが、中途採用者を受け入れる場合、意図せぬ形で他社の秘密情報を取得してしまうリスクが生じます。そのため、中途採用者については、受入時に以下の対策が重要となります。

①転職元との契約関係の確認、②転職元から秘密情報を持ち込んでいない旨の誓約書の締結、③業務内容の定期的な確認など採用後の管理


寄稿:社会保険労務士法人みらいコンサルティング
発行:三井住友海上経営サポートセンター

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