シニア人材が活躍する職場づくり(1) 評価と処遇の検討ポイント

公開日:2026年2月4日

人事労務・働き方改革

わが国の総人口は、令和6年10月1日現在で1億2,380万人となっています。そのうち65歳以上の人口は3,624万人、29.3%を占めています。超高齢化社会として、「生産年齢人口」と言われる15歳から64歳の減少により人手不足感は年々強まっています。そのような状況の下、多くの企業にとってはシニア人材にいかに戦力として活躍してもらうかが、経営上の課題になってきています。
シニア人材が活躍する職場づくりをテーマとした2回シリーズの第1回として、今回は「評価と処遇の検討ポイント」について解説します。

65歳以上就業者数

超高齢化社会の中で65歳以上の就業者数は年々増加し、2023年には900万人を超え全就業者の約13%を占めるまでになりました。経団連(日本経済団体連合会)が作成した「高齢社員のさらなる活躍推進に向けて」(2024年4月16日)によると、日本における65歳以上の就業率は25.2%です。アメリカ18.6%、イギリス10.9%、ドイツ8.4%、フランス3.9%と比較すると、先進国の中で高い水準にあります。

このように日本では勤労意欲が高いシニア人材が多くいることから、シニア人材にモチベーションを高めながら活躍してもらうことが、人材不足に悩む企業への方策になると考えられます。

シニア人材の評価・処遇のこれまでの課題

上述の「高齢社員のさらなる活躍推進に向けて」(経団連)によれば、シニア人材の雇用における評価・処遇の面について、これまで以下のような課題があります。

① 職務・役割と賃金水準・賃金制度

多くの企業で、定年前と同じ職務を継続、あるいは同じ職務で役割や範囲等を縮小して割り当てています。一方で基本給や賞与・一時金は、職務の変更や人件費削減の観点、雇用保険の高年齢雇用継続給付の受給要件に適合させる等の理由で、定年後に支給水準を下げるケースが多くみられます。

そこで、職務・役割と賃金水準との乖離が生じ、シニア人材のエンゲージメントやパフォーマンスを低下させている可能性があります。

② 人事評価制度

シニア人材の人事評価を行い、評価結果について基本給への反映を行っている企業は5割未満です。また、本人へ評価のフィードバックを実施していない企業が2割程度存在します。
このようなことから、シニア人材にとって仕事の成果や目標の達成度合いを確認・実感しづらい可能性があります。

シニア人材については、能力やスキル、健康状況などの個人差が広がっています。会社が年齢により一律的に賃金水準を下げる一方で、個人の評価についてのフィードバック等がないような状況であれば、シニア人材のモチベーションを下げてしまっていると考えられます。

加齢に伴う身体能力や心身の主な変化

従来のシニア人材についてのイメージには、「加齢に伴って能力が低下していく」というものがあります。一般的には加齢に伴い能力は低下すると言えますが、全ての能力が一律に低下するわけではありません。加齢によってもあまり低下しない能力や、むしろ伸びる能力もあります。

体力の面では、全身持久力や動体視力などは大きく低下しますが、それ以外の能力についてはそれほどの低下はみられないことが多いのです。

知能の面では、記憶力などは大きく低下しますが、これまで培ってきた知識や経験を活かして問題を解決する能力は加齢による影響を受けにくいとされています。

性格の面では、外向性や新しい物事への関心は低下する一方、不安感や慎重さ、謙虚さ等は向上するとされています。
個人差や個別の事情も考慮する必要がありますが、以上のような点も参考として、シニア人材の活躍のあり方について検討してはいかがでしょうか。

シニア人材の活躍につながる評価・処遇

これまでの課題とシニア人材の特性を踏まえて、シニア人材の活躍を促すような評価や処遇の制度の在り方について、検討ポイントをご説明します。

① 本人の適性に合わせた適切な役割・働き方の設定

シニア人材については個人差・個別の事情が大きいことから、年齢など一律の基準で役割を設定することは、本人の活躍を妨げることになります。

会社として、シニア人材である本人の能力やこれまでの勤務評価や個別の状況に合わせて役割や業務内容を設定(選択)できるようにしましょう。これにより、本人の意識と担う業務のギャップが少なくなります。そして、モチベーションの維持向上につながることが期待できます。

特に重要なのは定期的に面談の機会を持ち、本人の状況を確認するとともに本人への会社の期待を伝えることです。コミュニケーション機会の充実が、本人のモチベーションを高めることにつながります。

② 業務内容に合わせた処遇

シニア人材について「業務内容にかかわらず一律に一定割合で給与水準を下げる運用」が行われているケースがよくあります。これにより、モチベーションが大きく下がっている可能性があります。

本人の能力や勤務評価に基づき、その人に合わせた役割や業務内容を設定するとともに、その役割・業務内容を反映した適切な水準の給与を支給することが、モチベーション維持向上のためには重要です。

また、雇用保険の「高年齢雇用継続給付金」の支給を受けることを前提として、給与水準を下げている企業もあります。この給付金の支給割合は2025年4月より15%から10%に引き下げられました。さらに近年の最低賃金の上昇により、給与水準を下げることに限界がきている企業もあります。このような高年齢雇用継続給付金の支給を前提とする給与設計については、見直す必要が出てきています。
それ以外にも、近年の物価対応のためのベースアップについては、シニア人材であっても状況は変わらないため、正社員と同様に行うことが望ましいと考えられます。

③ 評価

シニア人材については、契約社員・嘱託社員というような雇用区分として、正社員に適用している評価制度については対象外とする企業も多く見られます。このように評価や目標設定がない状態では、業務も惰性的となり活躍を阻害することになりかねません。シニア人材についても、各人の役割・業務内容に合わせた評価制度を適用することが望ましいと言えます。

現役世代と同様に働くシニア人材については現役世代同様に、ペースを落として働くシニア人材についてはそれ相応の内容で評価基準を設定するとよいでしょう。毎年評価を行い、基本給や賞与などの処遇に反映させていくことで、モチベーションのアップが期待できます。

シニア人材が活躍する職場

シニア人材についてはこれまでは、定年延長や定年後再雇用の観点からコストを抑えつつ雇用を維持するという観点で制度設計するような企業も多かったと思います。しかし、人手不足の現状においてシニア人材に活躍してもらうためには、従来の考えを大きく転換する必要があります。シニア人材の各人の特性に合わせて役割・業務内容を定め、適正に評価し処遇に反映させていくことが重要と考えます。

そのためには、シニア人材の特有の事情を踏まえ、本人の選択も尊重しながらシニア人材と会社がコミュニケーションを取って、Win-Winとなるように制度設計・運用していくことが大切です。

「シニア人材が活躍する職場づくり」の第2回は、「労務トラブル事例と予防策」について解説する予定です。

<参考リンク>
一般社団法人日本経済団体連合会「高齢社員のさらなる活躍推進に向けて」

社会保険労務士法人みらいコンサルディング

※三井住友海上では、外部専門家と連携し、企業・法人経営者の皆様に有益な情報を提供しています。

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