政府有識者会議が技能実習に代わる制度案を公表、外国人労働者の転職制限を緩和

2024年2月14日

人権

技能実習制度の新制度創設を求める最終報告書案を公表

政府の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が2023年11月24日、技能実習制度の廃止と新制度の創設を求める最終報告書案を公表しました。

それによりますと、新制度は「育成就労制度(仮称)」で、制度の目的は「人材の確保と育成」に変わりました。現技能実習制度は、途上国への技術移転による国際貢献を名目にしていました。新制度では、実態に近づき外国人労働者の受け入れる枠組みの性格が明確になりました。現行の技能実習制度では原則禁止の転籍(転職)が、1年を過ぎれば同一分野の範囲内で可能になります。転職が極めて困難だった現制度と比べると、制限が一定緩和されます。外国人労働者の行動を制限し、搾取や差別的行為の人権侵害の温床になりやすいなどの批判に配慮しています。一方で、転職が容易になることで、地方や中小企業から人材が流出するとの懸念に考慮し、「当分の間は分野によって1年を超える転籍制限を認める経過措置を検討する」としています。

転職が容易になる一方で、外国人労働者がだまされるなどのリスクが高まることも懸念されます。そこで労働者の人権保護のため、現制度の監理団体に加えて、ハローワークや外国人技能実習機構が連携するよう提言されました。

また、現制度では、実習生が来日の際に現地の送り出し機関やブローカーに多額の手数料を支払い、その借金の返済に追われるなどの問題も指摘されています。報告書では、そうした負担を軽減するため、ブローカーや送り出し機関手数料の透明化や受け入れ企業が一定負担する仕組みの導入などを提言しました。

外国人技能実習制度は、本来の目的である「技術移転による国際貢献」が薄れ、割安な労働力の供給機能としての実態が顕在化しています。受け入れ企業における実習生への賃金支払いのトラブルや人権侵害事案が多発しており、米国国務省による人身取引報告書内でも実態を批判されるなど問題視されてきました。

政府は、2024年通常国会に関連法案を提出する予定です。

MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2023年12月(第9号)を基に作成したものです。

【参考情報】

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