パスワードポリシーとは?多要素認証とは?中小企業がおさえるべきセキュリティの基礎知識

公開日:2026年1月26日

サイバーリスク

社内のセキュリティ管理を行う上では、関連する用語を適切に理解しておく必要があります。この記事では、パスワード管理に関する「パスワードポリシー」と、認証方法の一種である「多要素認証」について、用語の意味や重要性を中心に解説します。

また、パスワードポリシーの設定や多要素認証の導入に際して、特に注意しておくべきポイントも詳しく見ていきましょう。

パスワードポリシーとは

「パスワードポリシー」とは、ユーザー認証時に使うパスワードについて、満たすべき基準や条件を規定したものを指します。「パスワード管理ポリシー」とも呼ばれ、基本的には基準が厳格であるほど、セキュリティ性も向上すると考えられています。

一般に普及しているサービスでも広く用いられており、例えばITシステムや金融システム等のセキュリティ管理が代表的な用途です。

パスワードポリシーの例

パスワードポリシーでは、以下のような要素をもとにセキュリティ性を検討します。

・長さ、文字数
・複雑さ(使用する文字の組合せ)
・更新頻度
・再利用期限
・初期パスワードの変更の有無
・連続文字の禁止
・個人情報と同じ文字列(誕生日や電話番号)の禁止
・よく使用される文字列(「password」等)の禁止

長さや文字数は「最低8文字以上」、複雑さは「大文字・小文字・数字を1文字以上組み合わせる」のように設定します。それ以外にも、更新頻度(1年に1回等)や連続文字の禁止(0000等)等の基本ルールを定めることが多いです。

また、多くのITシステムでは、セキュリティ性を確保する意味から、一度設定に利用したパスワードの再利用を制限しています。これらの要素を組み合わせ、適切なラインまで複雑化していくのがパスワードポリシーの基本的な考え方と言えるでしょう。

多要素認証について解説しています。

 

パスワードポリシーの重要性

パスワードポリシーは、各ユーザーが適切なパスワードを設定し、不正アクセス等のサイバー攻撃を回避するために重要です。特に近年では、不正アクセスを原因とするサイバー犯罪が増加しており、パスワードを含めたセキュリティ管理がますます重視されています。

警察庁の『令和7年版 警察白書』によれば、不正アクセス禁止法違反として検挙した不正アクセス行為の手口別内訳において、もっとも多いパターンが「識別符号窃用型」(511件/90.8%)となっています。識別符号窃用型とは、他人のパスワード等を無断で入力する手口のことです。

さらに、警察庁の『令和7年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』によれば、識別符号窃用型に関する手口のうち、もっとも多い割合を占めているのは「パスワードの設定・管理の甘さにつけ込んで入手」とされています。このように、パスワードポリシーはサイバー犯罪から身を守る上でも、重要な取組と言えるでしょう。

 

企業の実際の被害事例から、不正アクセスについて解説しています。

 

パスワードポリシーを設定する際の注意点

パスワードポリシーを設定する上では、いくつかおさえておくべき注意点があります。ここでは、特に重要性の高いポイントを2つに分けてご紹介します。

過度に厳格な設定を行わない

セキュリティ面を考えれば、パスワードポリシーが厳格であるほど安全性は高まると言えます。単純に比較しても、パスワードの文字数が多い方が、外部から推測されるリスクは低下します。

しかし、あまりにも厳格すぎるパスワードポリシーは、従業員や利用者の負担増加につながり、利便性を損なう恐れがあるので注意が必要です。また、複雑なパスワードになれば、「付箋にパスワードをメモする」「フリーのパスワードマネージャーが使われる」等、かえってリスクを高める結果にもなり得るでしょう。

そのため、パスワードポリシーを考える上では、「セキュリティ」と「管理のしやすさ」の両面を意識することが重要です。

定期的な更新は逆効果にもなり得る

現在のセキュリティ基準においては、パスワードそのものの安全性が十分であれば、無理に更新する必要はないというのがスタンダードです。総務省の「国民のためのサイバーセキュリティサイト」によれば、従来は定期的なパスワードの変更が推奨されてきたものの、現在では特に必要がないとされています。

そもそも、更新頻度が高すぎれば、パスワードの使い回しや利用者の混乱を招く恐れがあります。また、外部サービスの場合は、過度な変更要求がユーザー離れを招く恐れもあるでしょう。

そのため、実際にパスワードが破られるなどの事実がない場合は、無理にパスワードを変更する必要はありません。これについては、2017年に米国国立標準技術研究所がガイドラインとして、「サービス提供側がパスワードの定期的な変更を要求すべきでない」旨を示したほか、国内でも内閣サイバーセキュリティセンターから、「パスワードを定期変更する必要はない」との旨が示されています。

 

個人情報の漏えいについて解説しています。

 

パスワードのみでの認証の限界

これまで見てきたように、セキュリティ対策の面では、パスワードポリシーの設定によるパスワードの強化が重要であるのは確かです。推測されやすいシンプルなパスワードが、サイバー犯罪を引き寄せてしまうのはデータでも明らかであり、厳格な管理は引続き必要不可欠と言えるでしょう。

一方で、現代はITツールやクラウドサービス等の普及により、個人レベルで管理しなければならないアカウント数が増えているのも現状です。すべてのパスワードを正確に覚えておくのは難しく、実際にはどこかに記録をしたり、メモを残したりするケースも少なくありません。

その結果、意図せず流出してしまうリスクは必然的に高くなります。また、複数のツールやシステムでパスワードを使い回せば、同じパスワードを使用している対象が丸ごとリスクにさらされ、大きな損害につながる恐れもあるでしょう。

そのため、人間の記憶に頼ったパスワード認証には限界が近づいているとも言われています。

多要素認証とは

パスワード認証の限界が認知されるなかで、新たなセキュリティ対策として導入されているのが「多要素認証」と呼ばれる認証方法です。多要素認証とは、「認証の3要素(知識情報・所持情報・生体情報)」のうち、2つ以上を組み合わせて認証する方法を指します。

ここでは、具体的な仕組みについて見ていきましょう。

知識情報

「知識情報」とは、本人しか知り得ない情報のことです。具体的にはIDやパスワード、キャッシュカードの暗証番号等が知識情報にあたり、本人であることを証明するための重要な情報となります。

また、事前にユーザー自身が設定した「秘密の質問と答えの組合せ」も知識情報の一種にあたります。知識情報は誰でも簡単に設定できるため、コストをかけずに手軽に利用可能な点が特徴です。

しかし、いかなる場合でも本人しか知り得ないとは限らず、第三者に漏えいされれば誰でも扱える信用性の低い情報となってしまいます。また、ユーザー自身で確実に記憶しておく必要があるため、「覚えやすい数字にされやすい」「使い回しを招きやすい」といったリスクも生まれやすいです。

所持情報

「所持情報」とは、ユーザーが所持しているものを利用した認証情報のことです。具体的には、ICチップが搭載されたカード、マイナンバーカード、スマートフォン等の端末を用いたアプリ認証等が挙げられます。

また、ワンタイムパスワードもシステムに紐づけられた端末を持っていなければ入力できないため、所持情報の一つとされます。所持情報はマイナンバーカードに代表されるように、行政サービスにおいても広く用いられている認証要素であり、ほかに代替できるものがないため、一定以上のセキュリティレベルが期待できるのがメリットです。

その反面、カードや端末を紛失すれば、重大なリスクにさらされてしまうのが難点です。また、スマートフォン等のデバイスを認証に用いる場合、端末が手元になければ利用できません。

例えば、「自宅に端末を忘れたために仕事用のシステムにログインできない」といったケースも起こり得るため、利便性が下がってしまうのがデメリットと言えます。

生体情報

「生体情報」とは、ユーザー自身の身体を用いた認証方法のことです。具体的には、顔認証や指紋認証等が挙げられ、既にスマートフォンやネットバンキング等で広く利用されています。

また、近年では読み取り機器の発達により、声紋認証や虹彩認証、静脈認証等も実装され始めるなど、多様な生体情報が認証に用いられています。生体情報は複製やなりすましは極めて難しく、紛失等のリスクがないのが大きな特徴です。

そのため、3つの認証要素のなかでは、もっとも安全性が高い認証要素とされています。ただし、情報の読み取りには専用機器の導入が必要であるため、コストパフォーマンス面は懸念されるところです。

また、ユーザーが眠っている間等に第三者に悪用されるリスクもないわけではないため、絶対に安全であると過信すべきではありません。

二段階認証と多要素認証の関係性

セキュリティ強化のための施策としては、多要素認証のほかにも「二段階認証」が挙げられます。両者は混同されやすい言葉ですが、実際にはまったく異なる意味を持っています。

二段階認証とは、その名のとおり、二段階に分けて行う認証方式のことです。例えば一段階目ではID・パスワード、二段階目では秘密の質問と答えを入力させるといった方法を指します。

上記の例のように、二段階認証では必ずしも異なる認証要素が用いられるとは限りません。パスワードと秘密の質問・答えのように、どちらも知識情報を用いるケースも多く、この場合は二段階認証かつ単要素認証にあたります。

一方、パスワードと顔認証のように、二段階の認証でそれぞれ異なる認証要素を用いる場合は、二段階認証かつ多要素認証となります。反対に、多要素認証が行われる際には、必然的に認証ステップも二段階以上となるため、両者が同じような意味で用いられるケースも多いです。

中小企業の情報セキュリティに関する調査について解説しています。

 

 

多要素認証の導入が進んでいる背景

多要素認証は異なる要素を組み合わせることで、セキュリティ性を大幅に向上させられるのがメリットです。そのため、近年ではさまざまな行政サービスやクラウドサービス等で、多要素認証を導入するケースが増えています。

ここでは、導入が進んでいる背景について、3つのポイントから見ていきましょう。

パスワードオンリーの脆弱性

多要素認証がスタンダードになりつつある1つめの理由としては、先ほどもご紹介したパスワード管理の限界が挙げられます。現在は1人で複数のシステムを同時利用するケースが多くなっているため、個々のパスワード強化を図ろうとすれば、いたずらにユーザーの負担を増やしてしまうリスクがあります。

結果として、使い回しや流出のリスクが高まるため、パスワードのみに依存しない管理の必要性が高まっていると言えるでしょう。多要素認証を導入することで、単一要素による脆弱性が解消され、無理なくセキュリティ性を高められるようになります。

サイバー攻撃の増加・高度化

警察庁の「令和7年版 警察白書」によれば、サイバー犯罪の検挙件数は年々増加しています。特に近年では、組織化されたサイバー犯罪も増えており、手口が高度化しているのが現状です。

さらに、警察庁の「令和7年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によれば、直近のサイバー犯罪は未成年によるものも増えているのが特徴とされています。実際に2025年上半期に不正アクセス禁止法違反で検挙された119人の被疑者のうち、49人(約41%)が14歳~19歳であるなど、低年齢化も顕著となっています。

サイバー攻撃の増加・巧妙化に加え、幅広い年齢層が加害者・被害者となり得る現状にあっては、従来よりも厳格なセキュリティ管理が必要と言えるでしょう。こうした状況も踏まえ、多要素認証は重要な対策の一つと考えられています。

 

サイバー攻撃の種類や対策について解説しています。

 

働き方の多様化

働き方改革の一環として、リモートワークの普及が進んだことも、多要素認証の重要性を高める結果につながっています。オフィス以外のさまざまな環境で仕事ができるようになったことで、ネットワークのエンドポイントも多様化しました。

社内の限定されたネットワークを飛び出し、さまざまな環境で端末が利用されるようになったことで、脅威にさらされる可能性も高まっているのが実情です。サイバー攻撃のなかには、従業員の端末を経路として企業全体のネットワークに入り込むものもあるため、セキュリティ強化は喫緊の課題となっています。

多要素認証を導入すれば、従業員に過度な負担を与える心配なく、セキュリティ性を高めることが可能です。

 

多様な働き方について、具体例を解説しています。

 

多要素認証を導入する際のポイント

多要素認証の導入は、企業のセキュリティ対策として有効な取組となります。ここでは、導入時に意識すべきポイントを3つに分けて確認しておきましょう。

重要度の高いシステムから段階的に導入する

多要素認証を導入する際には、重要度の高いシステムから段階的に進めていくのがコツです。いきなりすべてのシステムに導入しようとすれば、現場に混乱を招き、従業員から反発されてしまう可能性もあるでしょう。

特に日常的に使用するシステムについては、認証方法を変えるだけで業務効率を低下させてしまう恐れがあります。そのため、全社的に展開するのではなく、まずは特定の部署やチームから運用をスタートしてみるのが良いでしょう。

そして、問題点の有無を明らかにしながら改善を進め、スムーズに導入できる仕組みを整えてから横展開していくのが安全です。

ワンタイムパスワードを活用する

多要素認証では、使用する認証要素を丁寧に検討する必要があります。認証要素のなかでも、「ワンタイムパスワード」は単独でセキュリティ強化につながりやすく、導入しやすいのが利点です。

ワンタイムパスワードとは、数十秒程度の短い間隔で生成される使い捨てのパスワードのことです。ワンタイムパスワードはシステム側が発行し、使い捨てのため覚える必要もありません。

記憶や管理の必要がないため、ユーザーに負担をかけずにセキュリティを強化できるのがメリットです。また、仮に流出してもリスクがないことから、既に多くのシステムで導入されている実績もあります。

そのため、認証要素の一つとして、ワンタイムパスワードを組み合わせてみるのもよい方法です。

従業員教育を徹底する

セキュリティ性を高めるには、システム面を強化するだけでなく、従業員教育を徹底することも重要です。管理職や正社員だけでなく、システムや端末に触れるすべての従業員を対象に、丁寧なセキュリティ研修を行いましょう。

特に端末の紛失があると、どれだけ認証システムを厳格化しても台無しになってしまいます。人為的なミスを防ぐためにも、日ごろから管理と教育、仕組みづくりに力を入れ、従業員が高い意識を保てるようにしましょう。

標的型攻撃メールについて解説しています。

 

まとめ

社内システムのセキュリティを強化するためには、パスワードポリシーを明確にし、パスワードを適切に管理することが重要です。しかし、単にパスワードポリシーを厳格化するだけでは利用者の負担を増やしてしまう可能性があるため、利便性とのバランスを考慮しながら検討しましょう。

また、セキュリティ性を高めるためには、多要素認証を導入するのも有効なアプローチです。全社的に導入しようとすると混乱を招く恐れがあるため、まずは重要度の高いシステムを選び、試験的に進めてみると良いでしょう。

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