環境省が「ネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップ(2025-2030年)」を策定、ネイチャーポジティブ経済の実現に向け期待されるアクションを整理

公開日:2025年11月21日

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環境省は2025年7月31日、「ネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップ(2025-2030年)」を公表しました。ネイチャーポジティブ(NP)経済の実現は2023年5月に閣議決定された「生物多様性国家戦略2023-2030」の基本戦略の一つで、ロードマップの実行を通じてNP経済への移行を加速させる狙いがあります。同ロードマップは「いつまでに、何をすべきか」の全体像が具体化されており、ネイチャーポジティブ経済の実現に向けた国の施策の方向性と、企業・金融機関・投資家・消費者・地域等を含むステークホルダーに期待するアクションが整理されています。

ネイチャーポジティブ経済とは

NP経済とは「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させること(=ネイチャーポジティブ)に資する経済」のことを指します。近年は自然資本の劣化に伴う経済への悪影響が懸念されており、持続可能な経済活動の実現には自然資本の保全も織り込んだ事業経営、すなわちNP経営への移行が急務となっています。

こうした背景から2024年3月に環境省・農林水産省・経済産業省・国土交通省の4省庁連名で「NP経済移行戦略(注1)」を策定しました。同戦略では、NP経営による取組が単なるコストアップではなく、自然資本に根ざした経済の新たな成長につながるチャンスであることが強調され、実践が促されました。

今回公表されたロードマップでは、詳細に書き起こされたNP経済移行後の絵姿と現状のギャップを整理し、今後進めるべき取組の方向性が示されています。

NP経済の実現にあたっては国の施策だけでなくステークホルダー(企業・金融機関・投資家・消費者・地域等)の連帯が重要と捉えられていることから、ロードマップでは国の施策を主軸としつつ、各主体に期待するアクションが挙げられています。今後の取組の方向性は以下の3つの視点から整理されています。

視点1
ランドスケープアプローチ(注2)の観点から地域の自然資本を活かしたNPな地域づくりを実現(企業価値と地域の価値を併せて向上、地域活性化に繋げる)

視点2
自然資本の環境価値を活用した経済全体の高付加価値化、情報開示促進およびNPの拡大により、NP経営実践の拡大・深化を図る

視点3
NP取組を進める日本企業の国際的競争力の強化のため、産官学の連携の下、自然資源の調達や土地利用の在り方を含めた自然領域のルールメイキング等に積極的に関与・主導する

例えば上記の視点1における具体的な取組の方向性として、自然共生サイト(注3)に関する情報や自治体ごとの保全状況・目標等が分かる「生物多様性『見える化』マップ」の機能拡充(国の施策)や、多様な主体を巻き込んだNPな地域づくりの推進(魅力的な暮らしの場の提供、地域の特産品のブランド化等、各主体に期待される取組)等が挙げられています。ロードマップではこうした取組を推進するタイムラインの全体像も示されています。

ロードマップでは、金融機関や投資家に対して期待するアクション(上述の視点2に対する取組)として「NP経営が企業価値向上において重要な要素であると認識した上で企業と対話し、投融資判断においてNP視点を織り込む」ことを挙げています。

昨今は数多くの企業がTNFD提言に基づく情報開示を通して自社事業の自然関連課題(注4)を把握し開示していますが、こうした情報開示は今後5年間で投融資を判断する際の一要素としてさらに重要視されるようになるでしょう。

NPに資する取組を単なるコストアップではなく、新たな成長機会と捉える姿勢がこれまで以上に肝要になると考えられ、自然資本の保全もマテリアリティに組み込んだ経営体制の整備が推奨されます。

(注1)ネイチャーポジティブ経済移行戦略
(注2)ランドスケープアプローチとは、一定の地域や空間において、主に土地・空間計画をベースに、多様な人間活動と自然環境を総合的に取り扱い、課題解決を導き出す手法のこと。
(注3)自然共生サイトとは、民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域のこと。
(注4)自然関連課題とは、自然関連の依存・インパクト、リスク・機会のこと。

参考情報:2025年7月31日付 環境省HP

MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2025年9月(2025年度第6号)を基に作成したものです。

 

認識が低調な「生物多様性」の現状について解説しています。

MS&ADインターリスク総研株式会社

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