コンタミネーションとは?起こる原因と対策方法を解説
公開日:2025年6月2日
事故防止

「コンタミネーション(contamination)」とは、汚染や汚濁を意味する英単語です。製造業の分野においては、主に異物が原材料や製品に入り込んでしまう状態を指します。
この記事では、コンタミネーションの概要や発生につながる原因、必要な対策方法について解説します。
コンタミネーションの概要

「コンタミネーション」は生産現場では「コンタミ」とも呼ばれており、主に異物の混入を意味します。製品の製造・加工工程では、空気やガス、溶液、接触部等から、塵埃、加工屑、汚染物質、微生物といった異物・不純物が製品に付着したり、混ざり込んだりする危険性が存在します。
例えば、食品を生産する際、本来は原材料に使用していないにもかかわらず、微量のアレルギー物質が混入してしまうといった具合です。コンタミネーションのリスクを放置すれば、商品価値を損ね、品質や信頼性を低下させる原因となるでしょう。
さらに、食品や医薬品であれば、人命にも大きな影響をおよぼす恐れがあります。また、電子製品の製造工程において金属の異物等が混入することで、電子回路のショートや接触不良といった悪影響が生じる可能性があるでしょう。
そのため、特に食品や医薬品、電子製品の製造において、コンタミネーションの予防・防止は重要なテーマとされています。
コンタミネーションが起こる原因

コンタミネーションを予防するためには、発生原因を適切に理解しておく必要があります。ここでは、4つの基本的な原因について解説します。
人為的ミスによる原因
コンタミネーションは、作業を担当する人員が原因となって発生する可能性があります。代表的な要因として挙げられるのは、作業者の手洗い不足です。
忙しい時間帯で十分な洗浄時間を確保できない状態が続くと、作業者の手を介して菌や異物が混入するリスクが高まります。また、手袋や作業着を装着する場合でも、ユニフォーム自体の管理が不十分であれば、微粒子やアレルゲンが混入する可能性があるでしょう。
それ以外のパターンとしては、機械の保守点検を行う際に、作業員から混入してしまうというケースもあります。いずれにしても、ヒューマンエラーによるコンタミネーションは、手順の省略や不徹底によって起こるのが特徴です。
「時間短縮のために本来の手順を省く」「こまめに洗浄する時間がない」「作業工程の監査機能が働いていない」などが常態化していれば、コンタミネーションのリスクは高まるでしょう。
原材料による原因
原材料による原因としては、主に「仕入れ」と「加工」の2つの段階におけるリスクが考えられます。仕入れにおいては、「原材料に農薬や微生物が付着している」「基準に適合しない部品・材料が混ざっている」といったパターンが挙げられます。
仕入れの段階で生じるコンタミネーションは、受入検査や洗浄等の工程が不十分であることが主な原因です。一方、加工の段階においては、製造環境が要因で生じるケースが多いです。
例えば、「異なる製品を隣接エリアで同時に作っている最中に、空気中に巻き上がった原材料が混ざり込む」といったケースが考えられます。また、医薬品製造において、「異なる有効成分を含む原料を同じ装置で処理し、成分が混合してしまう」といったパターンも存在します。
使用する機械や器具が原因
使用する機械や器具に、前回の製造時に使用した残留物が付着している場合、次の製品にそのまま混入する恐れがあります。微小な粒子は目に見えないため、器具やラインの洗浄が不十分であれば、気がつかないうちにコンタミネーションにつながることもあるでしょう。
また、装置に使用されている部品の劣化によって、機械や器具の破片が製品に混入してしまうこともあります。機械や部品は損耗するため、適切なタイミングで点検が行われなければ、金属片が飛んだり内部の潤滑油が漏れ出したりして、製品を汚染してしまう恐れがあるのです。
作業環境による原因
工場等の作業環境そのものが、コンタミネーションの原因になる場合もあります。十分な換気が行われていない場合、空気中に微粒子や細菌が広がり、装置の運転中に製品に混入する可能性があります。
また、工場の設計や製造ラインのレイアウトによっては、空調設備からの埃や結露水が製品に落下するリスクもあるでしょう。さらに、作業場所の湿度管理が不適切な場合、カビの発生によってコンタミネーションが発生するケースもあります。
そして、目に見えないもう一つのリスク要因として挙げられるのが、静電気の蓄積です。湿度が下がると静電気が発生しやすくなり、ちり等が付着するリスクが高まります。
コンタミネーションの対策方法

コンタミネーションを予防するためには、基本的な事柄を丁寧に徹底することが重要です。基本的には、作業者の衛生意識を高めることと、事故につながりにくい仕組みを整備することが取組の中心となります。
マニュアルの見直しと実施を徹底する
まずは、作業手順や服装等のマニュアルを見直し、クオリティを向上させることが大切です。マニュアルについては、業界標準の規格に準拠させるのが基本となります。
例えば、食品業界においては「ISO22000」(食品安全マネジメントシステムに関する国際規格)や、「HACCP(ハサップ)」のような食品衛生管理ガイドラインが整備されています。標準的な規約の内容をきちんと理解し、マニュアルとして落とし込むことで、社内の管理体制を効率的に向上させられるでしょう。
また、マニュアルの改善を行う際には、現場で徹底してもらうためのアプローチも重要です。「衛生に関する研修」や「無理なく作業できる十分な人員配置」等、組織としても柔軟な施策を講じるのがポイントです。
適切な製造機器を導入する
使用する機器については、目的に応じて適切な設計になっているかを入念にチェックする必要があります。例えば、医薬品や食品の製造・加工に使用する場合は、「洗浄がしやすいか」「密閉性は十分か」といったポイントにも目を向けましょう。
また、製品に直接触れる部分については、材質にも注意を払うことが重要です。製品との反応や劣化によるコンタミネーションのリスクを低減するためにも、ステンレス鋼等の耐腐食性に優れた材質が使用されたものを選びましょう。
使用する機器を専用のものにする
機器の専用化は、コンタミネーション防止における有効な手段の一つです。例えば、食品加工において用いられる遠心分離機は、アレルゲン間のコンタミネーションを避けるためにも使い回しをせず、乳製品と小麦製品等で分けるのが基本です。
装置を専用化することで、成分間の混入を防げるだけでなく、製品切り替え時の洗浄プロセスを減らせるので、作業の効率化にもつながります。
製造ラインの洗浄・滅菌を十分に行う
製造ラインの洗浄においては、「CIP(Cleaning In Place)」と「SIP(Sterilization In Place)」が広く用いられています。CIPとは「定置洗浄」とも呼ばれ、設備を分解せずに洗浄を行う手法です。
各種洗浄ノズルを用いたり、配管内に洗浄溶液を浸漬させたりして、人の手を使わずに機器内部の隅々まで洗浄します。
CIPの大きなメリットは、「設備の分解が不要で効率的」「自動化がしやすい」「人の手を介さないため汚染リスクが低減される」といった点にあります。また、プログラムを用いて目的に応じた洗浄液の種類や循環時間、流速、温度等を調整できるため、洗浄条件を柔軟に選択できるのも特徴です。
SIPは「定置滅菌」とも呼ばれ、高温の蒸気を配管内に循環させて滅菌する方法です。CIPと同じように、機械を分解せずに無菌化することができるのが利点であり、目的に合わせてCIPとSIPを使い分けるのが基本とされています。
製造工程を見直す
生産効率のみを考えれば、工程が類似している製品については、同一の製造ラインで扱う方が有効と言えます。しかし、異なる原材料を使う製品を同一のラインで扱うと、どうしてもコンタミネーションのリスクは高まってしまいます。
特に粉や水分が発生する製品については、掃除を行っても完全に除去することは難しいため、「同じラインでは全く同じ原材料を使う製品のみに限定する」などのルールを適用することが大切です。また、アレルゲンを含む原材料を扱う場合には、原材料や廃棄物、作業者の動線も踏まえてライン設計を行う必要があります。
例えば、作業時のルートを改善し、「アレルゲンを含む原材料を扱った作業者は、ほかのラインを接触する前に必ずクリーンルームを通過しなければならない」ようにレイアウトを行えば、重大なコンタミネーションの危険性を抑えられます。また、ライン同士の距離をとれない場合は、作業時間をずらしてリスクを回避するのも効果的です。
原材料の管理を徹底する
仕入れ段階でのコンタミネーションを避けるためには、原材料の徹底した管理が欠かせません。まずは自社の製造ラインでどのような原材料を用いた食品を製造しているのか、データでしっかりと管理し、細やかな情報共有を実施しましょう。
特にアレルゲンを含む原材料については、専用の保管場所で管理し、コンタミネーションを確実に防ぐための対策を行うことが大切です。また、原材料の入庫時には、異物の混入がないかを入念に検査しましょう。
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従業員教育を定期的に実施する
コンタミネーションを防止する上では、経営層から管理職層、現場の担当者まで、全社一丸となって対策に取り組まなければなりません。社内にきちんと衛生意識を浸透させるためには、研修による丁寧な従業員教育と、ルールを順守するための仕組み作りが必要です。
従業員・管理職を対象とした研修は定期的に行い、意識の低下を防ぎつつ、正しい理解を得ることが大切です。また、新しい製造機器の導入や作業手順の変更があれば、その都度マニュアルのアップデートを行い、研修を重ねましょう。
特に装置の操作者には、コンタミネーションのリスクが高い作業について、適切な使用方法、洗浄・消毒・滅菌の手順等を徹底して訓練してもらう必要があります。その上で、ルールを守ってもらうためには、生産管理全体のあり方も見直さなければなりません。
「納期や品数に無理がないか」「現場が回せるだけの人員が確保されているか」「チェック機能は働いているか」「対策に必要なコストがどの程度捻出できるか」など、全体を俯瞰しながら状況判断し、ミスや不正が起こらないようにフォローすることも大切です。
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まとめ
生産現場におけるコンタミネーションは、場合によって人体にも重篤な被害を生み出すことがあります。コンタミネーションが起これば、企業そのものの信用を大きく損なう恐れがあるため、優先的に予防対策を行うことが大切です。
コンタミネーションの原因にはさまざまな要素がありますが、対策においては何よりもまず、生産工程とマニュアルを徹底的に見直すことが大切です。その上で、地道に従業員教育を進めながら、社内の衛生管理を向上させましょう。