ストレスチェック義務化とは?実施の手順やポイントを詳しく解説

公開日:2026年5月18日

健康経営・メンタルヘルス

ストレスチェック義務化は法改正によって対象範囲が拡大される中で、企業が取るべき対応は急務となっています。従業員が働きやすい環境を整えることは、離職率の低下や生産性の向上に結びつくものであるため、しっかりと体制を整えて取り組んでいくことが重要です。

この記事では、ストレスチェックの実施に向けた具体的な手順や、円滑に制度を運用するためのポイントについて紹介します。ストレスチェック義務化に関する概要をはじめ、以前までの仕組みとの違い等について詳しく見ていきましょう。

ストレスチェック義務化とは

まずは、ストレスチェック義務化に関する基本的な概要と、法改正によって生じた以前までの仕組みとの違いについて解説します。企業が法令を遵守して適切な対応を行っていくためには、しっかりと制度を理解しておくことが大切です。

ストレスチェック義務化の概要

ストレスチェック制度とは、2015年から労働安全衛生法を根拠として、事業者に実施が義務付けられている仕組みです。具体的には、従業員がストレスに関する質問票に回答し、その結果から自身の現在のストレス状態や職場に潜むストレスの要因を客観的に把握する検査のことを指します。

これまでは特定規模の企業のみが対象とされてきましたが、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、労働者数が50人未満である事業場に対しても、新たにストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。制度の根幹には労働安全衛生法における「職場のメンタルヘルス対策の推進」に関する条文が存在しており、企業は単に検査を実施するだけでなく、法令に基づいた総合的な対策を推進することが求められています。

労働安全衛生法(心理的な負担の程度を把握するための検査等)

第六十六条の十 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。

 

以前までの仕組みとの違い

ストレスチェックの仕組みは、もともと従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことを主な目的として、2015年から「常時使用する労働者が50人以上」の事業場に対して実施が義務付けられていました。

一方、労働者数が50人未満となる小規模事業場については、以前はあくまで努力義務とされていました。しかし、今回の法改正によって小規模事業場においても、職場のメンタルヘルス対策をしっかりと講じていく必要が生じています。

50人未満の事業場におけるストレスチェックの義務化は、公布後3年以内に政令で定める日に施行されることになっています。最長で2028年5月までには、義務化がスタートする見込みです。

ただし、急激な制度変更による混乱を避けるため、小規模事業場については「50人未満の事業場の負担等に配慮し、施行までの十分な準備期間を確保する」という方針が明記されています。

ストレスチェック義務化に向けた準備

法令に基づく形でストレスチェックを適切に実施するには、あらかじめ周到な準備を整えることが欠かせません。ここでは、ストレスチェックの実施に向けて、企業が取り組むべき具体的な準備について解説します。

事業者による方針の表明

ストレスチェックを導入するにあたって第一歩となるのが、「事業者による方針の表明」です。事業者は、ストレスチェック制度の実施責任者として自社における制度の導入方針を明確に決定し、従業員に向けて表明する必要があります。

方針を表明するにあたって重要になるのが、従業員に対する配慮の姿勢です。従業員の立場に立って仕組みを形作っていかなければ、積極的に利用してもらえる環境は生まれにくいでしょう。

従業員に安心して制度を活用してもらえる仕組みとするために、プライバシーに最大限配慮するメッセージ等も、方針の中にしっかりと盛り込むことが求められます。

関係する従業員に意見を聞く

事業者の一方的な決定で制度を整えようとするのではなく、ストレスチェックの導入にあたっては、どのような実施体制や実施方法等を採用するかについて、事前に関係する従業員の意見を聞いておくことが大切です。なぜなら、ストレスチェックはあくまで従業員が自主的に受けるものであり、強制的に受けさせるものではないからです。

特に、新たに義務化の対象となる労働者50人未満の事業場においては、労働安全衛生規則第23条の2に基づき、安全または衛生に関して関係労働者の意見を聴く機会を設けることと規定されています。こうした手続を踏むことで、現場の実態に即した円滑な運用が可能となります。

労働安全衛生規則(関係労働者の意見の聴取)

第二十三条の二 委員会を設けている事業者以外の事業者は、安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければならない。

 

社内ルールの作成と周知

方針の決定と意見聴取が完了したら、次に運用ルールの策定を行います。事業者は、従業員からの意見聴取の結果を十分に踏まえた上で、ストレスチェック制度の社内ルールを作成して、すべての従業員に対して周知徹底させる必要があります。

社内ルールに盛り込むべき具体的な内容としては、実施体制や実施方法をはじめ、ストレスチェック結果の記録の保存方法、厳重な情報管理のあり方等が挙げられます。さらに、従業員からの情報開示・訂正等および苦情処理への対応手順や、受検したことによる不利益な取扱いの防止に関する規定等も、網羅的に定めておきましょう。

ストレスチェックを実施するための手順

ストレスチェックの実施に関する事前準備が整った後は、いよいよ実際の運用プロセスへと移行します。ここでは、法令を遵守しながらストレスチェックを実施するための具体的な手順について解説します。

ストレスチェック実施の手順

  1. 実務担当者を選任する

  2. 実施時期や対象者を決める

  3. 評価方法を確認する

  4. 外部機関との連携体制を整える

  5. ストレスチェックの実施

  6. 医師による面接指導と事後措置

  7. 集団分析と職場の環境改善に取り組む

メンタルヘルス不調者を減らすための取組について解説しています。

 

実務担当者を選任する

ストレスチェックの実施に向けて、まず社内または委託先の外部機関に依頼をして、制度運用の中核を担う実務担当者を選任する必要があります。従業員50人未満の事業場においては、基本的に外部機関に依頼をするほうが無難だといえるでしょう。

なぜなら小規模な組織では、従業員のプライバシー保護が課題となりやすいからです。国の指針としても、ストレスチェックの実施そのものを専門の外部機関に委託することが推奨されています。

外部機関を活用することで、情報の秘匿性を担保しながら円滑な運用を進めることができます。

実施時期や対象者を決める

実務担当者が決まったら、次に具体的なストレスチェックの実施時期(年1回)や対象者を決定します。実施のタイミングについては、企業が毎年行っている定期健康診断と併せて実施すると、従業員の手間が省け効率が良いでしょう。

一方、定期健康診断を一斉に実施していない事業場の場合は、業務の繁閑等を考慮して、ストレスチェックをいつ行うのが最適であるかを慎重に検討してみましょう。

評価方法を確認する

続いて、ストレスチェックの調査票(使用する項目や調査形態)や高ストレス者の選定方法について決定します。調査票の項目については各企業で選定可能ですが、一般的には厚生労働省が公表している「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」にある、職業性ストレス簡易調査票を利用することが推奨されています。

調査票の項目を一から考えるというより、国が提供しているマニュアルの内容を踏まえた上で、自社に必要な項目を付け加えていったほうが、より信頼性の高い客観的な評価が可能になるはずです。

外部機関との連携体制を整える

ストレスチェックの実施に関する実務を委託する場合、外部機関と契約をする時には、あらかじめサービス内容について詳細な説明を求めることが重要です。具体的には、実施体制、実施方法、料金体系、面接指導の有無、情報管理の基準等を事前にしっかりと確認しておきましょう。

また、医師による面接指導の依頼先についても、ストレスチェックの委託先の外部機関が、メニューの一つとして一括で提供していることがあります。さらに、従業員50人未満の事業場における医師の面接指導の実施については、最寄の地域産業保健センターに依頼して、無料で受けることができる制度もあるため、これらの活用も視野に入れておきましょう。

ストレスチェックの実施

実施体制が整った後、実際の検査を行っていきます。運用の流れとしては、委託先の外部機関がストレスチェックの調査票を従業員に対して直接配布し、回収するという手順を踏むことが一般的です。

実施期間中、未受検者への受検勧奨を行う必要が生じますが、これには委託先の外部機関が直接行う方法と、事業者が自ら行う方法があります。ただし、受検を促す際、業務命令のような形で強要するようなことがないように、十分注意しておきましょう。

医師による面接指導と事後措置

検査の結果に基づく事後措置も、きちんと取り組んでいく必要があります。事業者は、面接指導の対象者から申し出があった時は、遅滞なく面接指導を実施しなければならないという義務があることを押さえておきましょう。

手順として、事業者はまず面接指導を担当する医師と、対象者との面接指導の日程調整を行います。面接指導の実施に際しては、担当医師に対して労働状況等の必要な情報を提供しましょう。

また、面接指導の結果に関する記録は法令に基づき、5年間保存しなければならない点にも注意が必要です。

集団分析と職場の環境改善に取り組む

個人のケアと並行して、組織の状況を把握することも重要です。ストレスチェックの実施結果の労働基準監督署への報告は、労働者数50人以上の事業場に義務付けられていますが、労働者数50人未満の事業場は不要であり、あくまで努力義務とされています。

ただ、注意しておきたい点として「事業場」の定義が挙げられます。事業場は原則として、工場、事務所、店舗等、同一の場所にあるものを一単位の事業場として考えるのです。

そのため、同一企業であっても、場所的に分散している場合は別個の事業場として扱われる点に注意が必要です。

ストレスチェックを円滑に実施するためのポイント

ストレスチェックの仕組みを形骸化させずに、円滑に運用していくためにはいくつかのポイントが存在します。どのような点を意識しながら実施していけば良いかを具体的に見ていきましょう。

制度の目的を理解して方針を決める

ストレスチェックの実施において大事なポイントは、実施者が労働安全衛生法の主旨を深く理解して、ストレスチェックを適切に実施する姿勢を持つことです。義務化への消極的な対応ではなく、職場環境の改善につなげていくことが大切だといえます。

実施にあたっては、対象者の範囲や実施頻度、高ストレス者への対応等についてしっかりと方針を定めておきましょう。企業として従業員の心身の健康を守るための取組であることを明確に伝えるために、トップ主導で方針を決めることが重要になります。

個人情報の取扱いに気をつける

ストレスチェックで得られる情報は、個人のプライバシー情報です。調査票やストレスチェックの結果、面接指導の記録等は従業員のプライバシーにかかわる情報なので、その取扱いには細心の注意を払う必要があります。

実施者や実施事務従事者には、法令により厳格な守秘義務が課されています。本人の同意なく、これらの情報を第三者に開示してはならないというルールを徹底させましょう。

不利益となる対応をしない

従業員が安心して制度を利用できる環境づくりも大切です。ストレスチェックは従業員が自発的に受けるものなので、企業側が受検を強要したり、未受検者を人事評価等で不利に扱ったりしてはなりません。

また、高ストレス者であることを理由に、本人の同意なく一方的な配置転換をする、あるいは解雇や退職を迫るなどの行為を行ってもいけません。従業員にとって不利益になる対応をしないことについて、管理職を含めてきちんと共有しておきましょう。

分析結果を職場環境の改善につなげる

ストレスチェックの実施そのものが目的ではなく、結果を分析して職場環境の改善につなげることが何よりも重要です。職場環境の改善に向けたアプローチに加え、従業員向けには、ストレスへの対処法を学ぶセルフケア研修の実施も有効な方法となります。

企業においては改善プロセスを見える化し、組織全体で継続的にメンタルヘルス対策に取り組んでいく姿勢が求められるといえるでしょう。

ストレスチェックを活用した取組について解説しています。

 

外部機関と上手く連携を図る

ここまで述べたように、ストレスチェックに関する業務は、実施計画の策定から集団分析、改善施策の実行、さらには高ストレス者の対応まで多岐にわたります。人的リソースの観点からも、社内ですべての業務に対応するのは難しい面もあるでしょう。

そのため、専門的な知見を持つ外部機関とよく連携をしながら、実施や改善を並行して進めていくことが大切だといえます。

まとめ

労働者数50人未満の事業場にもストレスチェック義務化が適用されることは、企業規模にかかわらず従業員のメンタルヘルスを守ることが社会的に求められているといえます。ストレスチェックは法令遵守にとどまらず、働きやすい職場環境の構築や企業の生産性向上に直結する重要な施策です。

企業規模に応じて外部機関のサポートも上手く活用しながら、計画的に準備を進めていきましょう。自社にとって適したメンタルヘルス対策を実施し、組織全体の活性化につなげていくことが大切です。

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