労働基準法上の管理監督者(1)
公開日:2023年8月21日
人事労務・働き方改革
会社組織上の「管理職」と労働基準法上の「管理監督者」は異なるものであり、その運用を間違うと残業代未払いなどのトラブルに発展する可能性があります。労働基準法上の「管理監督者」について、第1回目の今回は、「管理職」と「管理監督者」との違いや定義、「管理監督者に関する労務リスク」についてお伝えします。
「管理職」と「管理監督者」の違い
会社組織上の「管理職」と労働基準法上の「管理監督者」は一致しない場合がありますので、注意が必要です。
(1)「管理職」とは会社における課長、部長などの役職者
(2)労働基準法上の「管理監督者」とは、労働基準法第41条第2号にて「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」とされています。
「管理監督者」とは
「管理監督者」の定義は、「監督又は管理の地位にある者とは、一般的には部長、工場長等の労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場に在る者の意であるが、名称にとらわれず出社退社等について厳格な制限を受けない者について実態に即して判断すべきものであること」(昭22.9.13基発第17号、昭和63.3.14基発150号等)とされています。
また、その範囲については、「労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って管理監督者として法第41条による適用の除外が認められるものである。その範囲はその限りに、限定しなければならない」とされています。つまり、労働基準法上の「管理監督者」に該当するかは、役職名等に関わらず、実態に即して判断されます。
管理監督者に関する労務リスク
「管理監督者」には労働時間、休憩、休日に関する以下の規定を適用しないと定めているため、管理監督者の法定労働時間を超える労働および法定休日労働には、割増賃金の支払いは必要ないことになります。しかし、労働基準法上の「管理監督者」に該当しない場合は、時間外労働及び法定休日労働の割増賃金の支払いが必要となる場合があり、会社が割増賃金の支払いをしていなかった場合には、未払い賃金として労務トラブルにつながるリスクがあります。
・労働時間の原則「法定労働時間:1日8時間、週40時間」(労働基準法第32条)
・休憩に関する規定「労働時間が6時間を超える場合には45分、8時間を超える場合には60分」
(同法第34条)
・休日に関する規定「週1日又は4週4日」(同法第35条)
上記を踏まえて、自社の「管理職」が労働基準法上の「管理監督者」に該当するかをチェックすることが労務トラブルを回避する上で重要となります。詳細は厚生労働省の関連HPをご覧ください。
(寄稿:社会保険労務士法人みらいコンサルティング)
三井住友海上経営サポートセンター発行のビジネスニュース2023年4月(第322号)を基に作成したものです。