「ネイチャーポジティブ」普及で宣言呼びかけ、「生物多様性」の知名度低調で挽回狙う

公開日:2024年2月9日

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環境省と経済団体や学識者、関連団体等で構成する「2030 生物多様性枠組日本会議(J-GBF)」が2023年10月13日、企業や地方自治体、NGO等に「ネイチャーポジティブ宣言」の登録を呼びかけるホームページを立ち上げました。

認識が低調な「生物多様性」の現状を挽回

2022年開催の国連生物多様性条約締約国会議(COP15)で採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組みの目標達成に貢献するのを目的に、国内での認識が低調な「生物多様性」の現状を挽回し、取組に前向きな気運の醸成を狙うものです。

登録の主体は企業や自治体等を想定しています。賛同する場合は、環境省の運営する専用ポータルサイト*に登録します。登録の対象は、「ネイチャーポジティブを目指す意図を含む宣言」で、ネーミングやフォーマット、策定プロセス等は自由です。ただし、「生物多様性国家戦略2023-2030」に含まれる5つの基本戦略のうち、少なくとも1つに該当する内容を含むことを宣言の要件としています。この要件に該当するものであれば、新たに「宣言」を作成しなくても、既存の方針等も対象になります。ちなみに、J-GBFは、「ネイチャーポジティブ」を「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」ことと定義しています。

「宣言」に、少なくとも1つに該当する内容を含むことが必要な、生物多様性国家戦略の「基本戦略」は以下のとおりです。
1. 生態系の健全性の回復
2. 自然を活用した社会課題の解決
3. 生物多様性・自然資本によるリスク・機会を取り入れた経済
4. 生活・消費活動における生物多様性の価値の認識と行動
5. 生物多様性に係る取組を支える基盤整備と国際連携の推進

J-GBFは行動計画**で、2030年度までに「生物多様性の保全につながる活動への意向を示す人の割合を9割とする」との目標を設置。宣言する企業や自治体等を増やすことで目標達成を目指したい考えです。

ただ、国内で「生物多様性」の理解が進んでいるとは言えないのが現状です。例えば、内閣府の「生物多様性に関する世論調査」(2022年7月)によると、「自然に非常に関心がある」・「関心がある」と答えた合計が75.3%だったのに対し、「『生物多様性』の意味を知っていた」は29.7%に留まっています。

J-GBFや環境省は、各組織の取組のきっかけに宣言の活用を促したい考えで、例えば、自治体で生物多様性地域戦略の策定が難しい場合等を想定しています。その上で、宣言を行った組織の取り組みの質向上を図るため、国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)による段階認証制度の創設や実行支援などを検討しています。

MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2023年12月(第9号)を基に作成したものです。

なお、同社ではネイチャーポジティブに関連した以下の無料オープンセミナーを2024年2月26日に開催します(WEB配信)。

 

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