2025年に新設・継続されている補助金のポイントをわかりやすく解説

公開日:2025年3月31日

中小企業向けの補助金制度は、事業環境の変化や社会情勢に伴い、毎年細かな変更・調整が行われています。2025年度もさまざまな制度の変更や新たな制度の導入が予定されているため、できるだけ早い段階で情報収集を進めることが重要です。

今回は中小企業向けの補助金制度に焦点を当て、2025年に「新設されるもの」「制度の変更が行われるもの」「制度が拡充されるもの」の三つにテーマを分け、概要や利用条件をご紹介します。

2025年に新設される補助金制度

2025年に新設される代表的な企業向けの補助金制度には、「中小企業新事業進出補助金」と「中小企業成長加速化補助金」があります。ここではまず、それぞれの制度の内容と利用するための条件を見ていきましょう。

中小企業新事業進出補助金

中小企業新事業進出補助金とは、その名のとおり、新規事業をスタートする中小企業・小規模事業者を対象とした補助金制度です。中小企業や小規模事業者は、長期化する人手不足や物価の高騰に加え、最低賃金の引上げや働き方改革といった条件が重なり、特に厳しい経営環境に置かれているとされます。

単に現状を維持するだけでは、賃上げ等の社会的な要請に応えるのが難しいケースも多く、新たな競争力を確立する必要性が高まっていると言えるでしょう。こうした状況下で、中小企業の成長や事業開拓の支援を目的に作られたのが新事業進出補助金です。

具体的には、既存事業とは異なる新市場や、高付加価値事業への進出にかかる設備投資等の支援が目的とされています。既存の基金を活用して1,500億円規模の予算が組まれており、2025年の4月から、2年間で計4回の公募が想定されています。

基本要件

中小企業新事業進出補助金を利用するためには、企業の成長・拡大に向けた「新規事業への挑戦」を行った上で、次の要件を満たす必要があります。

1.付加価値額の年平均成長率が+4.0%以上増加
2.1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、または給与支給総額の年平均成長率+2.5%以上増加
3.事業所内最低賃金が事業実施都道府県における地域別最低賃金+30円以上の水準
4.次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等の基本要件をすべて満たす3~5年の事業計画に取り組むこと

まず、「新規事業への挑戦」とは、事業者にとって「新たな製品・サービスを新規顧客へ提供する新たな挑戦」と定義されています。そして、新規事業をスタートした上で、年平均成長率や最低賃金等の条件をクリアすることが要件となっています。

また、四つめの条件に規定されている「一般事業主行動計画」とは、企業が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備を進めるための計画のことです。従業員101人以上の企業には、既に行動計画の策定・届出、公表・周知が義務付けられていますが、新事業進出補助金を使う場合はそれ以下の規模の企業も対象となります。

なお、基本要件の2.と3.が未達の場合は、一部の例外を除き、達成できなかった割合に応じて補助金の返還が求められるので注意が必要です。

補助上限額

補助上限額は次のとおりです。

従業員数20人以下 2,500万円(3,000万円)
従業員数21~50人 4,000万円(5,000万円)
従業員数51~100人5,500万円(7,000万円)
従業員数101人以上 7,000万円(9,000万円)
※大幅賃上げ特例適用事業者(事業終了時点で1.事業場内最低賃金+50円、2.給与支給総額+6%を達成)の場合、補助上限額を上乗せ(上記カッコ内の金額は特例適用後の上限額)

補助下限は750万円となっており、補助率は経費の1/2と決められています。また、補助の対象となる経費としては、「建物費」や「構築物費」、「機械装置」といったハード面のものから、「システム構築費」、「技術導入費」、「クラウドサービス利用費」、「知的財産権等関連経費」のようなソフト面のもの、「専門家経費」、「運搬費」、「外注費」、「広告宣伝・販売促進費」のような費用まで幅広くカバーされているのが特徴です。

想定される活用方法

中小企業新事業進出補助金の対象事業としては、既存のノウハウや技術を活用した新事業への挑戦が想定されています。例えば、「機械加工業でのノウハウを活かして、新たに半導体製造装置部品の製造に挑戦する」「医療機器製造の技術を活かして蒸留所を建設し、ウイスキー製造業に進出する」といったケースです。

自社の強みをどのように発揮するのか、成長性のある分野へどのように舵を切るかが重要なポイントと言えるでしょう。

補助金申請~入金までのスケジュールや補助金フローの全体像等について解説しています。

 

中小企業成長加速化補助金

中小企業成長加速化補助金とは、売上高100億円をめざす中小企業等への設備投資や、中小機構による多様な経営課題(M&A・海外展開・人材育成等)の支援を目的とした補助金制度です。公募の開始は2025年5月頃となっており、その後に審査が行われ、8月以降に交付の決定、補助額の確定、補助金の支払いと進んでいきます。

また、補助事業終了後は知的財産等報告・事業化状況報告を行い、事業の効果測定と取組の事例化に協力する必要があります。

 

基本要件

中小企業成長加速化補助金を利用するには、以下の要件を満たす必要があります。

・投資額が1億円以上(税抜)※の中小企業者であること
・「売上高100億円を目指す宣言」を行っていること
・賃上げ要件等を満たす補助事業終了後3年間の事業計画書を作成・実行すること
※外注費・専門家経費を除く補助対象経費分

「売上高100億円を目指す宣言」とは、中小企業が「売上高100億円を超える企業になること」、「それに向けたビジョンや取組」を自ら宣言し、ポータルサイト上に公表することを指します。具体的には、「企業の現状」や「売上高100億円を実現するための目標」「実現に向けた施策・実施体制」等をまとめ、ポータルサイトを通じて幅広く宣言するという取組です。

宣言を行うことで、補助金活用の条件を満たせるだけでなく、経営者同士のつながりや自社PRにつながるといったメリットも期待されています。

補助上限額

補助金の上限額は5億円となっており、補助率は実際にかかった経費の2分の1とされています。補助対象となる経費は、建物費、機械装置等費、ソフトウェア費、外注費、専門家経費等が挙げられますが、条件の投資額には外注費・専門家経費等が含まれていないので注意しましょう。

想定される活用方法

中小企業成長加速化補助金は、既存のビジネスモデルを向上・拡張させ、収益の増加や賃金の引上げをめざすことを目的としています。そのため、主な活用方法としては、「工場、物流拠点の新設・増築」や「イノベーションの創出に向けた設備の導入」「自動化による生産性の向上」等が想定されています。

特に成長分野に足場を持つ中小企業にとっては、活用しやすい制度の一つと言えるでしょう。

2025年も継続される補助金制度の変更点

続いて、2025年も引続き活用できる補助金制度について、主な変更点を見ていきましょう。

小規模事業者持続化補助金(持続化補助金)

「小規模事業者持続化補助金」とは、小規模事業者が直面するさまざまな制度変更に対応するため、必要な取組等の経費を補助する制度です。2025年における大きな変更点としては、制度の原点に立ち返り、改めて「経営計画の策定」が重視されるようになったことが挙げられます。

そのために、複数設けられていた特別枠を整理・簡素化し、従来の一般型に組み込まれていた「卒業枠」「後継者支援枠」は廃止となりました。一方、新たに「共同・協業型」と「ビジネスコミュニティ型」が設けられ、それぞれ地域共同での販路開拓や、商工会・商工会議所との連携が重視される仕組みとなっています。

ものづくり補助金

「ものづくり補助金」とは、中小企業等の生産性向上をめざし、新たなサービスや試作品の開発、生産プロセスの改善に必要な投資を支援する制度です。もともとは「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」という名称で2013年にスタートした制度であり、名前や細かな仕組みを変えながら継続的に実施されています。

2025年においては、足元の賃上げ状況等を踏まえて、基本要件の見直しが行われることとなりました。具体的には、給与支給総額の年平均成長率の条件が、「+1.5%以上増」から「+2.0%以上増あるいは事業が行われる都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上」へと厳しくなります。

また、規模に応じた投資ニーズに応じるため、「従業員規模区分の見直し」と「補助金上限額の一部拡充」が行われました。さらに、最低賃金の引上げを進める事業者を対象に補助率をアップする「最低賃金引上げ特例の創設」や、収益納付義務の撤廃等により、より利用しやすい制度へ改正されています。

各種補助金の特徴や活用方法について解説しています。

 

IT補助金

ITツールの導入による業務効率化・生産性向上に活用できる「IT補助金」も、2025年に制度の仕組みが変更されます。具体的なポイントとしては、「補助対象経費の拡充」が挙げられます。

これまで対象とされてきたソフトウェア購入費・ハードウェア購入費(インボイス対応類型・複数社連携IT導入枠のみ)やクラウド利用料、導入関連費に加え、「保守サポートやマニュアル作成の導入関連費」や「IT活用の定着を促す導入後の活用支援」にも活用できるようになりました。

さらに、最低賃金近傍の事業者(3か月以上、地域別最低賃金50円以内で雇用している従業員数が全従業員の30%以上であることを示した事業者)に対して、補助率がこれまでの1/2から2/3へ引き上げられ、賃上げの取組が高く評価される仕組みとなりました。

また、セキュリティ対策推進枠については、補助額の上限が従来の100万円から150万円まで引き上げられ、補助率も小規模事業者においては1/2から2/3まで上昇します。

2025年に拡充される補助金制度

最後に、2025年にさらなる強化が予定されている補助金制度を三つピックアップし、それぞれの変更点をご紹介します。

業務改善助成金

「業務改善助成金」とは、生産性向上につながる設備投資に伴って最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、その投資費用の一部を助成するという制度です。2025年は2024年と比較して予算が8.2億円から22億円へと2.5倍に増え、それに伴って制度の内容も強化されています。

主な変更点としては、「最低賃金による助成率区分」の変更が挙げられます。2024年度に全国平均の最低賃金が1,055円まで引き上げられたことから、この水準に合わせて地域間格差を考慮し、「1,000円未満の事業場では助成率4/5(従来は3/4が上限)」「1,000円以上の事業場では助成率3/4」へと拡充されました。

そして、もう一つの変更点として挙げられるのが、「支援時期等の見直し」です。従来は年1回のみの申請と決められていたものの、「夏秋における賃上げ・募集時期の重点化」「特定時期の追加募集枠の設置」によって、より活用しやすい仕組みとなりました。
 
なお、労働関係助成金で段階的に廃止されていた「生産性要件」については、2025年から業務改善助成金においても廃止されることとなります。

中小企業省力化投資補助金

「中小企業省力化投資補助金」とは、IoTやロボット等の活用により、人手不足解消を図るために利用できる補助金です。従来はカタログに掲載されている製品を選び、導入する際に補助を申請する「カタログ方式」が採用されていましたが、自社に合った製品が見つかりにくいなどの難点を抱えていました。

そこで、2025年からは新たに「一般型」という枠が設けられ、汎用製品以外でもオーダーメイドでの省力化投資が行えるようになります。一般型の補助額は従業員数によって異なり、この点ではこれまでのカタログ方式と変わりません。

ただし、補助額はそれぞれ3倍程度引き上げられているため、活用の枠組みが広がっているのが大きな特徴です。なお、補助率については、事業規模に応じて「中小企業が1/2」、「小規模事業者が2/3」となっており、補助金額が1,500万円を超える部分については「一律で1/3」と決められています。

事業承継・M&A補助金

「事業承継・M&A補助金」とは、事業再編や事業統合、事業承継等の際にかかる費用の一部を補助し、スムーズな成長を促すための制度です。2025年は従来の「事業承継促進枠」「専門家活用枠」「廃業・再チャレンジ枠」に加え、「PMI推進枠」が新設されました。

PMI推進枠とは、M&Aが行われた後の経営統合に必要な費用を支援する補助金であり、経営資源の統合を円滑に進めるための枠組みです。補助区分は専門家への委託に活用できる「PMI専門家活用類型」と事業統合投資に活用できる「事業統合投資類型」の二つに分かれており、前者は「補助金額上限150万円、補助率1/2」後者は「補助金額上限800~1,000万円、補助率1/2または2/3」となっています。

また、事業承継・M&A補助金では、既存の枠組みにおいても補助上限の引上げが行われています。特に、専門家活用枠の買い手支援類型では、売上高100億円を超えるなどの条件を満たす場合の補助金額が、最大で2,000万円にまで引き上げられています。

まとめ

2025年の中小企業に関連する補助金制度は、引続き生産性や競争力の向上、持続可能性の追求を支えることを目的としています。新たな補助金や制度変更があった補助金を利用する際には、細かな利用条件をチェックし、制度の目的と自社の現状が合致しているかを丁寧に見極める必要があります。

特に賃金の引上げはほとんどの制度の基本目的・条件となっているため、補助金を申請する際には、賃上げを前提に改革を進めることが重要です。自社の実情を踏まえて、賃上げを実現するための具体的なアプローチを検討しておきましょう。

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