グリーン成長枠とは?事業再構築・ものづくり補助金における概要を徹底解説!

公開日:2024年3月29日

脱炭素

助成金・補助金

コロナ禍以降多くの企業が業績の回復や企業の継続的発展のため、様々な新規事業の立ち上げ等の事業展開を模索・検討しています。そうした中で新規事業の開発や展開にかかる経費の軽減を図ることができる様々な補助金等が用意されています。

今回はその中から、経済産業省が中心となり、関係省庁と連携して策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」に着目し、グリーン成長枠や省力化(オーダーメイド)枠が設けられている事業再構築補助金とものづくり補助金をご紹介していきます。

補助金を申請するには、事前に定められている必要な条件を満たさなければなりませんが、新たな事業に取り組もうとする企業にとって大きな支援策となるでしょう。ではまず、グリーン成長枠の基本的なポイントと各補助金制度の概要を解説していきます。

補助金事業のグリーン成長枠とは

補助金事業のグリーン成長枠とは、国が掲げるグリーン成長戦略における14分野の課題解決に関する取組を実施する事業者を対象とする補助金の申請枠を指します。グリーン成長戦略は、経済産業省が中心となり、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」に基づくものであり、産業政策・エネルギー政策において成長が期待されている分野の実行計画として定められています。

グリーン成長枠が設けられている補助金は、「事業再構築補助金」です。環境に配慮した取組を支援する目的があります。

事業再構築補助金はグリーン成長戦略を推進する目的があり、ものづくり補助金においては2024年度から「省力化(オーダーメイド)枠」として、事業活動における省力化に必要な設備投資・システム構築の支援が目的となっています。補助金を受けると取組状況の報告が必要です。

事業再構築補助金のグリーン成長枠

事業再構築補助金とは、中小企業等の事業再構築を支援するための補助金を言います。具体的には、新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換・事業再編等の事業再構築に挑戦する中小企業等を支援するための補助金制度です。

新型コロナウイルス感染症の影響が長期化している影響で企業業績がなかなか回復せず、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応しようとする中小企業等を支えるための取組だと言えます。ここでは、事業再構築補助金のなかでも、グリーン成長枠に関する部分を解説します。

 

グリーン成長枠の条件

事業再構築補助金のグリーン成長枠を活用するには、企業の範囲・対象要件・対象経費等の条件を満たしておく必要があります。スムーズに申請を行えるように、必要とされる条件についてあらかじめチェックしておきましょう。

企業の範囲

事業再構築補助金の「公募要領(第11回 2023年9月)」によれば、グリーン成長枠には「エントリー」と「スタンダード」の2つのタイプがあります。それぞれの補助金額や対象要件には違いがあるので注意しましょう。

補助金額は、以下のとおりとなっています。

[エントリー]
中小企業者等:【従業員数20人以下】100万円~4,000万円
【従業員数21~50人】100万円~6,000万円
【従業員数51人以上】100万円~8,000万円
中堅企業等 :100万円~1億円

[スタンダード]
中小企業者等:100万円~1億円
中堅企業等 : 100万円~1.5億円

 

対象要件

事業再構築補助金のグリーン成長枠には、エントリーとスタンダードでそれぞれ対象要件が設定されています。具体的には、以下のとおりです。

[エントリー]
・グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題解決への取組を行うこと。
・1年以上の研究開発・技術開発または従業員の5%以上に対する年間20時間以上の人材育成をあわせて行うこと。
・事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること。

[スタンダード]
・グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題解決への取組を行うこと。
・2年以上の研究開発・技術開発または従業員の10%以上に対する年間20時間以上の人材育成をあわせて行うこと。
・事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること。

 

対象経費

事業再構築補助金のグリーン成長枠において、補助の対象となる経費はさまざまなものが定められています。おもな経費について紹介をすると、以下のとおりです。

建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費等

 

上記のように、補助の対象となる経費は事業拡大につながる事業資産で、有形・無形は問われません。原則として、補助金の交付を受けた日付以降に契約を行い、補助金事業実施期間内に支払いを完了したものが対象経費となるので注意しましょう。

第12回の公募開始時期

事業再構築補助金の第11回公募期間は、2023年8月10日(木)~2023年10月6日(金)18時まででした。第12回以降の公募については、「令和5年(2023年)秋の年次公開検証」での指摘を踏まえ、見直しを行った上で公募を再開する予定とのことです。

 

2050年に向けて成長が期待される14分野

事業再構築補助金のグリーン成長枠で申請する事業者は、イノベーションを実現し、革新的技術を社会実装することが求められます。国が掲げている2050年のカーボンニュートラルの実現だけでなく、CO2の排出削減に留まらず人々の生活のメリットを実現していく取組を行っていく必要があります。

グリーン成長戦略で掲げられている14の重点分野として、次のものが挙げられます。

【参考】(出典:事業再構築補助金「グリーン成長枠」想定事例集)

 

グリーン成長枠の申請事例

グリーン成長枠で申請が想定される事例は、分野ごとに異なります。申請を行う際は、関心のある分野について事前にどのような事例があるのかを押さえておきましょう。

ここでは、中小企業庁が公表している「事業再構築補助金「グリーン成長枠」想定事例集」から、分野別の想定事例を紹介します。

【洋上風力】
・長年培ってきた難切削加工技術のノウハウを活かして、脱炭素社会への切り札となる洋上風力設備部品の新規事業に挑戦し、事業再構築を図る。
・発電効率を上げるため、軽量な部品を製造する必要があることから、素材開発のテーマで、地元国立大学と2年以上の共同研究を実施予定。

【水素】
・近年の環境意識の高まりの機会を捉えるため、航空機部品製造で培ったノウハウを活かした、水素ステーション用部品の製造を行い、事業再構築を図る。
・水素ステーション用部品は、加工精度要求が極めて高く、自社の強みである加工技術をさらに昇華させる必要があるため、大手自動車メーカーや燃料輸送事業者との共同研究により、技術レベルの向上も図る。

【情報通信】
・電気工事業で培ったノウハウを活かし、既存顧客(~300人規模の製造業)向けに、設計から、ソフトウェア提供、保守までを一気通貫で行うデジタル化支援事業に進出し、事業再構築を図る。
・事業実施にあたっては、本事業の担当スタッフがソフトウェアメーカへ出向し、持ち帰ったノウハウを通じて社内人材の育成を行う

【参考】(出典:事業再構築補助金「グリーン成長枠」想定事例集)

ものづくり補助金の省力化枠

続いて、ものづくり補助金について解説していきます。
ものづくり補助金とは、正式には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と言います。中小企業等の生産性を向上させるために、革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うために投じる設備投資を支援するための補助金制度です。

ものづくり補助金にも以前はグリーン成長枠が設けられていましたが、2024年度(第17次締切分)は「省力化(オーダーメイド)枠」として、公募内容が大きく変更されています。企業の範囲・対象要件・対象経費等を押さえておきましょう。

省力化枠の条件

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠では、中小企業の生産性の向上や持続的な賃上げを支援することが目的となっています。革新的な製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化に必要な設備投資・システム構築を支援してくれる制度です。

どのような条件が定められているのかを詳しく見ていきましょう。

企業の範囲

ものづくり補助金における省力化(オ―ダーメイド)枠は、従業員数によって補助金の上限額が定められています。具体的な金額と補助率は、次のとおりです。

 

対象要件

ものづくり補助金の申請を行うには、以下の要件をすべて満たした3~5年の事業計画が必要になります。

・事業者全体の付加価値額(営業利益・人件費・減価償却費)を年平均成長率3%以上増加
・給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加
・事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする

 

対象経費

ものづくり補助金では、さまざまな経費が補助の対象となります。具体的なものとして、次のものが挙げられます。

機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費等

 

17次締切の公募開始時期

ものづくり補助金の17次締切の公募期間は、2024年2月13日(火) 17時~2024年3月1日(金) 17時までとなっています。

 

省力化(オーダーメイド)枠の申請事例

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠への申請を検討する場合、どのような事例があるのかを把握しておくことも大切です。例えば、製造業やサービス業(小売・卸売)取組として以下のような例が挙げられます。

【製造業の取組事例】
製造業×多関節ロボット×人手不足・組み立て動作ロスの解消
・従来、海外の生産拠点で職人が手作業で行っていた組立工程を国内に集約するにあたり、AIや3Dカメラ、センサー等を用いた多関節ロボットを導入。
・組立に必要な全ての部品を供給するシステムを構築したことで、切替ロス無しで、流れてきた部品に依った、製品の1個流し生産を実現することが可能になった。

 

【サービス業の取組事例】
サービス業(小売・卸売)×多関節ロボット×人手不足
・飲料陳列や在庫品出し作業において、AIシステム化された陳列棚の在庫管理システムと、連動して動く自動搬送ロボットを導入。
・3Dカメラ技術を使用してAIが自動で商品棚の在庫量を可視化することで、従業員は遠隔で不足している商品の種類と数を把握し、従業員からの指示に従って、ロボットが売り場に自動で商品を搬送し、商品棚に陳列を行う。

事業再構築補助金とものづくり補助金の併用活用について

事業再構築補助金とものづくり補助金は同じ事業で補助金を受け取ることはできませんが、異なる事業であれば併用することができます。
例えば、「電気自動車の部品を製造する」ことに対しては、事業再構築補助金かものづくり補助金どちらか片方しか利用できません。
これを、「電気自動車の部品を製造する」+「電気自動車のインフラ整備をする」のように製造と整備で事業を分けることによって、前者を事業再構築補助金で申請し、後者でものづくり補助金を申請して両方の補助金を受けるということができます。
事業再構築補助金とものづくり補助金はどちらも補助金と補助率の高い補助金です。
今後、大規模にグリーン成長戦略に取り組むという事業者は、事業再構築補助金とものづくり補助金の併用活用を検討してみるのもいいかもしれません。

まとめ

今回はグリーン成長戦略の概要とグリーン分野で利用できる補助金について解説してきました。
ポイントをまとめると、
●グリーン成長戦略の補助金は主に「事業再構築補助金」と「ものづくり補助金」の2つ
●基本的には、補助額や補助範囲が広い事業再構築補助金の方が有利

一方で、ものづくり補助金は補助率が高いので、小規模な投資をする事業者にはお勧めです。
環境問題と産業政策・エネルギー政策の両面から国が力を入れているグリーン成長戦略は、今後間違いなく需要が増えていく分野と考えられます。

自社の今後の事業計画と助金を活用しながら、さらなる事業発展に取り組んでみてください。

 

2022年3月 中小企業庁 「事業再構築補助金「グリーン成長枠」想定事例集」

竹内FP社労士事務所 代表 竹内誠一

1972年生まれ。23年間、厚生労働省・日本年金機構にて年金行政の職務に従事し、事業主・住民に向けた社会保険・年金の行政サービスに対応。
在職中に、社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタントを取得し、2016年7月に独立・開業。現在は、FP社労士・起業家コンサルタントとして、中小企業の経営・個人事業主のビジネス支援及び女性起業家のビジネス・プライベート両面からのコンサルティングを展開、さらに恋愛教育・婚活から夫婦問題・相続・終活と幅広い分野でまさに揺り籠から墓場までサポートするなど幅広く活動中。2019年より、複数のライブ番組を配信し、あらゆる分野で活躍する政治家・起業家を応援。

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