週44時間特例廃止はいつから?対象範囲・影響・対策を詳しく解説

公開日:2026年6月29日

人事労務・働き方改革

「週44時間特例廃止」は、小規模な店舗やクリニック、理美容業等にとって、労働時間の管理と人員配置を見直すきっかけとなります。廃止時期や経過措置は法改正の内容によって変わってくるため、自社にどのような影響があるのかをきちんと理解しておくことが大切です。

この記事では、週44時間特例の基本、対象範囲、廃止された場合の影響、企業がこれから進めるべき対策を詳しく解説します。

週44時間特例廃止とは?まず押さえたい制度の基本

週44時間特例とは、法定労働時間の原則である週40時間に対して、一定の小規模事業場だけに認められている例外的な制度です。廃止が実現すれば、これまで所定労働時間として扱っていた時間が、時間外労働として管理対象になる可能性があります。

まずは、制度の位置づけや基本的なポイントを理解しておきましょう。

週44時間特例とは、一定の小規模事業場に認められる例外

労働基準法では、労働時間は原則として1日8時間、1週40時間以内とされています。ただし、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業等の一部については、常時使用する労働者が10人未満の小規模事業場に限り、週44時間まで働かせることができる特例があります。

重要なのは、判断単位が会社全体ではなく、店舗、営業所、医院等の事業場単位である点です。複数店舗を展開している場合でも、各拠点の実態を個別に確認する必要があります。

原則は1日8時間・週40時間である

通常の法定労働時間は、休憩時間を除き1日8時間、1週40時間です。この枠を超えて労働させる場合は、原則として36協定の締結・届出が必要になり、時間外労働として割増賃金の支払いも求められます。

週44時間特例は、すべての中小企業に認められる制度ではなく、あくまで業種と規模が一定条件を満たす事業場だけの例外措置です。自社が「小規模だから使える」と考えるのではなく、以下の表にまとめているように、法定労働時間、所定労働時間、時間外労働との関係を分けて確認することが大切です。

廃止されると週40時間を超える労働は時間外労働になる

週44時間特例が廃止された場合、これまで週40時間超から44時間までを通常の所定労働時間として扱っていた事業場では、その差分が時間外労働として管理対象になります。

週4時間の違いは一見小さく見えますが、1か月では約16~18時間、年間では200時間前後の差になります。残業代だけでなく、営業時間、予約枠、人員配置、就業規則、雇用契約書の内容まで影響がおよぶため、あらかじめ対策を講じておくことが重要です。

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週44時間特例廃止はいつから?現時点での位置づけ

「いつから廃止されるのか」は、多くの事業者が気になるポイントです。週44時間特例の見直しは労働時間法制の課題として議論されていますが、実際の適用時期は法改正の成立時期、施行日、経過措置の内容によって決まります。

最新情報を確認しながら、準備だけは先に進めておく姿勢が必要です。

施行時期は今後の法改正・経過措置を確認する必要がある

週44時間特例の廃止は、労働時間制度全体の見直しの一環として取り上げられています。実務上は、厚生労働省の公表資料、国会に提出される改正法案、施行日を定める政省令、経過措置の有無を確認する必要があります。

特に小規模事業者向けに準備期間が設けられる可能性もあるため、確定情報と検討段階の情報を分けて把握しておきましょう。

廃止が検討される背景には働き方改革と公平性がある

廃止が検討される背景には、長時間労働の是正、労働者の健康確保、制度の公平性という複数の論点があります。週40時間制が一般的になっている中で、業種や人数の違いだけで週44時間まで認められることに対して、労働者保護の観点から見直しを求める考え方があります。

一方、小規模な飲食店や理美容業等では、人員確保や営業時間の維持が難しい現実もあります。そのため、制度変更は労働者保護と事業継続のバランスを取りながら議論されているのです。

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対象企業は「決まってから」ではなく早めの準備が必要

施行日が正式に決まってから対応を始めると、現場の準備が間に合わない恐れがあります。シフトを変えるには従業員への説明が必要であり、採用には募集、面接、教育の時間がかかるでしょう。

就業規則や雇用契約書を見直す場合も、専門家への相談や社内周知が必要です。特に人手不足が続く業種では、短期間で人員を増やすことは容易ではありません。制度改正の有無にかかわらず、労働時間を正確に把握し、無理のない運営に近づけていくことが、経営リスクの低減につながります。

週44時間特例の対象事業場を確認する

週44時間特例への対応を考える前に、自社がそもそも特例の対象かどうかを確認しておく必要があります。対象外であるにもかかわらず週44時間を前提に運用していれば、既に時間外労働や割増賃金の問題が生じている可能性があります。

業種、人数、事業場単位の順に3つのポイントを確認しましょう。

対象となる業種と常時10人未満の考え方

対象になるのは、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業等に該当する小規模事業場です。具体的には、小規模な小売店、飲食店、美容室、旅館、クリニック、歯科医院等が候補になります。

規模要件は「常時使用する労働者が10人未満」であり、正社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員等も含めて実態に応じて確認する必要があります。出勤日数が少ない従業員がいる場合でも、単純に除外できるとは限らないため、日常的な人員体制を基準に慎重に判断することが大切です。

対象外となるケースも確認しておく

対象業種に見える事業であっても、常時10人以上を使用する事業場であれば週44時間特例は使えません。また、製造業や建設業等、そもそも特例対象業種に該当しない事業もあります。

「昔からこの勤務時間で運用している」「同業他社も同じようにしている」という理由だけでは適法性の根拠にはならないので注意しましょう。業種区分と人数要件を改めて確認し、対象外の場合は週40時間を前提に管理を見直す必要があります。

複数店舗・複数拠点では事業場単位で確認する

複数店舗を運営している会社では、会社全体の従業員数ではなく、実態として独立した店舗や営業所ごとに判断するのが基本です。例えば、本社を含めると30人でも、各店舗が独立して労務管理を行い、それぞれ常時10人未満であれば店舗単位で検討する余地があります。

ただし、人事労務管理が一体化している場合や、同一場所で業務が不可分に行われている場合等は個別の判断が必要です。判断に迷う場合は、労働基準監督署や社会保険労務士に相談してみましょう。

週44時間特例廃止が企業に与える影響

週44時間特例が廃止されると、対象事業場では労働時間、残業代、シフト、人員配置の設計が大きく変わります。特に、長い営業時間を少人数で支えている店舗では、現場運用に直結する問題です。

ここでは、企業が把握しておきたい主な影響について解説します。

年間で確保できる労働時間が減少する

週44時間から週40時間へ移行すると、1人あたり週4時間の労働時間差が生じます。年間では単純計算で約200時間前後となり、フルタイム従業員が複数いる事業場では相当な業務量に相当します。

同じ営業時間やサービス水準を維持するには、追加人員を確保する、シフトを再編する、業務を削減する等の対応が必要です。年間休日や1日の所定労働時間の設計にも影響するため、就業規則、雇用契約書、勤務表の整合性を確認しておく必要があります。

残業代・36協定の管理負担が増える

週40時間を超える労働が発生する場合、時間外労働として36協定の締結・届出、上限時間の管理、割増賃金の支払いが必要になります。これまで週44時間以内に収まっていたため問題が見えにくかった事業場でも、特例廃止後は週40時間を超える部分が時間外労働として扱われる可能性があるでしょう。

勤怠記録が曖昧なままでは、未払い残業代のリスクが高まります。出退勤時刻、休憩時間、残業申請、給与計算のルールが一致しているかを点検しましょう。

営業時間・シフト・人員配置の見直しが必要になる

営業時間が長い店舗では、現行の人員数のまま週40時間以内に収めることが難しくなる場合があります。売上が集中する時間帯に人員を厚くし、来客が少ない時間帯を薄くするなど、シフトの再設計が必要です。

定休日の設定、受付終了時間の前倒し、予約枠の調整、開店前・閉店後業務の分担も検討対象になります。店長やベテラン従業員に労働時間が偏っていると、制度変更後に残業が集中しやすいため、業務分担の見直しも欠かせない点だといえるでしょう。

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採用難の企業ほど現場負担が増えやすい

人手不足の事業場では、労働時間を短縮した分を新規採用で補うことが難しく、既存従業員にしわ寄せが生じやすくなります。残業で対応し続ければ人件費が増えるだけでなく、疲労、離職、サービス品質の低下にもつながります。

採用市場では、賃金だけでなく、勤務時間の柔軟性、休みやすさ、教育体制も重視されます。週40時間への移行を単なる制約と捉えず、働きやすい職場づくりと定着率向上の機会として設計することが重要です。

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週44時間特例廃止に向けて企業が行うべき準備

制度変更に備えるには、まず自社の現状を数字で把握し、影響額と運用上の課題を「見える化」することが出発点です。その上で、シフト、業務効率化、規程整備、人員計画を段階的に見直していきましょう。

ここでは、実務で取り組みやすい準備項目を解説します。

現状の労働時間と人件費を見える化する

最初に行うべきことは、従業員別、曜日別、時間帯別の勤務実績を確認することです。週40時間を超えている従業員が何人いるのか、どの曜日・時間帯に勤務が集中しているのかを把握しましょう。

その上で、週40時間超から44時間までの部分が残業扱いになった場合、人件費がどれだけ増えるかを試算します。給与だけでなく、社会保険料、採用費、教育コストも含めて考えることで、経営全体への影響を具体的に把握することが大切です。

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変形労働時間制やシフト設計を見直す

繁忙日と閑散日の差が大きい事業場では、1か月単位の変形労働時間制等を検討する余地があります。変形労働時間制を適切に使えば、一定期間を平均して法定労働時間内に収めながら、繁忙日に長めの勤務を設定することが可能です。

ただし、制度名を就業規則に書けば自由に運用できるわけではありません。対象期間、起算日、勤務日、勤務時間を事前に定めること、労使協定や就業規則の整備が必要です。

業務効率化・営業時間の見直しを進める

人を増やすだけでなく、業務量そのものを減らす視点も重要です。勤怠管理、予約管理、レジ締め、発注、在庫管理、請求業務等の定型作業は、システム化や手順の標準化によって短縮できる可能性があります。

また、来客が少ない時間帯を分析し、営業時間、受付時間、定休日を見直すことも選択肢だといえます。売上への影響を確認しながら、労働時間をかけるべき業務と削減できる業務を分けて検討しましょう。

就業規則・36協定・勤怠管理を整備する

所定労働時間、休憩、休日、時間外労働の扱いが、就業規則や雇用契約書と実際の勤務実態で一致しているかを確認します。36協定の届出状況、時間外労働の上限、割増賃金率、勤怠システムの設定も重要です。

例えば、システム上は週44時間まで通常勤務として計算される設定になっていると、制度変更後に誤った給与計算が続く恐れがあります。日常的に正確な労働時間を記録し、給与計算へ反映できる体制を整えましょう。

人員計画と採用・定着策を見直す

週40時間に移行しても業務が回るように、必要な人数と採用時期を早めに試算しておきましょう。短時間勤務者を組み合わせる、業務を複数人で分担する、店長だけに負荷が集中しない体制を作るなど、現場で実行できる形に落とし込むことが大切です。

また、労働時間の短縮は、従業員にとって働きやすさの向上につながる可能性があります。休みやすいシフト、教育体制、評価制度を整えることで、採用だけでなく定着にも効果が期待できるでしょう。

業種別に見る対応ポイント

週44時間特例の対象になりやすい業種では、売上が集中する時間帯や業務の性質が異なります。そのため、対応策も一律ではありません。

自社の業種に引き寄せて、どの時間に人を置き、どの業務を減らすのかを具体化することが重要です。業種別にどのような対応を行えるかを見ていきましょう。

飲食店・小売業はピーク時間帯と営業時間を再設計する

飲食店や小売業では、ランチ、夕方、土日祝日等、売上が集中する時間帯に人員を厚く配置することが重要です。一方、来客が少ない時間帯まで同じ人員を置いていると、週40時間への移行後に支障が出てしまう部分もあるでしょう。

仕込み、清掃、発注、棚卸しを営業時間外に偏らせすぎると残業が増えるため、営業時間内に組み込む工夫も必要です。学生アルバイトや短時間パートの活用、セルフレジ、予約システム、モバイルオーダーの導入も検討しましょう。

理美容・接客娯楽業は予約枠とスタッフ配置を見直す

理美容業や接客娯楽業では、予約枠、受付終了時間、指名予約の偏りが労働時間に関係してきます。施術時間だけでなく、準備、片付け、会計、カルテ記入等の時間を含めて勤務実態を確認することが必要です。

閉店後の片付けや翌日準備が毎日残業になっている場合は、予約枠の間隔、最終受付、担当者の割り振りを見直しましょう。客単価やメニュー構成を整えることも、労働時間を短縮しながら収益を確保するための有効なポイントです。

医療・福祉・保健衛生業は夜間・休日対応を確認する

クリニック、歯科医院、介護・保健衛生関連の事業では、診療時間や受付時間だけでなく、準備、片付け、記録、患者・利用者対応まで含めて勤務実態を確認します。少人数で運営している場合、特定の職員に受付、会計、清掃、電話対応が集中しやすく、休憩や休日が十分に確保されていないケースもあります。

夜間や休日の対応がある場合は、担当者を固定しすぎず、代替要員を確保することが重要です。サービス品質を守りながら、無理のない勤務体制へ移行してみましょう。

AIの人事活用についてリスクと対応策を解説しています。

 

対応時の注意点

制度変更への対応では、「残業代を払えば良い」「変形労働時間制を入れれば解決する」といった理解は注意が必要です。法的な要件を満たすだけでなく、現場で継続できる運用にすることが重要だといえます。

単に残業扱いにするだけでは人件費増を招く

週40時間を超える部分をすべて残業として処理すれば、法的な管理は一見わかりやすくなります。しかし、その分だけ割増賃金が発生し、人件費は増加することになるでしょう。

長時間労働が続けば、従業員の疲労や離職にもつながり、結果として採用費や教育コストが増える可能性もあります。残業代の支払いは当然必要ですが、それだけでなく、労働時間そのものを減らす工夫が必要です。

価格設定、利益率、サービス内容まで含めて経営全体で検討しましょう。

変形労働時間制を導入する場合も手続と運用が重要

変形労働時間制は、繁閑に合わせて労働時間を配分できる一方で、対象期間、起算日、勤務日、勤務時間等を適切に定める必要があります。実際のシフトが事前に定めた内容とずれていたり、後から都合よく変更したりすると、制度の要件を満たさず、未払い残業代や労務トラブルにつながる恐れがあります。

導入時は就業規則や労使協定の整備だけでなく、現場責任者がルールを理解して運用できる体制を作ることが重要です。必要に応じて社労士等の専門家に確認をしましょう。

勤務間インターバル制度について解説しています。

 

不明点は社労士や労働基準監督署へ相談する

週44時間特例の対象事業場に該当するか、制度改正後にどのような対応が必要かは、業種、人数、拠点の運営実態によって結論が変わる場合があります。一般的な解説だけで判断すると、自社に合わない運用を行ってしまう恐れがあるでしょう。

まずは制度の基本を確認し、その上で労働基準監督署、社会保険労務士、弁護士等の専門家へ相談することが大切です。特に、就業規則改定や36協定の見直しを行う場合は、早めに相談してみましょう。

まとめ

週44時間特例は、一定の小規模事業場に限り、4時間までの労働を認める例外的な制度です。廃止時期は法改正や経過措置を確認する必要がありますが、対象となる可能性がある企業は、決定後に慌てて対応するのではなく、今から現状把握を進めることが重要です。

労働時間、人件費、シフト、就業規則、36協定を点検し、週40時間を前提とした運営へ段階的に近づけていきましょう。制度変更への備えは、労務リスクの低減だけでなく、働きやすい職場づくりにもつながるはずです。

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