企業向け防災グッズ一覧|中小企業が備えるべき備蓄品と選び方・管理方法を解説
公開日:2026年8月31日
自然災害・事業継続

地震や水害等の大規模災害では、従業員の安全確保に加え、停電・断水・通信障害・物流停止等が企業活動を制約します。特に経営資源が限られる中小企業では、初動対応の遅れが事業継続に大きく影響する場合もあるでしょう。
この記事では、企業が最低限備えるべき防災グッズをはじめ、事業継続に必要な資器材、選び方、管理方法、BCPとの結び付け方を解説します。
企業向け防災グッズを準備する前に決めること

企業の備蓄は、一般的な防災セットをそのまま購入するのではなく、自社の災害リスク、滞在人数、待機期間、事業特性を整理してから選定します。
想定する災害と事業所のリスクを明確にする
店舗、工場、倉庫、事務所等、拠点ごとの災害リスクを確認します。国土地理院や自治体のハザードマップを活用し、洪水、土砂災害、高潮、津波等の危険性に加え、建物の耐震性、周辺道路、避難場所、停電・断水の可能性も整理しましょう。浸水リスクが高ければ止水・防水用品、停電の影響が大きければ蓄電池等、想定される災害に応じて備蓄の重点を変えることが大切です。
最低3日分を基本に必要量を算定する
大規模災害では、公共交通機関の停止等により従業員が職場にとどまる可能性があるでしょう。東京都帰宅困難者対策条例では、事業者に3日分の飲料水、食料等の備蓄を求めており、内閣府もオフィスの水・食料は3日分程度を目安としています。
飲料水は1人1日3リットルを基準に、最大在席人数で算定します。パート、派遣、夜勤者、外注スタッフ、来客分も必要に応じて検討しましょう。
会社備蓄と従業員の個人備蓄を分けて考える
会社は、飲料水、食料、携帯トイレ、照明、救急用品、毛布等、全員に共通する物品を準備します。一方、常備薬、眼鏡・コンタクト用品、歩きやすい靴、個人用モバイルバッテリー、特定のアレルギー対応食等は個人差が大きいため、従業員にもロッカー等での備蓄を促しましょう。
「会社が用意するもの」と「各自が用意するもの」を一覧化して周知すると、準備漏れを防ぎやすくなります。
企業が最低限備えるべき防災グッズ一覧

飲料水・非常食
飲料水は1人1日3リットルを目安とすると、3日分で1人9リットルが基準になります。飲用だけでなく、服薬や簡単な調理に使う分も考慮します。
非常食は、加熱や大量の水を必要とせず、そのまま食べられる食品を中心にし、主食だけでなく缶詰、栄養補助食品、菓子類等も組み合わせましょう。アレルギー表示、宗教・食習慣、咀嚼のしやすさ、賞味期限、開封器具の要否も確認しておくことが大切です。
携帯トイレ・衛生用品
断水や下水管の損傷により、水洗トイレが使えなくなる場合があります。経済産業省は災害時用トイレについて、1人当たり35回分、7日分の備蓄を案内しており、1日5回程度が一つの目安です。
企業でも人数に応じて携帯トイレ・簡易トイレを備え、便袋、凝固剤、密閉袋、トイレットペーパー、手指消毒剤、ウェットティッシュ、マスク、ゴミ袋等をまとめて保管します。
情報収集・通信・電源用品
停電や通信障害に備え、乾電池式・手回し式ラジオ、懐中電灯、ランタン、ヘッドライト、予備電池を準備します。スマートフォン用のモバイルバッテリー、複数規格の充電ケーブル、電源タップも必要です。
限られた電力を安否確認や顧客連絡等何に優先するか、平時から決めておきましょう。主要取引先、自治体、消防、警察、保険会社、設備業者等の連絡先は紙でも保管します。
救急・救助・安全確保用品
救急箱には、包帯、ガーゼ、三角巾、使い捨て手袋、消毒用品等をそろえ、使用期限や不足品を定期的に確認します。AEDを設置している場合は、消耗品の期限と操作訓練も確認しましょう。
また、ヘルメット、耐切創手袋、防じんマスク、保護眼鏡、安全靴、ホイッスル、担架、ロープ、バール等を職場のリスクに応じて準備します。物品の保有だけでなく、無理な救助を行わない基準も共有することが重要です。
寝具・防寒・暑さ対策用品
社内待機が長引く場合に備え、毛布、寝袋、保温シート、床に敷くマットやブルーシート、簡易枕等を用意します。冬は使い捨てカイロ、防寒着、手袋、夏は冷却材、うちわ、飲料水等を追加します。
停電時は空調が停止する可能性があるため、季節に応じた温度管理も必要です。簡易間仕切りや着替え用ポンチョは、休息や着替え時のプライバシー確保に役立ちます。
女性・高齢者・障がい者等への配慮用品
生理用品、目隠し用ポンチョ、下着、紙おむつ、補聴器用電池、筆談具、老眼鏡の予備等、従業員構成に応じた用品を検討します。妊娠中の人、持病がある人、移動や情報取得に支援が必要な人、外国人従業員等には、個別の配慮が必要になる場合があります。
多言語や図記号の案内も有効です。個別事情を一律に公開させず、希望者が担当者へ相談できる仕組みを整えましょう。
企業の地震対策と備蓄品について解説しています。
事業継続のために追加したい防災グッズ

従業員の生活維持に必要な備蓄を整えたら、重要業務の継続や早期再開に必要な非常用電源、データ保護、設備保護、業種固有の資材や機材も準備しておきましょう。
非常用電源・IT・データ保護用品
ポータブル電源、蓄電池、UPS(無停電電源装置)、発電機等は、必要な機器の消費電力と使用時間から選びます。ルーター、パソコン、サーバ、電話、決済端末、冷蔵設備等、停止時の影響が大きい機器から給電の優先順位を決めましょう。
携帯発電機は一酸化炭素中毒の危険があるため、経済産業省は屋内で絶対に使用しないよう注意喚起しています。重要データはクラウドや遠隔地にもバックアップし、復旧手順を確認しておきます。
浸水・停電・火災等への対策資器材
浸水リスクがある拠点では、止水板、吸水土のう、防水シート、排水ポンプ、長靴、防水手袋、設備のかさ上げ台等を検討します。地震対策では、棚や機器の固定具、転倒防止ベルト、ガラス飛散防止対策等が重要です。
資器材は置くだけでなく、設置に必要な人数や時間、電源の有無まで確認します。風水害では大雨や強風が激しくなる前に対策を始められるよう、使用開始と作業中止の判断基準も決めておきましょう。
書類・現金・業務再開に必要な用品
従業員連絡網、取引先・仕入先・金融機関・保険会社・設備業者の連絡先、避難経路図、BCP、業務手順書等は、紙とデータの両方で保管します。停電や通信障害で電子決済やシステムが使えない場合に備え、業種に応じて少額の現金、伝票、筆記具、ラベル、印刷済みの受付・出荷様式等も準備すると良いでしょう。
重要書類、鍵、印章、バックアップ媒体は、防火・防水・施錠された場所で管理します。
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業種別に追加する用品
小売・飲食業ではレジや冷蔵設備の電源、食品廃棄の判断、来店客の保護用品、製造業では安全停止に必要な工具、保護具、危険物の漏えい対策、代替部品等を検討します。建設・運送業では車載防災セット、無線、地図、反射ベスト、携行食等、外勤者の孤立を想定した備えが必要です。
介護・医療・保育では、利用者の食事、衛生、服薬、移動、非常用電源に必要な量を別途算定しましょう。
企業向け防災グッズの選び方

防災グッズは価格やセット内容だけでなく、必要量、保管性、操作性、品質、更新コストを総合的に比較し、自社の実情に合わせて選ぶことが重要です。
人数・勤務形態・来客数から必要量を計算する
通常の在籍人数ではなく、繁忙期やシフト交代時を含む最大在席人数を基準にします。パート、派遣、外注、研修参加者、来客等をどこまで保護対象にするかも決めておきましょう。
基本数量は「1人当たり必要量×人数×日数」で計算し、破損や期限切れ、配布ロスに備えた予備を加えます。複数拠点では、本社から配る前提にせず、道路寸断や立入制限が起きても各拠点で初動対応できる量を確保することが重要です。
保管場所と取り出しやすさを優先する
備蓄品は、耐震性があり、浸水しにくく、停電時でもアクセスできる場所に保管します。重い飲料水は低い位置、濡らしたくない電源機器や書類は高い位置に置くなど、品目に応じた配置が必要です。
一か所への集中を避け、フロア、店舗、倉庫、車両等に分散する方法も有効です。避難経路を塞がず、保管場所、鍵の位置、開封責任者を全員が確認できるよう、案内表示や配置図を用意しましょう。
安さだけでなく品質と使いやすさを確認する
保存期間、耐荷重、防水性、電池規格、対応温度、保証、交換部品の入手性等を確認します。手袋をした状態や暗所でも扱えるか、説明書がなくても基本操作がわかるかも重要です。
市販の防災セットは導入しやすい一方、企業に必要な簡易トイレの数量、通信用品、業種固有の用品が不足している場合があります。購入後は内容を点検し、試食、開封、点灯、組み立て等を行って使いやすさを確認しましょう。
防災グッズを形骸化させない管理方法

備蓄品は購入後の台帳管理、期限更新、訓練、従業員への周知を継続して初めて災害時に機能します。担当者が変わっても管理できる仕組みにしておきましょう。
備蓄台帳と管理責任者を決める
備蓄台帳には、品名、数量、保管場所、購入日、使用期限・賞味期限、点検日、担当者等を記録します。紙に加え、共有できる表計算ソフトや在庫管理システムを使うと、複数拠点でも確認しやすくなります。
本社の統括責任者と各拠点の担当者を決め、発注、点検、廃棄、訓練の役割を分担しましょう。人員増減、拠点移転、レイアウト変更、業務内容の変更があった場合は、数量と配置も見直します。
期限管理とローリングストックを行う
食品、飲料水、医薬品、電池、凝固剤、消火器、AEDの消耗品等、期限や点検周期がある物品を分けて管理します。食品は防災訓練や試食の機会で消費し、使った分を補充するローリングストックを取り入れると、廃棄を減らしながら味や調理方法も確認できます。
蓄電池や発電機は未使用でも劣化する可能性があるため、定期的に充電・試運転を行い、燃料やケーブルも点検しましょう。
配布・使用訓練を行う
訓練では、誰が備蓄庫を開けるか、水や食料を誰が配るか、簡易トイレをどこに設置するか、電力を何に優先するかを確認します。ライト、ラジオ、発電機、止水板、担架、携帯トイレ等は、実際に開封・設置・操作することが重要です。
訓練後は、数量不足、配置の不便さ、操作ミス、プライバシーや衛生面の課題を記録し、備蓄台帳やBCPを更新します。訓練日を点検日と兼ねる方法も有効です。
複数拠点・在宅勤務・外勤者にも備える
店舗、工場、倉庫、営業所等、各拠点が一定期間独立して初動対応できる備蓄を置きます。営業車、配送車、工事車両には、水、携行食、携帯トイレ、ライト、救急用品、雨具、反射ベスト、モバイルバッテリー等の車載セットを用意すると良いでしょう。
在宅勤務者は会社備蓄を利用できないため、個人備蓄の方針、購入補助の有無、安否確認方法、業務継続に必要な電源・通信手段を整理しておく必要があります。
防災グッズをBCPに組み込む

備蓄品の一覧をBCPの初動対応、安否確認、重要業務の継続、復旧手順と結び付け、物品と行動を一体で整備しておきましょう。
BCP策定率や課題について解説しています。
災害時の行動手順と備蓄品を対応付ける
地震、大雨、停電等の発生条件ごとに、情報収集、安否確認、避難・待機、設備停止、顧客連絡、重要業務の継続を時系列で整理します。各行動に必要な物品、保管場所、使用責任者を対応付けましょう。
例えば、社内待機には水・食料・携帯トイレ、浸水防止には止水資器材、業務継続には非常用電源・通信手段・バックアップが必要です。備蓄品が不足・故障した場合の代替策も決め、訓練結果をBCPへ反映します。
事業継続力強化計画の活用を検討する
事業継続力強化計画は、中小企業者等が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を、経済産業大臣が認定する制度です。中小企業庁は、中小企業のための取り組みやすいBCPと位置付けています。
計画では、災害リスク、初動対応、人員・設備・資金・情報を守る対策、訓練や見直し等を整理します。認定により税制措置、金融支援、補助金の加点等を受けられる場合があるため、最新の要件は公式情報で確認しましょう。
まとめ
企業向け防災グッズは、従業員の安全を守るだけでなく、災害による事業停止を短くし、重要業務を継続するための基盤です。まずは自社の災害リスクと最大在席人数を把握し、3日分を基本に水、食料、携帯トイレ、照明、救急用品等から整備しましょう。
その上で非常用電源、データ保護、浸水対策、業種別用品へと広げ、台帳管理、期限更新、訓練を継続します。防災グッズをBCPの行動手順と結び付け、必要な時に確実に使える状態を維持することが重要です。

















