ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)を理解するためのポイント

公開日:2026年8月28日

労働災害防止

ISO45001は労働災害の防止と安全で健康な職場環境の提供を目的とした、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格です。

企業が対応すべき安全衛生上の課題範囲は広がってきており、継続的に安全衛生水準を向上させる仕組みづくりが求められています。

ISO45001は事業場の安全衛生水準の向上に向け、PDCAサイクルで継続的に取り組むための実務ツールとして有効です。

日本の労働災害の現状

日本の労働災害による死亡者数は、2024年に746人となりピークであった1960年代と比べて大幅に減少するとともに、長期的な減少傾向の中で過去最少を記録しました。しかしながら、休業4日以上の死傷者数では2009年以降増加傾向にあり、日本における労働安全衛生管理の重要性は変わっていません。

一方、労働災害の発生状況は多様化しています。業種別では第三次産業の占める割合が年々増加し2024年では全体の52%を占めるまでとなり、特に社会福祉施設における労働災害の発生件数の増加が著しくなっています。さらには働く人の高齢化に伴い高年齢労働者の死傷者数が増加しており、外国人労働者数の増加に伴う外国人労働者の死傷者数も増加傾向にあります。

また、メンタルヘルス、ハラスメントや熱中症対策等、社会環境の変化に伴って企業が対応すべき安全衛生上の課題範囲は広がってきています。このため、個別対策の積み上げだけでなく、継続的に安全衛生水準を向上させる仕組みづくりが求められています。

 

労災の基礎知識として、概要や判断基準、発生時の対応について、また、どのようなケースが労災に認定されるのか、具体的な事例についても解説しています

労働安全衛生に関わる近年の主な法令改正

多様化する労働災害の要因への対策としてさまざまな法令改正が行われ、労働災害防止に向けた措置が義務化、努力義務化されてきました。下表は近年の主な法令改正を一覧にしたものです。

労働災害を防止し安全で健康的な職場環境を形成するために、国は労働安全衛生法を中心に省令や各種告示・通達にて具体的な内容を定めています。安全衛生に関わる環境の変化に伴い法令改正を行っていますが、近年の改正傾向は「事業者が自らリスクを把握し、予防的に管理する」方向に進んでいると言えます。

一連の法的要求事項の充足のみならず実効性のある安全衛生対策を継続的に講じるためにも、安全衛生の方針や目標を定め、それを達成するためにPDCAサイクルを回しながら組織を適切に指揮、管理するための仕組み(マネジメントシステム)の構築が、事業場の規模を問わず重要となります。

ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)の概要

ISO45001は、労働災害の防止と安全で健康的な職場環境の提供を目的とした、労働安全衛生マネジメントシステム(以下、「マネジメントシステム」という)の国際規格です。組織の各階層の働く人が労働安全衛生に関わり、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)のPDCAサイクルを継続的に回すことにより、労働安全衛生水準の向上を図ることを目指しています。

ISO45001は序文と10の箇条で構成され、要求事項は箇条4から箇条10に記載されています。PDCAサイクルとの対応でみると箇条6がPlan、箇条7と8がDo、箇条9がCheck、箇条10がActに該当します。

この構造は他のISOマネジメントシステムと共通のものを採用しているため、ISO9001やISO14001を取得している組織では統合的に運用しやすいという利点があります。

ISO45001導入にあたってのポイント

ISO45001の導入にあたっては、従来から行っている安全衛生活動をベースにマネジメントシステムとして構築することが重要となりますが、導入にあたってあらかじめ抑えておきたいポイントについて解説します。

(ア)リーダーシップ及び働く人の参加
ISO45001の特長として「経営トップの主導」と「働く人の参加」を求めている点があります。経営者等トップマネジメントにあたる者が主導して方針を打ち出し、明文化し、社内に周知していく必要があります。また、「働く人」という労働者よりも広い概念を用いて、事業者、管理職、請負業者、派遣労働者、ボランティア、インターンシップ等組織の事業活動に関わる「働く人」の参加・協議も重視されており、実効性のある安全衛生活動を進める上で、現場の知見や意見を反映することが求められます。
 
(イ)安全文化の醸成
ISO45001では、要求事項の一つに「目指すべき成果を支援する文化を醸成すること」を挙げています。安全文化という言葉が1985年のチョルノービリ(ロシア語では「チェルノブイリ」)原子力発電所事故をきっかけに提唱され、安全文化を醸成する取組が電力、石油、航空産業等を中心に進められてきましたが、ISO45001では安全文化の醸成を要求事項に加えています。

安全文化を醸成するための活動はさまざまあるものの、その評価は難しいと考えられどのような活動を行えば良いのか悩んでいる組織も少なくありません。

(ウ)プロセスの理解と構築・統合
ISO45001ではさまざまな「プロセス」の構築・運用が要求されています。「プロセス」には当然「手順」も含まれますが、その手順を活用できる人や手順の実行に適した機械設備等も含まれます。マネジメントシステムを適切に運用するためには手順はもちろん、必要な情報や材料、適切な担当者の任命、使用する機械設備等「プロセス」全体を構築・運用することが重要です。

また、ISO45001では組織の事業プロセスにマネジメントシステムを統合することを求めています。ISO45001のために新たに仕組みを作って特別に取り組むということではなく、これまでの取組を出来る限り活かして、組織の事業活動の中で実施できるようにすることの重要性を示しています。

(エ)マネジメントシステムマニュアル(基本規程)
ISO45001の要求事項には、文書化した情報の維持または保持を求めるものがあります。(文書化した情報とは単に文章だけでなく図や写真、動画等も含まれます。)

一方でISO45001で構築・運用を求めるプロセスには文書化まで求めていないものが多いですが、構築したプロセスを運用するためには関係者に周知するための文書化された情報が必要となります。また、従来より取り組んでいる安全衛生活動にて活用されている文書化された情報もありさまざまな文書が複雑にからんできます。

このため、ISO45001導入にあたってはマネジメントシステムの構築・運用にかかわるすべての事項を包括的に示し、関連文書を体系化するマネジメントシステムマニュアル(基本規程)の作成が望ましいです。なお、マニュアルの作成にあたっては規格の箇条に沿った形式で作成することで、要求事項に従うものとなりやすいです。

ISO45001の規格の構成

ISO45001は別紙1の表に示すとおり、全10箇条の構成となっています。要求事項は箇条4から箇条10に記載されています。なお、規格の要求事項については「~しなければならない」と表現されています。ISO45001を適切に運用するためには、要求事項を確実に実施することが重要となります。

ISO45001要求事項のポイントと実践に向けての方策

ISO45001について、箇条4から箇条10に記載されている各要求事項のポイントと実践に向けての方策について解説します。

箇条4.組織の状況
4.1 組織及びその状況の理解
ISO規格には掲載されていますが、他のマネジメントシステム規格にはない要求事項です。「組織の状況の理解」とは組織の現状を把握すると考えれば良いですが、具体的には組織の安全衛生水準の向上に向けて対処しなければならない課題を組織外部と組織内部の課題とに分けて把握することを求めています。

4.2 働く人及びその他の利害関係者のニーズ及び期待の理解
本箇条では働く人に加えてその他の利害関係者(=マネジメントシステムに関連するその他の利害関係者)のニーズ及び期待を理解することを求めています。その他の利害関係者には労働組合や行政、親会社、協力会社、近隣住民等があり、働く人だけでなくその他の利害関係者のニーズ及び期待を明確にすることが求められています。

箇条4.1、箇条4.2ともに求められているのは「理解」であるため、それぞれの箇条で把握した課題やニーズ及び期待のすべてに対する対策の実施までは求められていません。把握したものを箇条6「計画」で評価し、組織として対処するか否かを決定します。箇条4.1、箇条4.2は、取り組む活動を決定する前に組織の状況を把握することそのものを求めているといえます。なお、例えば「機械設備の老朽化」(課題)と「老朽化した機械設備の新規設備への入替」(ニーズ及び期待)のように「課題」と「ニーズ及び期待」が重複することは有り得ます。

4.3 労働安全衛生マネジメントシステムの適用範囲の決定
箇条4.1にて把握した外部及び内部の課題並びに箇条4.2で把握した働く人及びその他の利害関係者のニーズ及び期待を踏まえて適用範囲を決定します。なお、適用範囲とはマネジメントシステム運用の物理的範囲(工場単位や会社全体等)を意味しますが、対象者は適用範囲の外で働く人も含まれ、営業職やテレワーカー等組織の敷地外で働く人に加えて来訪者や納入業者等敷地内に入ってくる人も対象となります。なお、この適用範囲は文書化した情報として利用可能な状態にしておくことが求められています。

4.4 労働安全衛生マネジメントシステム
ISO45001の要求事項に従って、「必要なプロセス」と「プロセス間の相互作用」を含めたマネジメントシステムの構築・運用を求めています。「必要なプロセス」とは箇条4から箇条10までのすべての要求事項であり、「プロセス間の相互作用」とはそれぞれのプロセスが互いに連動するマネジメントシステムの構築を求めています。すべての要求事項を関連させたマネジメントシステムの構築にあたっては前述のとおりマニュアル(基本規程)を作成することが望ましく、マニュアルの作成にあたっては規格の箇条に沿った形式で作成することにより要求全体に従うものとなります。

箇条5.リーダーシップ及び働く人の参加
5.1 リーダーシップ及びコミットメント
本箇条では経営層のリーダーシップとコミットメント(約束、責任、主体的な関与)について定めており、具体的に13の項目について経営層が統率力を発揮して、主体的に関与することを証明することを求めています。項目としては労働安全衛生方針や目標の設定、必要な資源の確保、事業プロセスとの統合、働く人の保護等が記されています。

5.2 労働安全衛生方針
5.3 組織の役割、責任及び権限
本箇条では労働安全衛生方針に5つのコミットメント(安全で健康に働ける職場環境の提供、法令等の順守、労働安全衛生リスクの軽減、マネジメントシステムの継続した改善、働く人の協議と参加)並びに安全衛生上の重点取組事項を含めた上で、文書化した情報にて働く人と広く社会(利害関係者)に分かりやすく伝えるよう求めています。また、組織の役割、責任及び権限については経営層や安全衛生責任者のみならず働く人も含めた全ての階層においての役割、責任及び権限について割当て、組織に伝達する必要があります。

5.4 働く人の協議及び参加
本箇条は他のISO規格にはないISO45001独自の要求事項です。箇条3「用語及び定義」にて“協議”とは「意思決定をする前に意見を求めること」であり、“参加”とは「意思決定に関与させること」とされています。働く人には経営層や管理職も含まれることからISO45001では非管理職との協議や参加に関する要求事項が定められています。要求事項の内容については実際に安全衛生委員会で既に審議されている事項が多く、委員会を活用することで十分に対応できるものです。しかしながら、“協議”すべき事項と“参加”すべき事項がそれぞれで定められており、“協議”すべき事項と“参加”すべき事項を混同しないようそれぞれの要求事項に沿った対応を行うよう留意し、また委員会で労使が十分に審議できる運営とするよう工夫する必要があります。

安全配慮義務違反に当てはまるケースや防止策、企業のリスクと責任、等について解説しています。

 

箇条6.計画
箇条6はPDCAのPlan(計画)であり、ISO 45001の構築において特に時間を要するものです。

6.1 リスク及び機会への取組み
本箇条では細分箇条が設定されており、まず「一般(箇条6.1.1)」にて取り組む必要のあるリスク・機会を決定することを求め、そのために反映させなければならない事項を定めています。
反映させなければならない事項がその細分箇条にて具体的に定められており、以下に解説するいずれの事項も不採用にできず、必ず対応しなければならないものであることに留意する必要があります。

6.1.2.1 危険源の特定
危険源の特定は従来より実施しているリスクアセスメントにて実施できますが、起こり得る緊急事態への対応や働く人のみならず来訪者等の職場に出入りする人々や近隣の住民を含めた人々に影響をおよぼす危険源の特定や組織内部だけでなく組織の外にありながら組織の人々に影響をおよぼす危険源の特定も行う必要があります。

6.1.2.2 労働安全衛生リスク及びマネジメントシステムに対するその他のリスクの評価
労働安全衛生リスクとは働く人の負傷や疾病につながるリスクであり、箇条6.1.2.1「危険源の特定」にて抽出された安全衛生上のリスクを評価することです。
一方、マネジメントシステムに対するその他のリスクとはマネジメントシステムの実施や運用に関係するリスクを表すものです。例えば安全衛生に関わる予算や人員の削減、教育不足による安全意識の低下等が考えられます。ISO45001ではこうしたリスクも抽出し評価する取組が求められています。

6.1.2.3 労働安全衛生機会及びマネジメントシステムに対するその他の機会の評価
労働安全衛生機会とは箇条3「用語及び定義」にて「労働安全衛生パフォーマンスの向上につながり得る状況又は一連の状況」と定めており、「機会」とは「パフォーマンス向上につながり得る状況又は一連の状況」ということになります。5S活動やKY活動等日々取り組んでいる安全衛生活動や安全衛生水準の向上につながる新技術の導入が「機会」となります。よって、労働安全衛生機会はこれまで取り組んでいる多くの安全衛生活動が該当し、これらをリスト化して取組の優先度を決めることが評価の一例となります。

また、マネジメントシステムに対するその他の機会についてはリスク同様にマネジメントシステムの実施・運用に良い影響を与える状況であり、例えば安全衛生スタッフが増員されることや外部コンサルティングを導入しマネジメントシステムを見直すこと等が挙げられます。本箇条ではそれぞれを評価することが求められています。

6.1.3 法的要求事項及びその他の要求事項の決定
法的要求事項とは法律、政令、省令、労働協約等が該当します。また、その他の要求事項とは親会社や取引先からの要求事項や労働組合との協定等があります。これらについて組織で適用されるものを整理し、文書化して常に最新の状態にしておくことが求められています。

6.1.4 取組みの計画策定
PDCAのPの策定を求めている箇条です。評価したリスク及び機会(箇条6.1.2.2及び6.1.2.3)、組織に適用される法的要求事項及びその他の要求事項(箇条6.1.3)、緊急事態への準備及び対応(箇条8.2)について、組織が取り組むと決めた事項を実施するための計画を作成すること、並びにその取組の有効性の評価方法についても策定を求められています。計画策定とありますがスケジュールを決めるというよりも、取り組むべき内容と方法を決定すると考えた方が良いです。ここで策定する計画は中長期的なものも含めた労働安全衛生に関する経営戦略を定めるものとなります。

6.2 労働安全衛生目標及びそれを達成するための計画策定
労働安全衛生方針(箇条5.2)に矛盾せず、評価したリスク及び機会(箇条6.1.2.2及び6.1.2.3)等を踏まえた、労働安全衛生目標並びにその達成のための計画を、組織全体及び部門ごとに設定することを求めています。目標については定性的、定量的な評価が可能なものとし、モニタリングの実施が求められています。計画については責任者や達成期限の設定も必要となり、結果の評価方法も定める必要があります。

箇条7.支援
箇条7はPDCAのDo(実行)であり、同じくDoに位置付けられている箇条8を支援するための要求事項です。
7.1 資源
7.2 力量
資源とは一般的に経営資源といわれるヒト・モノ・お金・情報・時間等と理解すれば良いです。力量とは知識と技能のことであり、マネジメントシステムの適切な運用のために必要な資源を投入し、働く人の力量を把握し必要な教育訓練の提供とその有効性の評価を求めています。

7.3 認識
7.4 コミュニケーション
7.5 文書化した情報
マネジメントシステムの適切な運用のために働く人に認識させなければならないこと、コミュニケーションすべき情報等を定めており、組織内部、外部とのコミュニケーションのプロセスの構築・運用を求めています。また、そのために必要な文書化した情報の定義や維持・保持すべき情報等について定めています。安全衛生委員会や小集団活動、朝礼等従来から行っている安全衛生活動をベースに要求事項に沿った対応を進めることが必要です。

箇条8.運用
箇条8はPDCAのDo(実行)であり、箇条6にて決定した取組を実施することです。
8.1 運用の計画及び管理
箇条6等で決定した取組を実施するために必要なプロセスを計画、実施、管理、維持することを求めています。つまりは、取り組むことを決めた安全衛生活動を計画、実施、管理、維持することです。また、プロセスの実施のために必要な実施要領・計画表や手順書の維持並びに実施の記録の保持も必要となります。

8.1.3 変更の管理
変更とは機械設備の新規導入または入替、手順の変更、人員の入替、機械設備の故障等があり、変更が生じた場合に悪い影響が出ないよう管理するためのプロセスの構築・運用が求められています。変更は労働災害の発生につながりやすいため、変更がある場合に何をすべきかというプロセスの構築・運用は重要な項目です。

8.1.4 調達
機械設備や化学物質等の物品類や外部委託等のサービスを調達する際にこれらが組織のマネジメントシステムに適合するようにするための管理プロセスの構築・運用を求めています。サービスについては細分箇条にて請負者と外部委託それぞれに要求事項が定められているため、留意する必要があります。

8.2 緊急事態への準備及び対応
箇条6.1.2.1「危険源の特定」で特定された緊急事態に対する準備及び対応を求めています。緊急事態とは労働災害が発生しうる切迫した状態をいい、例えば火災、爆発、危険有害物質やガスの漏えい、自然災害等があります。多くの組織で消防計画や災害発生時の緊急時対応計画等があると考えられますが、それらが要求事項を満たしているかどうかを確認し、不足する事項を補えば良いです。

箇条9.パフォーマンス評価
箇条9はPDCAのCheck(評価)であり、Plan、Doの結果を評価することが目的です。
9.1 モニタリング、測定、分析及びパフォーマンス評価
「パフォーマンス」とは箇条3「用語及び定義」にて「測定可能な結果」とされています。取組の現状がどのような状態にあるか継続的にチェック、観察、測定して分析の上、結果を評価することが求められています。組織が定めた「対象」に対してモニタリング、測定、分析、評価の「方法」、「基準」や「時期」を定めることになります。また、法令等要求事項の順守状況を評価するためのプロセスの構築・運用について細分箇条にて定めています。

9.2 内部監査
内部監査はマネジメントシステムが組織の方針や目標等に沿って適切に運営されているか、並びにISO45001の要求事項に即しているかを監査するものです。そのため、あらかじめ定めた間隔で監査を実施することが求められています。監査の頻度、方法、責任等を定めた監査プログラムを策定し、監査員を選定の上実施する必要があります。また、監査結果は関係する管理者及び働く人、並びに必要に応じて関連する利害関係者に報告し、不適合があればその改善に取り組み、安全衛生水準の向上を継続的に図ることも求められています。

9.3 マネジメントレビュー
マネジメントレビューとは、経営層がマネジメントシステムが適正で実効性を有することを確認し、必要に応じて改善を行うための活動です。経営層が自らマネジメントシステムのレビューをあらかじめ定めた間隔で実施する必要があります。確認すべき事項も定められており、その結果を働く人に公表すること並びに公表する必要のある事項まで定められています。

箇条10.改善
箇条10はPDCAのAct(改善)であり、明らかになった課題やインシデントに対して適切に改善を進めることです。
10.1 一般
10.2 インシデント、不適合及び是正処置
10.3 継続的改善

インシデントとは労働災害に加えてヒヤリハットのように災害を引き起こすおそれのある事象も含まれます。インシデント及びマネジメントシステム運用上の不適合についてそれぞれ原因を究明し、再発防止に向けた対策を講じる必要があります。本箇条ではインシデント及び不適合について報告、調査、処置を含めた管理プロセスの構築・運用が求められており、報告が必要なインシデント及び不適合を定めることや調査方法、再発防止への処置等のルールを定める必要があります。

ISO45001の導入に向けて

ISO45001の要求事項は箇条4から箇条10まで詳細に定められており、すべてに対応するのは難しいと思われるかもしれません。

しかし、必ずしも規格のための新たな仕組みを一から作る必要はありません。日常的に行っている安全衛生活動をマネジメントシステムに組み込み、PDCAサイクルの中に位置付けて運用することで、実効性のある仕組みへと発展させることができます。

ISO45001は組織における労働安全衛生の向上に寄与するものであり、認証を取得しなくても組織の労働安全衛生活動を整理し、継続的に改善するための実務的ツールとして活用する視点が有効です。経営トップから現場までが一体となって現場の実態に即した仕組みを構築・運用することが、労働安全衛生水準の向上と企業価値向上の両立につながると考えます。

本誌の別紙2にISO45001で求められているプロセスと文書・記録についてまとめた一覧表を作成しました。ISO45001が求めるプロセスや文書・記録と組織で現在取り組んでいる内容を確認し、必要な対策を進めるためのツールとして活用ください。

本稿がISO45001の理解に少しでも貢献できれば幸いです。

【参考文献】

1) 日本産業標準調査会「JIS Q 45001 労働安全衛生マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引」
(最終アクセス2026年5月13日)
2) 中央労働災害防止協会『これだけでわかる ISO45001』2019年
3) 中央労働災害防止協会『実践!労働安全マネジメントシステム ISO45001・JIS Q 45100文書例・様式データ集』2020年
4) 黒崎由行『労働安全マネジメントシステム ISO45001実践ハンドブック』労働調査会、2018年


MS&ADインターリスク総研株式会社発行の労災リスク・インフォメーション2026年6月(No.38)を基に作成したものです。

MS&ADインターリスク総研株式会社

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