経産省が人権尊重ガイドライン案を公表、デューデリジェンスのプロセスを提示
公開日:2023年6月1日
人事労務・働き方改革
経済産業省は2022年8月8日、企業活動に求める人権尊重取組を提示した「サプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン案」を公表しました。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際的指針を踏まえつつ、日本で事業展開する企業の実態に合わせた具体的に解説を加え、一般の意見を募って内容を反映させた後に確定します。
企業が人権尊重責任を果たすための取組
ガイドライン案では、法的な拘束力はないとその特性を規定し、すべての企業を対象に積極的な活用を促すことを目的に置いています。その上で、企業が人権尊重責任を果たすための取組を、
①人権方針の策定・表明
②人権デュー・ディリジェンス(人権 DD)の実施
③人権への負の影響を引き起こすまたは助長している場合の対応
――の3つの分類に整理しているのです。
このうち人権DDは、自社に限らずグループ会社やサプライヤーも含んだ
▽人権への負の影響の特定・評価
▽負の影響の防止・軽減
▽取組の実効性の評価
▽どのように対処したかの説明・情報開示
――からなる一連の継続的なプロセスとの見解を示しています。加えて、その留意点も提示しています。
例えば、立場が脆弱な技能実習生などの外国人や障がい者は、社会的に弱い立場に置かれ、差別を受ける可能性が高いため、特別な注意を払うことが望ましいとしているのです。
また、人権侵害への関与を回避する場合の考え方についても例示しています。例えば、紛争地域での事業から撤退を判断する場合には、その撤退で消費者が必要なサービスを入手できなくなる恐れや失職する従業員が新たな職を得るのが困難など、ステークホルダーが受ける人権リスクを考慮した上で、慎重な責任ある判断が必要な点を強調しているのです。
企業の人権侵害防止の取組については、政府首脳が過去の記者会見で、整備が先行する欧州諸国などと同様に法律で義務化する可能性に言及しています。また、指導原則に則った人権 DDの実施が、グローバル企業に普及し、投資・融資の判断基準に対象企業の人権取組を盛り込む機関投資家や銀行も増えています。国際競争力の確保や企業価値の向上のため日本企業も対応は必須です。
MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2022年9月(No.6)を基に作成したものです。