健康経営優良法人2024 ~ 認定制度の変更点と今後の方向性 ~

2023年9月15日

健康経営・メンタルヘルス

■ 2023年8月21日に健康経営優良法人2024の申請が開始されました。
■ 大規模法人部門・中小規模法人部門それぞれの認定項目の変更点や傾向について解説します。
■ 今回、情報開示の推進や多様な働き方、生産性向上のための具体的な取組を求める項目が新設され、あらゆるステークホルダーから評価を受ける指標として進化しつつあります。
■ 企業価値向上につなげるべく、PDCAサイクルに基づいて取り組みの質の向上が求められます。

健康経営優良法人認定制度の動向

2023年8月21日に健康経営優良法人2024の申請が開始されました。2016年度に創設された「健康経営優良法人認定制度」は、今回で8回目となります。前回の健康経営優良法人2023 において大規模法人2,676社、中小規模法人14,012社が認定され、制度開始以降、申請企業数・認定企業数ともに右肩上がりで増加しています。

健康経営優良法人2024のスケジュールおよび運営体系

(1)スケジュール

今年度のスケジュール概要は図1の通りです。2023年8月21日に「健康経営優良法人2024」の申請が開始され、おおむね昨年と大きな変更はありません。(大規模法人部門:2023年10月13日17時締切、中小規模法人部門:2023年10月20日17時締切)

(2)運営事務局および申請料

また昨年度から、制度の民営化を見据えて、運営事務局として日本経済新聞社が選定されました。これに伴い、ポータルサイト「ACTION!健康経営」にて情報発信され、啓発が進められています。
同時に、申請が有料化となりましたが、今年度も申請料の変更はありません(大規模法人部門は88,000円、中小規模法人部門は16,500円)。なお、大規模法人部門の場合に限り、認定審査への申請を行わなくても、調査票の回答およびフィードバックシートを受領することは可能で、この場合は無料となります。

健康経営優良法人2024認定基準の変更点について

評価項目については、昨年度から大幅な変更点はなく、ほぼ同様の項目となっています(後掲の表2、表3ご参照)。主な改定ポイントとしては「社会課題への対応」、「情報開示の推進」、「健康経営の国際展開」となっています(表1ご参照)。

(1)大規模法人部門・中小規模法人部門に共通の変更点

「社会課題への対応」は、大規模・中小規模法人部門共通の変更点です。大規模法人部門においては、所定の項目数を満たす必要がある選択項目の一部であり、中小規模法人部門においては、「女性特有の健康問題」の取組は選択項目の一部、それ以外はアンケートとして現状把握のための項目となっています。健康経営を推進する上で幅広い取り組みを求められているように感じられますが、社内の健康課題に応じて、優先順位を立てて効果的に取り組むことが期待されます。

①仕事と育児・介護の両立支援

大規模法人部門においては、「ワーク・ライフ・バランス推進」として、仕事と育児・介護の両立支援に関する設問が追加され、適切な働き方の実現の項目とともに両方取り組んでいることが認定要件となりました。また、今回認定項目ではありませんが、育児・介護を行っている従業員数・研修実施率(参加率)・育児休業制度の利用状況を回答する設問が追加されました。なお、中小規模法人部門においては、認定要件ではなく、アンケートとして現状把握のための項目となっていますが、傾向として、今後、認定要件に追加される可能性もあります。
「ワーク」と「ライフ」は相互に影響を及ぼすため、従業員一人ひとりのパフォーマンス向上に寄与する多様な働き方ができる仕組みづくりと、福利厚生の充実を両輪で取り組むことが求められています。

②女性特有の健康問題

月経に伴う症状や更年期症状など女性特有の健康課題は、生産性や社会進出に大きく影響します。この課題に取り組む企業を一層促進するため、関連施策への参加状況の開示に加え、認知度向上を図る研修および行動変容促進の両方に取り組むことが認定要件となりました。
また、不妊治療に対する支援の項目については、昨年度まで、「女性の健康」の設問にありましたが、不妊治療は女性に限定されないことから、「仕事と治療の両立支援」の設問に含まれました。

③生産性低下防止の取組

プレゼンティーイズムに影響するものとして、花粉症対策や眼精疲労に対する支援の項目が追加されました。従業員一人ひとりの心身の健康状態の維持・向上に対応する職場づくりとして、企業ごとの対応が求められます。

④新型コロナウイルス感染症への対応

新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行したことに伴い、インフルエンザ等を含む感染症対策に統合されました。ただし、5類移行後の企業等における対応策の変化等を把握するため、アンケート項目となりました。

(2)大規模法人部門における変更点

①特定健診・保健指導の実施率評価

保険者と事業者が積極的に連携(コラボヘルスの推進)し、効率的・効果的に健康づくりを推進するため、特定健診・保健指導の実施率を問う設問が追加されました。ただし、保険者のやむを得ない事情で把握できない場合や、40歳以上の従業員がいない場合は、評価上不利にはならないとされています。さらに、法令上努力義務とされている産業医または保健師による保健指導(特定保健指導を除く)の実施と実施割合について答える設問が認定要件となりました。

②業務パフォーマンス指標の開示

昨年度の調査において、業務パフォーマンス指標として、プレゼンティーイズムやアブセンティーイズム、ワークエンゲイジメントなどの測定状況が問われていましたが、既に一定数以上の企業がこれらの開示に取り組んでいる状況が把握されました。よって今回、業務パフォーマンス指標の直近の実績値及び測定方法を開示していることが評価対象となり、ホワイト500に関しては認定要件となりました。
各企業が取り組む健康経営の効果を情報開示することは、様々なステークホルダーからの評価の獲得が期待できるものです。健康経営に関する施策の実施や評価を意図的かつ戦略的に情報開示していくことが求められます。

③労働安全衛生に関する開示

労働安全衛生・リスクマネジメントの開示状況を問う設問が追加されました。労働安全衛生・リスクマネジメントは、健康経営に取り組むにあたっての土台です。今回は認定の必須要件ではありませんが、今後、具体的な開示内容や指標を精査した上で必須要件とすることが検討されることとなっています。

④海外従業員への対応

健康経営の国際展開の検討のため、海外駐在員や、現地法人で雇用されている社員の健康増進、健康課題への対応等を把握するよう、新たに設問が設けられました。

中小規模法人部門における更なる裾野拡大への動き

中小企業への普及拡大策として、今回から、ブライト500申請企業に対して結果がフィードバックされます。また、ブライト500認定企業の顕彰方法として、都道府県代表・業種別・従業員規模別・得点の上昇度で分けて公表することが検討されており、様々な角度で評価が取り上げられ、注目度が増していくことが予想されます。ブライト500認定は、大規模法人部門に準じた評価となっており、上位法人を算出する配点のウエイトは、「適合項目数」6:「自社からの発信状況」3:「外部からの依頼による発信状況」1:「健康経営のPDCAに関する取り組み状況」8:「経営者・役員の関与の度合い」2となっています。認定要件になっているか否かに関わらず幅広く取り組みを行い、PDCAに基づく施策実行が行われていることが特に求められます。
さらに今後は、中小規模法人部門に申請する全企業に対してフィードバックを行うことも検討されているため、中小規模法人においても、認定申請を通じて、取り組みのブラッシュアップやモチベーション向上につながることが期待できます。

今回の優良法人認定と今後の健康経営

昨年度から民営化に向けて運営事務局が変更となり、申請料が必要となったものの申請法人数は増加しており、「健康経営」に対する意識の高まりがうかがえます。

特に、人材不足や従業員の高齢化が深刻化している中小規模法人への普及拡大が急がれます。今回から、中小規模法人部門ブライト500申請企業における結果のフィードバックや認定企業に対する様々な形での顕彰が導入検討されることとなり、今後は更に企業への拡大が加速することが見込まれています。その結果、中小規模法人において、認定を受けていない企業との差が生まれていくことが予測されます。

今回の健康経営優良法人認定制度の改定において、情報開示の推進や、多様な働き方、生産性の向上のための具体的な取り組みを求める項目が新設され、あらゆるステークホルダー(投資家に限らず、従業員や求職者、行政機関、地域住民など)から評価を受ける指標として進化しつつあります。今後の人材獲得競争において、「選ばれる会社」になれるかどうかの明暗を分ける基準のひとつになると推察します。

健康経営は、昨今注目される人的資本経営やウェルビーイング経営の重要な基盤を構成します。認定取得はゴールではなく、経営理念を実現するためのプロセス(課題整理・検証・評価)と捉え、「自社」が抱える課題に応じた取り組みの実効性を高めることが最も重要です。さらなる企業価値向上や持続的成長につなげるべく、経営・人事戦略と連動したPDCAサイクルに基づき、ソフト面(健康リテラシーの向上や施策)とハード面(制度等を含む環境整備)を連動させていくことが求められます。


MS&ADインターリスク総研株式会社発行の人的資本・健康経営インフォメーション2023年9月(No.1)を基に作成したものです。