リスクは認識するも対策は道半ば 日本損害保険協会「中小企業のリスク意識・対策実態調査2023」
公開日:2024年2月21日
経営に関する全般
一般社団法人日本損害保険協会は2023年12月、「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査 2023 調査結果報告書」を公表しました。
「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査 2023 調査結果報告書」
本調査は、中小企業の自社を取り巻くリスクに対する対応力と損保業界の対応力の強化に向けた対応策を検討するにあたり、①中小企業における自社を取り巻くリスクの認識状況、②中小企業におけるリスクへの対策状況、③中小企業において損害保険が十分に浸透しない真因、④中小企業への有効な情報提供方法を把握することを目的に2021年度から実施しており、多様化・複雑化するリスクに対する中小企業の意識、実際の被害内容や被害額、損害保険への加入状況等を調査しています。
調査の結果、対象企業の86.4%が事業活動を行う中で何らかのリスクを認識しており、そのうち84.6%が経営課題として関心があると回答しています。リスク別でみると、「経済環境リスク」への関心度が最も高く、「国際情勢」「知的財産権侵害リスク」「サイバーリスク」「顧客・取引先の廃業や倒産等による売上の減少」「情報の漏洩」と続きます。
出典:一般社団法人日本損害保険協会「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査 2023 調査結果報告書」を基に作成
一方で、各リスクの想定被害額は総じて低く、どのリスクにおいても「100万円未満」の回答比率が最も高くなっています。前述のリスクが顕在化した場合、その対処によっては億単位の損害が発生する可能性もあるため、中小企業においてリスクを定量的に評価していない実態が明らかになりました。
リスクを感じながら対策をしていない理由として「対策をする費用に余裕がない」(33.0%)、「具体的な対策方法がわからない」(25.7%)、「リスクによって生じる影響・損失が分からない」(22.6%)といった課題も明らかになりました。
リスクマネジメント手法の一つとなる損害保険の認知度は、火災保険(95.2%)、傷害保険(88.7%)、地震危険補償特約(84.8%)が高水準を維持しています。サイバー保険の認知度は、本調査開始時から10.3ポイント上がって46.9%となりました。
「今後加入したい損害保険は」の設問では、サイバー保険と情報漏えい賠償責任保険が上位に挙がっています(いずれも27.6%)。ただし関心度や加入状況となると総じて数値は減少しており、保険に加入していない理由は、「リスクが発生する可能性は低いと考えているため」が最も高く、次いで「対策をする費用に余裕がないため」「リスクによって生じる影響・損失が分からないため」が続いています。
サプライチェーンリスクの影響の大きさと対策の重要性がうたわれて久しいですが、認知度の観点では損害保険の浸透は進んでいるものの、保険加入によるリスク転嫁やその前後を固める対策・対応については道半ばのようです。
サプライチェーンリスクマネジメントの基本的な捉え方やサプライヤーとして取り組むべき事項、課題解決につなげるためのポイントを解説しています。
出典:一般社団法人日本損害保険協会「中小企業におけるリスク意識・対策実態調査 2023 調査結果報告書」を基に作成
MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2024年2月(第11号)を基に作成したものです。