米政府が新疆ウイグルの強制労働疑い製品の輸入禁止を強化、リスク未掲載の企業も対象
公開日:2023年7月14日
人事労務・働き方改革
中国の新疆ウイグル自治区で少数民族の強制労働が疑われる問題で、米国およびEUが同国からの輸入規制を強化しています。米国が輸入差し止め対象企業を増やす一方、EUも2022年9月14日に強制労働に関与した製品の輸入禁止を目的とした法案を公表しました。日本企業にとっても自社のサプライチェーンに規制対象企業が紛れ込むリスクが高まるため注意が必要です。
米政府が新疆ウイグルの強制労働疑い製品の輸入禁止を強化、リスク未掲載の企業も対象
米国は、2022年6月施行のウイグル強制労働防止法(UFLPA)に基づき、同自治区での強制労働に関与の疑いがある企業などを「UFLPAエンティティー・リスト」に掲載し、米国への輸入を禁止しています。対象は、同自治区内で生産された製品のほか、リスト掲載の企業などが生産に関与した製品も含まれます。
2022年8月、複数の報道で、米政府が、中国企業3社に対し、UFLPAに基づき米国向け太陽光パネルの原料の調達に関する情報の提出を求めて、輸入差し止めの措置を講じたことが判明しましたが、輸入差し止めの対象と報じられた企業は同リストに掲載されていませんでした。UFLPA執行戦略として優先的に法執行すべき分野の一つに「ポリシリコンを含むシリカ系製品」を挙げており、その戦略に沿った法執行と推察されます。
なお、これに先だち、米国務省が2022年7月19日に公表した「2022年人身取引報告書」の注目トピックとして、クリーンエネルギー産業における太陽電池モジュールの原材料となるシリコンメタル*について中国・新疆ウイグル自治区で製造・採掘される過程での強制労働・児童労働の存在を指摘。太陽電池やモジュールの生産事業者が人権侵害に関わるリスクに言及しています。
今後も同リストは継続的に更新・追加されます。管轄する米国土安全保障省は2022年8月3日に、今後の改定手順を公表しました。追加の場合は、政府の強制労働執行タスクフォース(FLETF)メンバーが審議、過半数の賛成で承認します。ただし、今回の報道により、同リストに含まれない企業であっても執行戦略に沿って対象になる可能性が明らかになっています。UFLPAに基づく輸入規制の運用には不明瞭な点もあり注意が必要です。
*中国は世界のポリシリコン生産の77%を占め、その45%は新疆ウイグル自治区で生産されていると報告されています。
MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2022年10月(No.7)を基に作成したものです。