健康診断はどのように実施すべき?種類・対象者・注意点を解説
公開日:2024年8月26日
健康経営・メンタルヘルス
従業員に心身共に健康で働いてもらうには、定期的な健康診断の実施が欠かせません。健康に対する意識を従業員に高めてもらうと同時に、病気の早期発見につなげて適切な指導を行っていく必要があります。
一口に健康診断と言っても、種類や対象者等は異なるので、基本的な仕組みを理解しておくことが大切です。この記事では、健康診断の種類や対象者、注意点等を詳しく解説します。
健康診断の概要
従業員の健康診断を滞りなく実施するには、基本的な仕組みを理解しておく必要があります。まずは、健康診断の実施義務や主な種類、対象となる労働者、実施内容について解説します。
また、健康診断を受診することは「健康経営」を推進する上で基本的な取組となりますので、ご興味のある方は以下の冊子もあわせてご確認ください。
健康診断の実施義務
健康診断の実施義務は、労働安全衛生法第66条によって定められています。事業主は労働者に対し、医師による健康診断を行わなければならないと決められている点を押さえておきましょう。
また、労働者においても事業主が実施する健康診断を受診することが求められています。事業者とそこで働く労働者が協力をしながら、法令で定められた健康診断を実施することが大切です。
健康診断の主な種類
健康診断は大きく分けると、「一般健康診断」や「特殊健康診断」等があります。一般健康診断はさらに、次のように区分されています。
また、有害な業務に常時従事する労働者に対しては、特殊健康診断等を実施しなければなりません。原則として、雇入れ時や配置替えのタイミング、または6ヵ月以内ごとに1回の割合で実施することが定められています。
労働者ごとに入社時期や従事する業務内容は異なりますが、実施時期に漏れが生じないように、労務管理を適切に行って勤務状況を常に把握しておきましょう。
対象となる労働者
健康診断を受けさせる対象となる労働者は、「常時使用する労働者」とされています。気を付けておきたい点は、正社員のみを対象としているわけではないことです。
パートやアルバイト、嘱託社員等で1年以上雇用される見込みの者、1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上となっている者は、雇用形態にかかわらず全て対象となります。健康診断を実施するタイミングにおいては、業務の割り振り等を調整して、対象となる全ての労働者が受けられる体制を整えてみましょう。
実施内容(一般健康診断の場合)
検査される項目は、健康診断の種類によって異なります。ここでは、一般健康診断における雇入れ時健康診断と定期健康診断の検査項目について、具体的に見ていきましょう。
定期健康診断の検査項目のうち、医師が必要でないと認めるときは一部を省略することができますが、基本的には上記のように検査項目が細かく定められていることを把握しておきましょう。
健康診断に関するルール
健康診断は実施するタイミングや費用負担について、一定のルールが定められています。実施を怠った場合の事業者の罰則も含めて解説します。
実施するタイミング
健康診断は実施するタイミングが、それぞれ決められています。例えば、定期健康診断の場合であれば、1年以内ごとに1回の割合で常時使用する労働者に受けさせる必要があります。
雇入れ時健康診断についても同様に、常時使用する労働者が対象となり、入社時に実施しなければなりません。特定業務従事者や海外派遣労働者の健康診断でも、配置替えや派遣時等に受けさせなければならないので注意しておきましょう。
費用負担
健康診断の法定項目を受診する際の費用は、全額が事業者負担となっています。法定項目とは、具体的には身体測定、内科診察、視力、聴力、血圧測定、尿検査、レントゲン撮影、採血、心電図検査のことを指します。
事業者の罰則
健康診断の実施義務は、事業規模や従業員数等は関係がありません。そのため、どのような事業者であっても、労働者を雇用している場合には定期的に健康診断を受けさせる義務が発生します。
仮に、実施義務を怠った場合、労働安全衛生法第120条の定めによって50万円以下の罰金が科せられる恐れがあるので注意しましょう。
健康診断を実施した後の企業の取組
健康診断を実施した後は、適切なアプローチを従業員に対して行うことで、健康確保や健康増進へとつなげていけます。どのような取組を行えばよいかを解説します。
結果の記録
健康診断の実施後は、労働安全衛生法第66条によって健康診断個人票を作成することが義務付けられているので気を付けましょう。健診結果を一定期間は保存しておくことが義務として課せられています。
適切な措置の実施
医師から意見を聞いた後、業務上の配慮が必要になった場合は、負担の大きい業務の転換や労働時間の短縮等の措置を講じなければなりません。対象となる労働者の勤務状況を確認し、適切な措置を実施してみましょう。
労働者への通知と保健指導
健康診断によって得られた結果は、労働者に対して通知しなければなりません。加えて、健康確保に努める必要がある労働者には、医師や保健師等による保健指導を受けるように促す必要があります。
労働基準監督署への報告
健康診断の結果は、所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。常時50人以上の労働者を使用する事業者、特殊健診の結果については健診を行った全ての事業者が対象となる点に注意しましょう。
ストレスチェック結果の活用実態のほか、活用方法や取組事例について解説しています。
健康診断に関するQ&A
健康診断は対象となる労働者に対して一律で実施するものではありますが、診断結果の内容によっては個別での対応が必要です。ここでは、健康診断に関するQ&Aとして、気になるポイントを解説します。
自治体等の健康診断を受けた場合
労働者が自主的に、自治体等が実施する健康診断を受ける場合があります。その際は、結果を証明する書面を事業者に提出すれば、改めて企業が実施する健康診断を受ける必要はありません。
ただし、労働安全衛生法第44条で定められている法定項目の要件を満たしていないときは、不足する項目について別途検査を受けなければなりません。自治体の健康診断を受ける労働者がいるときには、適切な指導を行いましょう。
企業が行う事後措置
健康診断の結果、対象となる労働者に一定の配慮が必要であるときは、業務負担を軽減する措置を取りましょう。具体的には、次のような措置が挙げられます。
主な事後措置
・労働時間の短縮
・出張の制限
・時間外労働の制限
・労働負荷の制限
・作業の転換
・就業場所の変更
・深夜業の回数の減少
・昼間勤務への転換 等
労働時間や業務内容、勤務場所等の見直しを行っていくことが大切です。健康に留意しながら働き続けられる環境を整えれば、対象となる労働者だけでなく他の労働者にとってもプラスとなる部分が大きいはずです。
また、事後措置をしっかりと実行に移すためには、他の労働者の理解や協力が必要な面もあるため、あらかじめ丁寧な説明を行っておくことも大事だと言えます。
再検査の費用負担
健康診断を受けた結果、再検査や精密検査等が必要になるケースがあります。再検査等を受けるときにかかる費用負担については、法令によって定められてはいませんが、一般健康診断の検査項目に該当するものの場合、事業者が費用を負担するものと一般的には考えられています。
労働者が費用負担を気にして、再検査等を受診しないということがないように、適切な対応を行っていくことが重要です。健康診断を実施する前に、再検査等になった場合の対応をあらかじめ説明しておくとスムーズでしょう。
まとめ
より良い労働環境を整えていくには、定期的な健康診断の実施が欠かせません。従業員の健康状態や健康管理を把握しておくことで、適切なアプローチを行えるでしょう。
必要に応じて、医師等のサポートも受けながら、従業員と共に健康で安心して働ける仕組みを整備していくことが重要です。診断結果を基に、日頃から緊密なコミュニケーションを重ねながら、従業員の健康確保や健康増進につなげていきましょう。
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