労働基準法上の管理監督者(2)

2023年8月23日

人事労務・働き方改革

労働基準法上の「管理監督者」について、第2回目の今回は「管理監督者」の判断要素についてお伝えします。

「管理監督者」の判断要素

(1)労働基準法上の「管理監督者」と認められるには、組織上の役職名によることなく、以下の4つの判断要素に基づき、実態に即して客観的かつ総合的に判断されることになります。
●労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、「重要な職務内容」を有しているため、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ないこと。
<主な判断基準>
・経営会議等の企業運営の意思決定に関わる重要な会議体に参加して発言する。
・経営方針や取引方針の決定において相当程度の役割(部門方針の決定権限など)を果たしてる。
●上記のような重要な責任と権限を有していること。
<主な判断基準>
・従業員の採用、配置転換、人事考課、解雇等について決定する権限がある。
・予算管理、費用管理について決定する権限がある。
●現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあること。
<主な判断基準>
・始業時刻、終業時刻などの所定労働時間の拘束を受けない。
・自身の業務量・業務時間をある程度自由にコントロールできる。
●賃金等について、その地位にふさわしい処遇がなされていること。
<主な判断基準>
・一般職と比較して給与(基本給、手当など)や賞与などが相応に高い。

(2)したがって、「部長」「課長」などの役職名が付いていても、以下に該当する場合は管理監督者性を否定する要素になります。
・経営会議等の重要な会議に参加することがない。
・自らの裁量で決定する権限が少なく、多くの事柄についてさらに上位者の決裁を仰ぐ必要があり、上位者の命令を部下に伝達するだけである場合。
・定期給与(基本給、役付手当等)、賞与、その他の待遇において、一般職と比較して、管理職の地位に相応の待遇がなされていない。
・管理監督者は時間外労働や休日労働をしても残業手当や休日出勤手当は支払われず、管理職になって残業代がなくなり、年収が管理職になる前よりも減少する。

(3)「管理監督者」について上記の判断要素から、管理監督者性が低く否認された場合には、残業手当・休日出勤手当の支払対象として多額の未払賃金を請求される可能性があるため、自社の運営をチェックすることが重要です。詳細は厚生労働省の関連HPをご覧ください。

(寄稿:社会保険労務士法人みらいコンサルティング)
三井住友海上経営サポートセンター発行のビジネスニュース2023年5月(第323号)を基に作成したものです。

関連記事

2024年の熱中症対策のポイント

2024年5月10日

人事労務・働き方改革

自然災害・事業継続

貨物自動車(トラック)の荷役作業における労働災害防止措置の強化について

2024年3月25日

人事労務・働き方改革

事故防止

消費税インボイス制度に関する疑問点にお答えします!

2024年3月13日

人事労務・働き方改革

フリーランスの労災保険

2024年1月31日

人事労務・働き方改革

「年収の壁」への対応策

2024年1月19日

人事労務・働き方改革

おすすめ記事

「2024年問題」に対応するための法改正

2024年5月17日

2024年問題

弁護士が解説!企業が問われる法律上の賠償責任とは ~店舗・商業施設における訴訟事例~

2024年5月15日

その他

弁護士が解説!企業が問われる法律上の損害賠償責任とは ~自然災害(一般不法行為責任)における訴訟事例~

2024年5月8日

自然災害・事業継続

弁護士が解説!企業が問われる法律上の損害賠償責任とは ~自然災害(土地工作物責任)における訴訟事例~

2024年4月24日

自然災害・事業継続

AIは「ほぼ間違いなく」サイバー攻撃を激化させる 英国NCSCが調査結果を公開

2024年4月3日

サイバーリスク

週間ランキング

2024年の熱中症対策のポイント

2024年5月10日

人事労務・働き方改革

自然災害・事業継続

弁護士が解説!企業が問われる法律上の損害賠償責任とは ~自然災害(一般不法行為責任)における訴訟事例~

2024年5月8日

自然災害・事業継続

補助金申請から入金まで!全体スケジュールを徹底解説

2023年11月15日

助成金・補助金

帝国データバンク公表「公租公課滞納倒産動向」

2023年12月27日

その他

首都直下地震等による東京の被害想定を図表で分かりやすく解説

2023年6月1日

自然災害・事業継続