障害者の法定雇用率が2.7%に引上げ|中小企業への影響と対応ポイントを解説

公開日:2026年11月2日

人事労務・働き方改革

障害者雇用促進法に基づく民間企業の法定雇用率は、2026年7月1日から2.7%へ引き上げられました。これに伴い、障害者を1人以上雇用する義務が生じる企業の範囲も、従来の常用雇用労働者40.0人以上から37.5人以上へ広がっています。

これまで障害者雇用を自社の課題として意識していなかった中小企業も、新たに対象となる可能性があります。法定雇用率への対応では、単に必要人数を採用すれば良いわけではありません。

自社の雇用率を正しく計算し、障害のある人が能力を発揮できる職務を設計した上で、採用後も働き続けられる環境を整えることが重要です。この記事では、法定雇用率2.7%への引上げによる中小企業への影響、雇用人数の算定方法、未達成の場合の取扱い、採用・定着に向けた実務上のポイントについて解説します。

障害者の法定雇用率は2026年7月から2.7%へ引上げ

障害者雇用促進法では、障害の有無にかかわらず、希望や能力に応じて職業を通じた社会参加ができる社会の実現をめざし、一定規模以上の事業主に障害者を一定割合以上雇用することを義務付けています。民間企業の法定雇用率は、2024年4月に従来の2.3%から2.5%へ引き上げられ、さらに2026年7月1日から2.7%となりました。

同時に、障害者雇用義務の対象となる事業主の範囲も常用雇用労働者40.0人以上から37.5人以上へ拡大しています。企業における障害者雇用そのものは増えています。

厚生労働省が公表している障害者雇用状況集計によると、2025年6月1日時点の民間企業における雇用障害者数は70万4,610.0人、実雇用率は2.41%となり、いずれも過去最高水準となりました。一方、当時の法定雇用率2.5%を達成した企業の割合は46.0%にとどまっています。

つまり、2.7%への引上げ前の段階でも、半数を超える企業が法定雇用率に達していなかったことになります。今後は対象企業の拡大も相まって、採用だけでなく、定着や職務設計まで含めた障害者雇用への取組がこれまで以上に重要になるでしょう。

2.7%への引上げで対象となる企業と義務

法定雇用率が2.7%へ引き上げられたことで、これまで対象外だった中小企業が新たに雇用義務の対象となる場合があります。まずは、自社が対象となっているかを正しく確認することが必要です。

従業員37.5人以上の事業主は1人以上の雇用が必要

2026年7月以降、民間企業では常用雇用労働者37.5人以上の事業主が障害者雇用義務の対象となっています。法定雇用率2.7%を掛けた結果、法定雇用障害者数が1人以上となる企業規模が37.5人以上となるためです。

注意したいのは、「37.5人」が単純な在籍人数ではないことです。例えば、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者は、原則として1人を0.5人として算定します。

そのため、パートやアルバイト等の短時間労働者が多い企業では、実際の従業員数だけを見て対象かどうかを判断することはできません。また、現在は対象外であっても、人員採用や事業拡大によって37.5人以上となれば新たに対象となります。

40人前後で従業員数が推移している企業では、定期的に算定基礎となる労働者数を確認しておくことが大切です。

障害者雇用の概要について解説しています。

 

必要な雇用人数は法定雇用率を基に算定する

原則として、法定雇用障害者数は、算定基礎となる労働者数に法定雇用率2.7%を掛け、1人未満の端数を切り捨てて求めます。例えば、算定基礎となる労働者数が100人であれば「100人×2.7%=2.7人」となるため、法定雇用障害者数は2人です。

150人であれば「150人×2.7%=4.05人」となり、4人となります。ただし、実際には短時間労働者の取扱いや障害の程度によるカウント方法、除外率制度等が関係するため、単純な在籍人数だけでは算定できない場合があります。

厚生労働省やハローワークの最新資料を確認し、自社の不足人数を把握しておきましょう。法定雇用率への対応を6月1日等特定の日だけの問題として考えるのではなく、人員計画の一部として継続的に管理することが重要です。

対象事業主には障害者雇用状況の報告義務がある

障害者雇用義務の対象となる事業主には、毎年6月1日現在における障害者の雇用状況を報告する義務があります。2026年7月からは、報告義務の対象となる民間企業の範囲も37.5人以上へ変更されている点に注意が必要です。

報告にあたっては、常用雇用労働者数や雇用している障害者数、障害区分、労働時間等を確認します。今回の制度改正によって初めて対象になる企業では、誰が報告を担当するのか、どのような情報を管理するのかをあらかじめ整理しておく必要があります。

障害者手帳等に関する情報は、重要な個人情報です。雇用率算定や必要な配慮のために情報を確認する場合でも、目的や共有範囲を整理し、必要以上に社内で情報を広げない運用が求められます。

障害者雇用率の算定で押さえておきたいポイント

障害者雇用率制度では、単に「障害のある従業員が何人在籍しているか」を数えるわけではありません。労働時間や障害の区分、程度等によってカウント方法が異なります。

雇用率の算定対象となる障害者を確認する

障害者雇用率制度では、身体障害者、知的障害者、精神障害者が主な算定対象となります。実務では身体障害者手帳、療育手帳等、精神障害者保健福祉手帳等、制度上定められた確認方法に沿って算定対象となるかを判断する必要があります。

企業が外見や本人の申告のみを根拠として独自に「障害者としてカウントできる」と判断するものではありません。判断に迷う場合は、ハローワーク等へ確認すると良いでしょう。

また、採用では「障害者であること」自体を採用基準にするのではなく、本人の経験、能力、得意な業務、必要な配慮等と、自社の仕事との適合性を見ることが重要です。

短時間勤務では0.5人等カウント方法が変わる

障害者本人のカウントについても、週所定労働時間や障害の程度によって異なります。
例えば、原則として週30時間以上勤務する身体障害者・知的障害者は1人、重度身体障害者・重度知的障害者は2人として扱います。

週20時間以上30時間未満では通常0.5人、重度身体障害者・重度知的障害者では1人となるなど、複数の算定ルールがある点を押さえておきましょう。精神障害者である短時間労働者については、一定の特例があります。

さらに、2024年4月からは、週所定労働時間10時間以上20時間未満で働く重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者について、1人を0.5人として実雇用率に算定できる特例が設けられています。短時間勤務は雇用率を満たすための手段として考えるだけではなく、体調や通院、障害特性等に合わせて働き続けるための選択肢として活用することが大切です。

除外率の対象業種は2025年4月の引下げにも注意する

障害者雇用率制度には、一部の業種について算定基礎となる労働者数を一定割合控除する「除外率制度」があります。2025年4月1日からは、除外率設定業種の除外率が一律10ポイント引き下げられました。

例えば建設業、鉄鋼業、道路貨物運送業、郵便業では、除外率が従来の20%から10%となっています。除外率の引下げによって算定基礎となる労働者数が増え、さらに2026年7月から法定雇用率が2.7%へ上昇したため、該当する企業では必要な障害者数が従来より増える可能性があります。

過去に計算した人数をそのまま使用せず、現在の除外率と2.7%の法定雇用率を使って再計算することが必要です。

法定雇用率を達成できない場合に起こること

法定雇用率を下回ったからといって、すべての中小企業に直ちに罰金が科されるわけではありません。ただし、企業規模によっては障害者雇用納付金が発生するほか、未達成の状態が続けば行政による指導等の対象となる場合があります。

制度面から見た時の障害者雇用のポイントについて解説しています。

 

100人超の企業は不足1人につき月額5万円の納付金が生じる場合がある

常時雇用している労働者数が100人を超える事業主で、法定雇用率を達成していない場合、不足している障害者数に応じて障害者雇用納付金を納める必要があります。基本となる納付金額は、不足1人当たり月額5万円です。

一方、常時雇用労働者が100人以下の事業主は納付金制度の納付対象にはなりません。しかし、37.5人以上であれば障害者雇用義務そのものはあります。

つまり、「100人以下だから障害者を雇用しなくても良い」という制度ではありません。また、納付金を支払えば雇用義務がなくなるわけでもない点に注意が必要です。

現在100人以下の企業でも、採用や事業拡大によって100人を超える可能性がある場合は、早い段階から障害者採用と定着の仕組みを整えておくことが重要です。

未達成が続くと行政指導や企業名公表につながる可能性がある

法定雇用率が未達成の場合、企業は雇用率達成に向けた指導を受けることがあります。一定の条件に該当する事業主には障害者雇入れ計画の作成が命じられ、その実施状況によっては適正実施勧告等が行われます。

さらに、適正実施勧告を受けても障害者の雇用状況に改善が見られない場合、障害者雇用促進法第47条に基づいて企業名が公表されることがあります。法定雇用率が未達成になった時点で直ちに公表されるものではなく、雇入れ計画や指導・勧告等の段階を経て判断される仕組みです。

企業名公表を避けることだけを目的として採用を急ぐと、仕事内容と本人の適性が合わず、早期離職につながる可能性があります。必要人数を確保することと、長く働ける環境を整えることを同時に進める必要があります。

中小企業が2.7%に対応するための5つのステップ

障害者雇用では、自社の状況を把握してから仕事と受け入れ体制を設計することが重要です。ここでは、中小企業が実務で取り組みやすい流れを5つのステップに分けて解説します。

STEP1|自社の雇用率と不足人数を把握する

最初に行うべきことは、現在の常用雇用労働者数と障害者数を確認し、2.7%を基準として必要人数を算定することです。その際、現在の人数だけではなく、今後の採用予定や退職予定、契約更新等も確認します。

例えば現時点では37.5人未満であっても、数か月後に採用によって対象になることがわかっている場合、早めに対応を始めた方が採用を計画的に進められます。また、障害者雇用を人事担当者だけの課題にしないことも重要です。

経営者や管理職が「現在何人必要なのか」「今後どの程度増える可能性があるのか」を理解し、人員計画の一部として管理することが求められます。

STEP2|任せる仕事を洗い出し、職務を設計する

次に、社内にある業務を棚卸しします。「障害者専用の仕事」を新たに用意する必要があるとは限りません。

例えば、データ入力、書類の電子化、資料作成、検品、清掃、発送、在庫確認、備品管理、画像整理、定型的なチェック作業等、既存の業務を細かく見ていくと切り出せる仕事が見つかる場合があります。一つの部署だけでは十分な仕事量がない場合は、総務の定型業務と営業部門のデータ入力等、複数部署の業務を組み合わせて一つの職務として設計する方法もあります。

重要なのは、「何ができないか」だけから考えないことです。業務に必要な能力や作業条件を整理し、本人の強みや経験と照らし合わせてみましょう。

仕事内容、作業量、指示方法、報告方法、評価基準まで事前に明確にしておけば、採用後のミスマッチを抑えやすくなります。

STEP3|合理的配慮と社内の受け入れ体制を整える

障害者雇用促進法では、雇用の分野における障害を理由とした差別を禁止するとともに、事業主に合理的配慮の提供を求めています。募集・採用だけではなく、配置や教育、職場で働く場面等も対象となります。

合理的配慮の内容は、障害名だけで機械的に決めるものではありません。本人と話し合い、仕事をする上でどのような障壁があるのかを確認することが基本です。

例えば、口頭指示だけではなく文書やチャットでも指示を出す、作業手順をチェックリストにする、通院に合わせて勤務時間を調整する、静かな席を設ける、休憩の取り方を工夫する、車いすで移動しやすい動線を確保するといった対応が考えられます。また、直属の上司1人だけに支援を任せると、現場の負担が大きくなります。

人事・総務、現場責任者、指導担当者等の役割を決め、相談先を明確にしておきましょう。

STEP4|支援機関を活用して採用する

障害者雇用を初めて行う企業が、自社だけで採用活動を進める必要はありません。ハローワークでは、障害者雇用に関する求人だけでなく、職域開拓、雇用管理、職場環境整備、トライアル雇用、助成金等について事業主からの相談を受け付けています。

地域障害者職業センターでは、障害者の雇入れから職場定着まで幅広い事業主支援を行っており、職務の創出や社員研修、雇用管理についての助言等も受けられます。さらに、障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業所等と連携する方法もあるのです。

障害者就業・生活支援センターは、2026年4月1日時点で全国340ヵ所に設置され、就業面と生活面を一体的に支援しています。採用前に職場見学や実習等を行い、企業と本人の双方が仕事内容や職場環境を確認できれば、採用後のミスマッチを減らすことにもつながります。

STEP5|採用後の定着支援まで仕組み化する

法定雇用率を達成しても、採用した人が早期に退職すれば再び未達成となる可能性があります。そのため、採用をゴールとせず、定着までを一連の取組として考えることが重要です。

例えば、入社1週間後、1か月後、3か月後等に定期面談を設け、仕事内容や職場環境、体調、人間関係、必要な配慮に変化がないかを確認します。仕事を教える担当者も明確にしましょう。

担当者によって指示内容や手順が変わると、本人だけでなく一般の従業員にとっても働きにくい環境になります。作業手順や報告方法を標準化しておけば、職場全体の業務改善にもつながります。

職場適応に課題が生じた場合には、ジョブコーチを活用することもできます。地域障害者職業センターでは、ジョブコーチを職場へ派遣し、本人だけでなく事業主や上司・同僚にも専門的な支援や助言を行っています。

障害者雇用で活用できる支援制度・相談先

初めて障害者を雇用する企業にとって、採用方法や職務の作り方、社内への説明、必要な配慮等、わからないことが多いのは珍しくありません。公的支援を早い段階から活用することが、円滑な雇用につながります。

ハローワークや地域障害者職業センターに相談する

ハローワークでは、障害者向け求人の相談、職業紹介、職域開拓、雇用管理、職場環境整備、助成金等について相談できます。求人票を作成する前に、どのような仕事を任せたいのかを相談することも一つの方法です。

地域障害者職業センターでは、事業主の課題を分析し、必要に応じて事業主支援計画を作成した上で、職務設計や社員研修、雇用管理等について専門的な支援を行っています。採用後に問題が起きてから相談するだけではなく、採用前から活用できる点も特徴です。

外部機関と継続的に連携することで、人事担当者や現場責任者だけが問題を抱え込むことを防ぎやすくなります。

雇入れや職場環境整備に使える助成金を確認する

障害者を雇い入れる際には、一定の要件を満たせば「特定求職者雇用開発助成金」等を活用できる場合があります。同助成金は、障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により継続雇用する事業主を対象とする制度です。

また、JEED(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)では、障害者を雇用するために必要な施設・設備の整備や雇用管理上の措置等を対象とした障害者雇用納付金関係助成金を設けています。助成金は、障害者を採用すれば自動的に受け取れるものではありません。

対象となる労働者や雇用形態、紹介経路、申請時期等によって支給要件が異なります。特に採用後では対応できない要件が設定されている場合もあるため、「採用してから助成金を探す」のではなく、採用活動を始める段階でハローワークやJEED等へ確認しておくことが重要です。

2.7%への対応を「雇用率達成」だけで終わらせない

法定雇用率への対応は法律上必要な取組ですが、障害者雇用をきっかけとして社内業務やマネジメントを見直すこともできます。人数をそろえることだけに意識を向けるのではなく、誰もが働きやすい職場をつくる機会として捉える視点が大切です。

仕事の切り出しが業務の標準化につながる

障害者雇用に向けて職務を検討すると、「誰がどの仕事を担当しているのか」「特定の社員しかできない仕事は何か」「作業手順が明文化されていない業務は何か」といった課題が見えやすくなります。例えば、ベテラン社員が経験だけで行っていた業務を工程ごとに分解し、マニュアルやチェックリストに落とし込めば、障害のある従業員だけでなく、新入社員や短時間勤務者等も仕事を覚えやすくなります。

指示方法や評価基準を明確にすることも同様です。「適宜対応する」「状況を見て判断する」といった曖昧な業務を具体化する過程は、社内の業務標準化につながります。

障害者雇用を単純な追加採用ではなく、会社全体の業務設計を見直す機会として活用することが重要です。

本人との対話を続け、働き続けられる職場をつくる

必要な合理的配慮は、入社時に一度決めれば終わりではありません。仕事内容や職場環境、体調等が変化すれば、必要な対応も変わる可能性があります。

定期面談等を通じて本人の状況を確認し、「現在の仕事量は適切か」「指示方法で困っていることはないか」「職場環境で変更した方が良いことはないか」といった点を継続的に話し合うことが大切です。合理的配慮は、単なる特別扱いではなく、本人が能力を発揮する上で障壁となっている事情を改善するための措置です。

厚生労働省も、事業主に対し障害者への差別禁止と合理的配慮の提供を求めています。本人、上司、人事担当者、必要に応じて外部の支援機関が連携し、問題が大きくなる前に相談できる仕組みをつくることが、安定した雇用につながります。

まとめ

民間企業の障害者法定雇用率は、2026年7月1日から2.7%へ引き上げられました。これに伴い、障害者を1人以上雇用する義務が生じる民間企業の範囲も、常用雇用労働者40.0人以上から37.5人以上へ拡大しています。

企業はまず、自社の算定基礎となる労働者数と現在の障害者雇用数を確認し、不足人数を把握することが必要です。その上で、社内業務を棚卸しして職務を設計し、合理的配慮や受け入れ体制を整えた上で採用を進めましょう。

障害者雇用では、法定雇用率を満たすことだけが目的ではありません。本人の能力と仕事を適切に組み合わせ、継続して働ける環境をつくることが重要です。

業務の切り出しやマニュアル化、指示方法の見直し等は、障害のある人だけではなく、さまざまな従業員が働きやすい職場づくりにもつながります。2.7%への引上げを単なる法改正への対応として捉えるのではなく、採用、人材配置、業務設計、マネジメントを見直す機会として、計画的に取り組んでいきましょう。

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