製品事故発生時の対応のポイント

公開日:2026年3月11日

事故防止

相次ぐモバイルバッテリーの発煙・発火が大きなニュースとなり、ある事業者においては、対象台数が50万台規模となるリコールが行われています。消費生活用製品において、製品事故が発生した場合、企業のとるべき対応やその際の留意点は何なのか、本稿ではこれらを整理していきます。

製品事故発生時の対応

製品事故発生時において、対応すべきことは、大きく分けると以下の3つです。
①被害者対応
②製品事故報告
③リコール実施是非の判断

「リチウムイオン電池搭載製品」の事故の発生状況について解説しています。

 

①被害者対応

製品事故が発生し、人身被害や財産への拡大損害が発生している場合には、当該被害者に対してしかるべき謝罪対応が必要になります。自社製品起因はもちろんのことですが、自社製品起因であることが明らかではないとしても、社会的責任の観点で、被害者への対応が期待されます。

当該時点では事実が確定していない状況であることがほとんどですが、法的責任を意識するあまりに被害者対応が遅れることは避けなくてはいけません。迅速な対応が以後の各種対応において円満な解決にもつながる可能性が高まります。

②製品事故報告

製品事故とは「消費生活用製品の使用に伴い生じた事故のうち、一般消費者の生命又は身体に対する危害が発生した事故消費生活用製品が滅失し、又はき損した事故であって、一般消費者の生命又は身体に対する危害が発生するおそれのあるもののいずれかに該当するものであって、消費生活用製品の欠陥によって生じたものでないことが明らかな事故以外のもの(他の法律の規定によって危害の発生及び拡大を防止することができると認められる事故として政令で定めるものを除く。)」と規定されています。

当該製品の欠陥によって生じたものでないことが明らかでない限り、製品事故に該当します。当該製品に起因した事故か、そうでない事故かは、事実関係や原因が明らかになって初めて分かるところではありますが、ここでの対応上のポイントは、疑わしきは製品事故、ということです。
製品事故のうち、次の事象が発生している場合は、重大製品事故として製造事業者または輸入事業者は当該事故を知った時から10日以内に消費者庁に報告する義務があります(消安法第35条第1項及び第2項、施行規則第3条)。
・死亡事故
・重傷病事故(治療に要する期間が30日以上の負傷・疾病)
・後遺障害事故
・一酸化炭素中毒事故
・火災(消防が確認したもの)

本制度の趣旨は、関係機関への迅速な報告により、製品事故の拡大防止を図ることにあります。この制度趣旨に鑑みた対応が企業には期待されます。

③リコール実施是非の判断

発生した製品事故について、危害の程度と多発可能性を勘案した定量的評価と当該事案が与える当該企業およびステークホルダーへの影響の定性的評価を総合考慮し、リコール実施の是非を判断します。定量的評価においてはR-Map(注)をはじめとしたリスクマップを活用して評価を行う方法や、危害の大きさ別にリコール実施を判断する発生件数をあらかじめ決めておいて、その指標にあてはめて検討する方法等があります。

リコール実施が決定したのちは、リコール開始時点の決定と実施計画を策定していくことになります。一方、リコール実施の決定に至らない判断をしても、それはあくまでもリコール実施の判断を保留した状態に過ぎず、今後の状況を注視していく体制といかなる事象をリコール実施判断のトリガーにするか決めておくとよいでしょう。

消費生活用製品のリコール対応のあり方について解説しています。

事実確認・事案評価の重要性

上記①~③の対応を実現するためには、当該製品事故に係る事実確認と事案評価を適切に行うことです。

事実確認の際には、開発・設計から出荷までの各種情報、上市後の製品事故に至らなかった情報等を収集し、当該事案の全体を捕捉することが肝要です。この際、ワーストシナリオベースで確認すべき情報は、網を広げて収集しておくとよいです。

また、全体像の捕捉が速やかであればあるほど、当該事案の原因の推定や問題となっている製品の対象ロットの絞り込みも速やかに実施でき、①~③の各対応のスピードアップを図ることができます。

また、事案評価においては、過去の経験等に依拠したり、憶測や思い込みで評価することを排除していくことが重要であり、社外の有識者等の第三者の視点を確保している例もあります。

以上のとおり、製品事故が発生した場合の企業のとるべき対応とその際の留意点を説明してきました。これらを実現するためにも、関連する仕組み・ルールおよび付随するツール類の整備とそれらが機能できるように関係者に対する教育・訓練が必要になります。製品安全実現に向けて、企業は各種努力をしていますが、製品事故をゼロにすることは困難です。

製品事故が発生することを前提に、自社も含めたすべてのステークホルダーの損失の最小化に向けて、十分に準備をしておくことが企業には求められています。

重大製品事故発生の要因と施策について解説しています。

 

(注)一般財団法人日本科学技術連盟が開発した、リスクを6×5のマトリックス上で表現するリスクアセスメント手法。経済産業省や独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が製品事故のリスク評価に活用している。

MS&ADインターリスク総研株式会社発行のPLレポート(製品安全)2025年12月号を基に作成したものです。

MS&ADインターリスク総研株式会社

企業や組織のリスクマネジメントをサポートするコンサルティング会社です。
サイバーリスク、防災・減災、BCM/BCP、コンプライアンス、危機管理、企業を取り巻く様々なリスクに対して、お客さま企業の実態を踏まえた最適なソリューションをご提供します。

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