帝国データバンク公表「公租公課滞納倒産動向」
公開日:2023年12月27日
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「社保」「税金」滞納による倒産が急増しており、2023年は111件、過去最多となりました。
日本年金機構によると、厚生年金保険を含む社会保険料を滞納している事業所は、2022年度末時点で14万811事業所に上り、適用事業所全体に占める割合は5.2%を占めました。2022年度に比べて滞納事業所数は減少しましたが、依然として多くの企業が納付に苦慮する状態が続いています。
コロナ禍の「納付猶予」期限切れ後に破綻相次ぐ
社会保険料や各種税金の納付は、社会保障制度を維持・継続するために企業が公平に負う義務であり、差し押さえ等で事業継続に行き詰まる企業の増加を年金事務所等の責めに帰すことはできません。ただ、足元の円安や資源高による物価高等の影響も重なり、社会保険料の支払い催促に対して弁済可能な資金を有する中小企業は決して多くありません。社保や税金滞納分の支払い見込みが立たず、事業継続を断念するケースは今後さらに増えていくことが予想されます。
[注] 「公租公課滞納」倒産 [定義]
消費税や固定資産税等の各種「税金(公租・租税)」、厚生年金保険や健康保険等の「社会保険料(公課)」について納付ができない、または滞納状態が続いたことで自社の資産等を差し押さえられ経営に行き詰まった企業の倒産
社会保険料・税金等の「公租公課滞納」倒産が急増 2023年は111件、年間最多に
社会保険料や税金等の「公租公課」の滞納が要因となった企業の倒産が増加しています。多額に上る公租公課の滞納や延滞金の未納により、自社の預金口座や土地等の資産を差し押さえられ、経営に行き詰まった「公租公課滞納」倒産は、2020年から2023年の4年間で272件判明しました。このうち、2023年1-11月における発生は111件となり、全体の約4割を占めました。2022年通年の74件から1.5倍に増加したほか、支払いが猶予されていたコロナ禍の2020年(35件)からは3倍超に増えました。滞納した公租公課の区分では、特に企業業績が赤字であっても毎月支払う義務が生じる、厚生年金保険などの社会保険料の滞納が原因となったケースが目立ちました。
公租公課のうち、特に企業にとって負担の重い社会保険料は最長3年にわたる納付猶予措置が設けられ、企業の資金繰りを支えてきました。ただ、ポストコロナに向けて企業活動が正常化するなかで特例措置も順次縮小、年金事務所による厚生年金保険料等の差し押さえ件数は2022年度に2万7784事業所と、2021年度の4倍に達し、社会保険料等の滞納者に対する差し押さえ処分が本格化しています。そのため、コロナ禍で猶予された社会保険料の納付ができず、法的整理直前に差し押さえ処分を受けたパチンコホール業や、業績不振のなかで消費税と社会保険料の支払いに窮した、韓国食材スーパー・免税店運営業など、猶予期間中に業績を立て直すことができなかった企業の倒産が相次ぎました。
2020~2023年に発生した「公租公課滞納」倒産272件を業種別にみると、最も多いのは「サービス業」の68件で、特にソフトウェア開発等の業種で多く発生しました。トラック運送等の「運輸・通信業」や「建設業」(47件)、「製造業」(42件)等も40件を上回る水準でした。
態様別では、ほとんどのケースで破産等「清算型」の倒産が多い結果となりました。累計272件のうち、清算型の倒産が263件・96.7%を占め、再生型の倒産では民事再生法等の9件にとどまりました。
株式会社帝国データバンク発行の「公租公課滞納」倒産 (2023年12月7日)を基に作成したものです。