2022年、営業秘密侵害摘発件数が過去最多 警察庁まとめ

公開日:2023年9月4日

サイバーリスク

警察庁は2023年3月23日、「令和4年における生活経済事実犯の検挙状況等について」を公表しました。それによると、2022年内に全国の警察が摘発した企業情報の持ち出しなどの営業秘密侵害事件が前年比6件増の29件で、統計のある2013年以降で最多だったことが分かりました。検挙数は年々増加傾向にあります。営業秘密に対する企業の防衛意識の高まりや、雇用の流動化による転職の増加が背景と見られます。

営業秘密侵害の定義と対策

営業秘密漏えいの近年の増加傾向は、企業が情報管理体制の強化に取り組む重要性を補強しています。
営業秘密として法的保護を受けるためには、その定義にある「秘密管理性」、「有用性」、「非公知性」の三要件を満たすことが求められ、漏えい防止対策はこの三要件を踏まえて検討することが重要です。

また、営業秘密の漏えい防止対策は、その情報の特性に応じて、想定される情報流出のルートごと(従業員、退職者、取引先、外部者など)の検討が必要です。経済産業省が作成した「秘密情報の保護ハンドブック」では以下のような例が示されているので、参考にしてください。

営業秘密の漏えい防止対策を検討する際、物理的・技術的な対策に目が行きがちですが、それだけでは対策として限界があるため、組織的・人的な対策を含めた総合的な対策を指向することが望ましいです。具体的には、情報管理ルールを定めて適切に運用する、就業規則や誓約書により従業員や退職者に秘密保持義務を負わせる、情報管理に関する従業員教育を行うといった対応が必要です。特に、営業秘密として法的保護を受けるためには、営業秘密であることを従業員に明確に示し、その結果として従業員が企業の秘密管理意思(特定の情報を秘密として管理しようとする意思)を容易に認識できる必要があるため、従業員への周知・教育は重要といえます。

また、自社が他社の営業秘密を意図せず侵害しないよう、採用時に転職者が転職元との関係で負う秘密保持義務や競業避止義務といった義務の有無や内容を確認する、営業秘密を持ち込まない旨の誓約書を転職者から取得するといった対策の検討が必要です。

一方、サイバー攻撃などの高度化により情報漏えいは起こり得るという前提に立ち、営業秘密の漏えいが発生した場合の対応体制や対応事項、対応手順などを整備することが望ましいです。

営業秘密の漏えい対策に向けて、既存の情報管理体制に加えて上記のような取組を行うことで、より強固な体制を構築することが求められます。そのためには経営層が積極的に関与し、リーダーシップを発揮して、全社横断的な取組を推進することが期待されます。

【参考情報】

MS&ADインターリスク総研株式会社発行のESGリスクトピックス2023年5月(第2号)を基に作成したものです。

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